|公開日 2017.7.24
|更新日 2019.4.27

今回は債権譲渡の対抗要件です。やや難しいテーマですので、得点できる人・できない人の明暗がハッキリ分かれます。

1|対抗要件が必要だ

債権の譲渡を第三者に対抗するには対抗要件が必要です。物権変動が対抗要件(登記や引渡し)を必要とするのと同じです。

債権譲渡の対抗要件は通知または承諾です。
債権譲渡では、債務者と債務者以外の第三者が登場しますので、別々に分けて確認しておきましょう。

1 債務者に対する対抗要件

1 通知・承諾の必要
債権の譲受人Cが、債務者Bに対してその債権を行使するためには、債権者AからBに対してその事実(債権がCに譲渡されたこと)通知する必要があります。

債権譲渡,通知,承諾

通知は、債権を失う譲渡人(旧債権者)がするからこそ信用があるのですから、譲渡人がしなければならず、譲受人が通知をしても無効です。
したがって、譲受人Cが「債権者代位権」により、Aに代位して通知することは許されません(大判昭5.10.10)

しかし判例(大判昭12.11.9)は、譲受人が、譲渡人の代理人として行ってもよいとしています。
通知は、債権が譲渡されたという「事実を知らせる行為」であって意思表示ではありませんが、代理の場合は、譲渡人の意思を受けて行われるため問題はなく、実際にこの方法はよく用いられています。

Aからの通知がない場合でも、債務者Bが承諾すれば、CはBに債権譲渡を対抗することができます。
「承諾」というのは、「同意する」という意味ではなく、譲渡の事実を知ったことを表明するという意味です。「債権譲渡を知っている」ということで、債務者がそれを認めるかどうかは関係ありません。

通知または承諾がない以上、たまたま債務者が譲渡の事実を知っていても、Cは債権譲渡を対抗できず、したがって、Bに請求しても時効中断の効力は生じません。

2 通知の効力
通知のみがあった場合でも、譲受人は債務者に債権譲渡を主張できますが、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができます。たとえば、次のような事由です。

  • 契約の取消しや解除によって債権が消滅していること
  • 弁済によって債権の全部または一部が消滅していること
  • 同時履行の抗弁権を主張できること
相殺については、場合を分けて確認しておきましょう。

1 通知後の反対債権取得
債権譲渡の通知を受けた後に、債務者Bが譲渡人Aに対して債権(反対債権)を取得しても、この反対債権で譲受人Cに「対抗できない」のは当然です。

譲受人Cとしては、Aの債権がBの債権によって相殺されることがないものとして譲り受けているわけですから、後になってBが取得した反対債権によって相殺され、その結果、自分の債権が消滅したり、減額になったりしては大変な不利益を受けてしまいます。
これでは債権の安全な取引を害することになります。

2 通知前の反対債権取得
債権譲渡の通知がある前に、すでにBもAに対して反対債権を有していれば、事情が違ってきます。

Aの債務の弁済期がきている、つまりBの債権により相殺できる状態=相殺適状にあるときは、Aの債権は相殺されるかもしれず、Cとしては、いわば「相殺可能性が付着した債権」を譲り受けているわけです。
このように通知前にすでに相殺適状が生じている場合は、Bは相殺をもってCに対抗することができます。

また、相殺適状になくても、通知後にBの債権の「弁済期が先に到来」すれば、Cの債権が弁済期未到来であっても、Bはみずからの「期限の利益」を放棄して、相殺をもってCに対抗することができます。

2 異議をとどめない承諾の効力

債務者Bが「異議をとどめない」で承諾した場合は、Aに対抗できた事由があっても、Cに対抗できません。
異議をとどめない承諾に「公信力」を与えて譲受人を保護し債権取引の安全性を図るためです。

したがって、契約の取消しや無効による債権の不成立とか、弁済その他の事由による消滅などがあっても、BはCに弁済しなければなりません。
ただし「公信力」というからには、譲受人は善意であること、つまり「抗弁事由の存在を知らない」ことが必要です。

契約が取り消されたこととか、すでに一部弁済がなされていることなどを知らないことが必要なのです。判例も、悪意の譲受人には対抗できるとしています(最判昭52.4.8)
異議をとどめない承諾の相手方は、AでもCでもどちらでもかまいません。

2|債務者以外の第三者に対する対抗要件

債務者以外の「第三者」に対しては、確定日付のある証書によって譲渡人の通知、または債務者の承諾がなされないと、対抗することができません。

1 「第三者」とは

物権変動の対抗要件における「第三者」と同じで、「通知・承諾がないことを主張するについて正当の利益を有する者」です。

「第三者」としては、主に次の三者です。
 1 当該債権の二重譲受人
 2 当該債権の差押債権者
 3 当該債権の質権者

「第三者」でないのは、主に次の三者です。
 4 譲渡債権の保証人
 5 抵当物の第三取得者
 6 債務者の一般債権者

保証人等に対しては、通知・承諾が「確定日付ある証書」でなされなくても、債権譲渡を対抗できるということです。

2 確定日付のある証書の効力

債権者Aが、債務者Bに対する債権をCとDに相次いで譲渡しました。二重譲渡ですね。
CとDの優劣はどのように決めればいいでしょうか。

確定日付のある証書

民法は、債権譲渡は、譲渡人から債務者への通知、または債務者の承諾がなければ、債務者その他の第三者に対抗できないと定めていますので、債権譲渡の優劣は、通知・承諾の先後で決まることとなります(467条1項)

