|更新日 2020.02.12
|公開日 2017.07.06

31年間の出題傾向意外にも、詐欺や強迫が「1問」として出題されたことはなく、ただ1回、平成14年に「第三者の詐欺」が出題されただけです。
意思表示の「総合問題」で、1選択肢として出題されていることがほとんどです。
令和1年(2019)には、詐欺による取消しと登記との関係で2選択肢ほど出題されました。
[改 正] わずかな改正がありましたが、学説の見解を明文化したもので目新しい内容ではありません。

れいちゃん02

だまされて契約したり、おどされて契約したらどうなるの?

たくちゃん03

常識からいって、こんな契約は有効とするわけにはいかないよね。

れいちゃん02

詐欺とか強迫って、いつの世にもなくならないのね。

たくちゃん03

契約が問題となるのはもちろん、
詐欺罪や脅迫罪などの犯罪も成立するんだよ。


1|詐欺──だまされて契約したら?

 詐欺の意味

詐欺というのは、人にだまされて意思表示や契約をすることです。日常用語でいう詐欺と同じ意味です。
詐欺は同時に、不法行為や刑法上の詐欺罪などが成立しますが、「契約」としては、その効力が問題となります。

 効果1|当事者間

詐欺による意思表示は、取り消すことができます(96条1項)
だまされた本人を不利な契約の拘束から一方的に解放できるようにしているのです。
これが当事者間の効果です。
詐欺の被害者である本人を保護するという観点から当然といえますね。

詐欺の場合には「意思」と「表示」に不一致はないのですが、自由な意思形成が侵害されている点に瑕疵(キズ)があるとみて取り消すことができるとしたのです。

取り消された契約は「はじめから無効であったものとみなされます」(121条)ので、まだ履行されていなければ履行の必要はなくなりますし、すでに履行されていれば、これを返還する手続きが残されることになります。

 効果2|第三者に対する効果

詐欺を理由に契約を取り消した場合、その取消しは、第三者に対する関係ではどうなるのでしょうか?

|善意・無過失の第三者に対抗できない|
この場合、詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができません(96条3項)

「第三者」というのは、詐欺による意思表示を「前提として新たな利害関係に立った者」をいいます。
したがって、取消し後に登場した第三者は、ここでいう第三者には該当しません。取消し後の第三者は、前提として取引関係に立ったわけではないからです。

さて、取消しがあると、契約は「はじめから無効」になりますが、善意かつ無過失の第三者に対しては、取消しの効果を主張できない、つまり意思表示が無効であることを主張できないということです。

詐欺による取消しと第三者

A→B→Cと土地の売買が行われ、その後、Bの詐欺を理由として、AがAB間の売買契約を取り消した場合、契約は、はじめから無効となって、Bは無権利者となります。したがって、Bから権利を譲り受けた第三者Cも、その権利を取得することはできないことになります。

Cは権利を取得したと思っていたところ、後になってAから「Bの詐欺を理由に取り消したから、AB間の契約は無効で、Bに権利は移転しておらず、したがってあなたにも移転しておらず、権利は私にある」ということになるのです。

しかし、Aの主張を無制限に認めると、Aの取消し前に、事情を知らないで取引関係に入った第三者Cは、大変困ります。
これでは安心して取引することはできず、取引の安全を害することになるわけです。

そこで民法は、第三者Cが安心して取引できるよう、以前の取引がどのような状態であったかをいちいち調べなくても、善意かつ無過失であれば、Aは取消しの効果、つまり無効を主張できないとして、Cの利益を保護したのです。

この結果、善意・無過失の第三者は、有効に権利を取得できることになるわけです。
結局Aは、Cから土地の返還を請求することはできず、Bから損害賠償を請求できるだけとなります。

第三者は「善意・無過失」でない場合は、保護されません。
詐欺の被害者Aには同情すべき点があるわけですから、第三者が保護される要件を厳しくして「善意かつ無過失」としているのです。「善意」だけでは足りません。

2|第三者の詐欺って何?

 意 味

第三者の詐欺というのは、契約当事者以外の第三者にだまされて契約することです。

たとえば、第三者Cにだまされて、Aが自分の土地を相手方Bに売ったという場合です。

第三者の詐欺

 効 果

この場合、第三者CにだまされたAは、相手方Bが、詐欺の事実を知っている悪意のときか、または、知ることができた(知らなかったことについて過失がある)ときに限って、その意思表示を取り消すことができます。

Bが悪意の場合、つまりAが第三者Cにだまされていることを知っている場合には、Bは、要するにCの詐欺行為を利用しているのであって、あたかもB自身がAをだましたのと同視できるからです。

悪意の場合だけでなく、知ることができた場合にも、取り消せるという点に要注意です。
旧法では、悪意に限られていましたが、改正法で、知ることができた(過失がある)場合が追加されました。

3|強迫──おどされて契約したら?

 強迫の意味

強迫というのは、生命・身体に危害を加えると言ったり、財産・名誉を傷つけると言ったりして、相手に恐怖の念を生じさせて意思表示や契約を強制することをいいます。日常用語でいう脅迫と同じ意味です。

強迫も、不法行為や刑法上の脅迫罪等が成立しますが、「契約」としては、その効力が問題となります。

 効果1|当事者間

強迫による意思表示は、取り消すことができます(96条1項)
強迫の場合も、詐欺と同様に「意思」と「表示」に不一致はないのですが、自由な意思形成が侵害されており、正常な意思表示とはいえないからです。

 効果2|第三者に対する効果

強迫による取消しは、善意・無過失の第三者にも対抗することができます。
強迫の場合は、強迫された被害者本人に落ち度はないのですから、第三者が善意・無過失であっても、本人を優先して保護したのです。
本人に「多少とも落ち度がある」詐欺とは異なる扱いをしているわけですね。

 第三者の強迫

1|意 味
第三者の強迫というのは、契約当事者以外の第三者に強迫されて意思表示をすることで、たとえば、第三者Cに強迫されて、Aが自分の土地を相手方Bに売ったというような場合です。

2|効 果
この場合は、相手方Bが悪意のときはもちろん、たとえ善意・無過失であっても、Aはその意思表示を取り消すことができます。つまりAは、相手方Bの善意・悪意に関係なく、いつでも取り消すことができるのです。
通常の強迫と同じように、第三者に強迫されたことについて、表意者Aに責められるべき事由はないので、詐欺の場合と比べて、より本人を保護すべきであると考えられたのです。

なお、強度の強迫の結果──相手方による場合であれ、第三者による場合であれ──完全に意思の自由を失った表意者の意思表示は、意思無能力者の行為として無効とされます。

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[正解&解説] 第三者による詐欺の問題ですね。
この場合、表意者Aは、契約の相手方Cが、Bの詐欺を「知っている」悪意のとき、または「知ることができた」ときに限って、契約を取り消すことができます。
「知っているときでないと、……取消しをすることができない」というわけではありませんので、誤った記述ですね。

ポイントまとめ

 詐欺による意思表示は、取り消すことができる。この取消しは、善意・無過失の第三者には対抗できない
 第三者が詐欺をしたときは、相手方が悪意のときか、善意だが有過失のときに限って、本人は意思表示を取り消すことができる。この取消しも、善意・無過失の第三者には対抗できない。
 強迫による意思表示は、取り消すことができる。この取消しは、善意・無過失の第三者にも対抗できる
 第三者が強迫をしたときは、本人は常にその意思表示を取り消すことができる。この取消しも、善意・無過失の第三者に対抗できる。

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