|更新日 2020.02.01
|公開日 2017.07.05

31年間の出題傾向意思表示の出題総数は18問ですが、錯誤だけの出題は3問で、直近では10年前の平成21年(2009)に出題されただけです。
多くは、総合問題(9問出題)の中の選択肢として出題されています。
[改 正] 大幅な改正がありましたが、従来の判例の見解を整理・明文化したものです。

れいちゃん01

錯誤は法改正されたの?

たくちゃん03

かなり改正されたね。

れいちゃん02

従来の「無効」が「取消し」に改正されたってきいたけれど。

たくちゃん01

そうだね。ほかにも「重過失」「動機の錯誤」「第三者との関係」も注意しておこうね。


1|錯誤の意味

1 錯誤の意味

錯誤というのは、「思い違い」「勘違い」ということです。
目的物の価値や価格を間違ったり、支払期日を勘違いするなどによって契約や意思表示をすることです。書き間違ったり、思い違いをしていたなんて、けっこうありますよね。
ウッカリして勘違いして結ばれた契約は有効なのでしょうか、それがここでの問題です。

錯誤では、表意者の「内心の意思」と、相手方に示された「表示」が食い違っているのですが、この不一致を表意者自身は気づいていません。
不一致を表意者本人が知っている心裡留保や虚偽表示とは、この点が大きく異なっていて、民法の扱いも大きく違います。

本人の勘違いによってなされた契約をそのまま有効とすることは、本人に気の毒な場合もあるといえますので、民法は一定の要件の下に、契約を取り消せることにしています。

しかし、契約は相手方があることなので、有効を期待している相手方の利益も考慮する必要があります(本人保護と相手方利益との比較考量)。

勘違いにより「真意でない」意思表示をした表意者を保護すべきなのか、「表示」を信頼した相手方を保護すべきなのか。保護するとしてもその要件は何か。
錯誤ではこうしたことが問題となり、また出題可能性の高い個所でもあります。

|錯誤の2パターン|
錯誤には、①表示錯誤と②動機錯誤の2パターンがあります。

① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
→ 表示行為の錯誤(表示錯誤)
② 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
→ 動機の錯誤(動機錯誤)

民法は、①表示錯誤、または、②動機錯誤が「法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」は、その意思表示を取り消すことができる、としています。
少しくわしく確認しておきましょう。

2 表示錯誤|表示行為の錯誤

表示錯誤(表示行為の錯誤)というのは「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」をいいます。「言い間違い」「書き間違い」などですね。

たとえば、ネット業者がウェブサイト上で商品価格を1桁書き間違え、多数の申込みが殺到し(「申込み」に対して自動返信される「承諾」で契約成立)、あとでこの「間違い」に気づいたという例などです。

ネット業者としては、こんな契約は「取り消したい」ところですが、申込者としてはぜひとも「有効にしたい」ところです。

3 動機錯誤|動機の錯誤

動機錯誤というのは、意思表示を決定した理由や動機に錯誤があることです。
民法上は「表意者が法律行為の基礎とした事情についての錯誤」としています。
要するに、意思決定をするに至った「理由に勘違いがあった」ということです。

たとえば、テーマパーク建設予定地と誤信し、値上がりを期待して甲土地を買ったところ、建設予定地ではなかったというような場合です。

「テーマパーク建設予定地だから」「かならず値上がりするから」という「理由とか動機」で意思決定をして、甲土地を買ったのです。
この場合「甲土地を買う」という「意思」で、「甲土地を買う」と「表示」したのですから、「意思」と「表示」の不一致はなく、したがって「意思表示自体に錯誤は生じていない」のです。
理由や動機に勘違いがあった・錯誤があったからといって、問題はないように思えるのです。

ところが、実際上も判例上も圧倒的に「動機の錯誤」が多く、この点を軽視するのはあまりに不当ではないかと考えられてきたのです。

|表示された動機|
意思決定の要因となった動機は、内心に秘められていて表示されない場合が多いために、動機に錯誤があるからといって常に取消しを認めてしまうと、有効に締結されたと期待している相手方に予想外の損害を与え、取引の安全を害することになります。