しかし、この規定だけだと、Dへの譲渡が遅い場合でも、A・B・Dが通謀して「Cへの譲渡通知よりも先に来た」ということにすれば、Cの債権譲受は効力を生じないことになります。
譲渡の日付を都合のいいように不正操作できるというわけですね。
これでは安全な債権取引ができないことになりますので、通知・承諾の「日付を動かせないようにする」必要があります。

そこで同条2項で、これらは「確定日付のある証書」でなされないと、第三者に対抗できないと定めたわけです。

「確定日付のある証書」というのは、代表的なものでは「公正証書」や「内容証明郵便」などをいいます。
これらの証書は、公証人とか郵便局長など職業的規律に服する人が、客観的な第三者の立場で日付を記載するため、取引当事者の不正によって日付を勝手に操作することが不可能となり、日付が法律上の権利を左右する場面では決定的な証拠力となるのです。

この結果、Cへの譲渡について「確定日付ある証書」で通知し、Dへの譲渡について「確定日付ある証書」によらないで(たとえば、電話とかメールで)通知すると、CがDに優先することとなり、債務者もCを真の債権者と認めなければならないのです。


 判 例  に現れた例をみておきましょうか。
少しややこしくはありますが、それほど難しくはありません。

1 ともに確定日付がある証書
債権譲渡の通知が、ともに「確定日付ある証書」によってなされた場合、その優劣はどのように決まるのでしょうか?

債権譲渡の通知は、意思表示と同じく到達によって効力を生じます
したがって、債権が二重譲渡され、ともに「確定日付のある証書」による通知があったときは、その優劣は「確定日付の先後」ではなく、通知が債務者に到達した日時の先後によって決定されます(最判昭49.3.7)

2 確定日付ある譲渡通知と差押命令
「確定日付ある譲渡通知」と「差押命令の送達」があった場合、その優劣はどのように決まるのでしょうか?
この両者は同じ効力を有するので、双方が債務者へ到達した場合、その優劣は、「通知」「送達」の到達の先後によって決まります。

たとえば、差押債権者Xの差押命令の「到達前」に、先に確定日付ある譲渡通知が債務者に届いていれば、債権譲渡が優先するため、債務者は、Xの取立てに応じる必要はありません(最判平5.3.30)

差押命令と債権譲渡の通知の到達

3 同時到達のときは?
確定日付ある譲渡通知が「同時に到達」したら、どうでしょうか?
債権が二重譲渡され、確定日付ある通知が同時に債務者に到達したときは、CとDは、債務者に対しそれぞれ債権全額の弁済を請求できます。債権金額の基準で按分した額ではありません。
つまり、一方から請求を受けた債務者は、他方に対する弁済その他の債務消滅事由が存在しない限り、弁済しなければならないのです(最判昭55.1.11)

「確定日付証書による通知」と「差押命令」が、同時に到達したときも同じです。
譲受人Cと差押債権者Xは、ともに有効な対抗力を有することとなり、互いに優先を主張することはできません。
したがって、Cから請求を受けた債務者は、Xに対する弁済、供託その他の債権消滅事由がない限り、同順位のXが存在することを理由として、Cからの請求を拒むことはできません。

 確定日付に関する判例のルール 
1 確定日付「ありの通知」と「なしの通知」では、「あり」が優先する
2 両方とも確定日付ありのときは、日付ではなく、「到達」の先後で決する

3|条文とポイントまとめ

1 条文の確認

重 要 条文は暗記する必要はありません。
「基本的な論点を確認する」というつもりで読むようにしましょう。

 債権譲渡の対抗要件|467条 
1 債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 通知または承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

 債権譲渡における債務者の抗弁|468条 
1 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。(以下略)
2 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる

2 ポイントまとめ

1 債権譲渡の対抗要件は通知または承諾
2 通知は、譲受人が、譲渡人の代理人として行ってもよい。
3 通知後に、債務者が譲渡人に対して反対債権を取得しても、この債権で譲受人の債権と相殺することはできない。

4 債務者が異議をとどめない承諾をした場合は、譲渡人に対抗できた事由で譲受人に対抗できない。
5 第三者に対しては、確定日付のある証書による通知または承諾がないと、対抗できない。

6 確定日付ありの通知となしの通知では、確定日付ありが優先する。
7 ともに確定日付ありのときは、通知の到達の先後で決する。
8 差押命令の送達と確定日付による通知の双方が到達したときは、送達・通知の到達の先後で決する。


(この項終わり)