したがって新民法では、動機の錯誤による「意思表示の取消しは、……表示されていたときに限り、することができる」(96条2項)として、動機が表示された場合に限って動機も法律行為の内容になり、したがって「錯誤として扱う」ことができるということにしたのです。

動機が相手方に表示されていれば、相手方も法律行為の内容として認識しているわけですから、利益を不当に害されることはないからです。

契約書作成などの交渉段階において、「予定地だから買う」という「動機が表示」されていれば、実際にはそうでなかった場合に、錯誤を理由に意思表示を取り消すことができるわけです。

※ 錯誤で問題とする「動機」とは、主に「目的物の価値や性質・状態」について評価を誤ったという種類のものをいいます。
「スマホをなくしたから」新しいのを買うというような動機は、ここでいう動機ではなく、したがって表示の有無に関係なく錯誤は成立しません。
あとで、スマホが見つかったから錯誤だ、とはいえないわけです。

2|錯誤の効果

1 原則|取消しができる

|重要な錯誤は取り消すことができる|
「表示錯誤」であれ「動機錯誤」であれ、錯誤が「法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」には取り消すことができます。
「重要な錯誤」のみ取り消すことができるというわけです。

ささいな部分に錯誤があった場合にまで、取消しの主張を認めて本人を保護したのでは、相手方は安心して取引をすることができません。「重要」という制限を設けて、表意者本人と相手方の利益のバランスを図ったのです。
重要かどうかの判断は「法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして」なされます。

錯誤の効果を「取消し」としましたので、錯誤による取消権は、追認することができる時から5年で時効消滅します(126条)

2 例外|表意者の重大な過失

ただし、錯誤が、表意者の重大な過失による場合は、取り消すことはできません。
重大な過失(重過失)があるとき、つまり「ほんのちょっと注意をすれば錯誤なんかしなかったのに」というように、著しく注意を欠くときは、表意者は、もはや錯誤を理由に意思表示を取り消すことはできないのです。

錯誤の制度は、錯誤した表意者本人を保護する制度なのですが、取引の相手方を犠牲にしてまで、あまりに不注意な表意者を保護する必要はないからです。

3 重過失でも取り消せる場合

ただし、表意者に重過失があっても、次の場合には意思表示を取り消すことができます。

1|相手方の悪意・重過失
相手方が、表意者に錯誤があることを知っているか、または重大な過失によって知らなかったとき
2|共通錯誤
相手方が、表意者と同一の錯誤に陥っていたとき

これらは、ともに相手方を保護する必要がない場面として、旧民法のもとでも、ほぼ異論がなかったため、今回明文化されました。

|重過失と軽過失|
重過失というのは「わずかな注意さえも払わなかった」ことで、むつかしく言えば「当該事情のもとで普通一般人として期待される注意を著しく欠いた」ことです。
普通一般人として期待される注意を欠く軽過失とは区別されます。
民法で過失というときは軽過失のことで、軽過失について責任を負うのが民法の原則です(過失責任主義)。
判例は、原則として重過失は保護しない立場です。

4 第三者の保護

錯誤による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができません。新民法で明文化されました。
保護されるに値する第三者とされるには、善意・無過失が要求されるわけです。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 意思表示に動機の錯誤があっても、その動機が相手方に表示されていない場合には、法律行為に重要な錯誤があったとはいえません。
将来地価が高騰すると「勝手に思い込んで」いるだけでは、動機の錯誤を理由に契約を取り消すことはできないのです。本問は誤りです。

ポイントまとめ

 錯誤には、2パターンがある。
① 表示錯誤(表示行為の錯誤)
意思表示に対応する意思を欠く錯誤
② 動機錯誤(動機の錯誤)
表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
 錯誤は、法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる
 動機錯誤を理由とする意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
 錯誤が、表意者の重大な過失によるときは取り消すことはできない。
 表意者に重大な過失があっても、次の場合は、取り消すことができる。
① 相手方が悪意または重過失のとき
相手方が、表意者に錯誤があることを知り、または重大な過失によって知らなかったとき
② 共通錯誤のとき
相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき
 錯誤による意思表示の取消しは、善意かつ無過失の第三者に対抗できない

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