|公開日 2017.7.25|更新日 2018.6.26

今回から3回にわたって連帯債務、保証債務(連帯保証)がテーマです。「多数当事者の債権・債務」といわれるところです。
この29年間に18問(四択)出題されています。昨年も出題されました。頻出テーマですからシッカリ理解しましょう。

1 連帯債務の意味

連帯債務の意味を知るには、保証人(保証債務)と比較するとわかりやすいでしょう。

連帯債務は、あなたが友人とタクシーに乗ったときのタクシー代とか、恋人と食事をしたときの飲食代のように、あなたが払えなかった場合に、友人や恋人が支払わなければならない債務のことです。

また、夫と妻がともに債務者となって住宅ローンを利用したときには、夫がリストラにあって払えなくなったら、妻が支払わなくてはなりません。

運転手や料理店、銀行としては、とにかくどちらかが全額払ってくれればいいわけです。

一方、保証債務は、他人の借金の保証人になることで、こちらはイメージしやすいでしょう。借金をした本人が返済できないときに、代わりに返済義務を負う債務のことです。

連帯債務と保証債務、どちらも債権担保のために利用されるのですが、どんな点が違うのでしょうか。

連帯債務者も保証人も、債務を負っている点では同じですが、決定的な違いは、同じ債務者でも、保証人は従たる債務者という立場にあることです。

簡単にいうと、連帯債務は、それぞれの債務者が対等の関係で主従の関係はなく、したがって「一方に生じた事由が、他方にどのような影響を与えるか」という問題でも、原則として他方に影響を与えることはありません。

一方、保証債務は、主たる債務に従う関係にあるので、当然に主たる債務に生じた事由の影響を受けることになります。

宅建試験では、「一方に生じた事由が、他方にどのような影響を与えるか」という点が一番よく出題されますので、この違いを理解しているかどうかが得点の分かれ目になってきます。

1 連帯債務の効力

連帯債務は、債権を担保するために認められているわけですが、連帯債務者の1人が弁済すれば目的が達成されるという点では、全員が同じ目的をもっています。

債務者が債務の実現という共同の目的をもって結びついているのですが、もともと債務者1人1人が「対等に債務を負担」する性質のものですから、債務者の人数に応じた「数個の独立した債務」が存在するという構成になっています。

したがって、「1人について生じた事由はその当人だけに効力が生じ、他の債務者には影響を与えない(効力を生じない)」というのが原則です。これを連帯債務の相対的効力といいます。

つまり連帯債務はその性質上、相対的効力が「大原則」なのです。

1人について生じた事由は、当人だけにその効力がとどまるので、法律行為の無効・取消しの原因があっても、他の債務者には影響しません。

連帯債務

たとえば、連帯債務者のBの錯誤により、AB間の契約が無効であっても、AC間、AD間では完全に有効な契約が成立します。

2 相対的効力が原則だが……

相対的効力を有する事由は、そんなに多くありません。

① 債務の承認
② 期限の猶予 の2つくらいは押さえておきましょう。

 債務の承認
連帯債務者の1人Bが債務の承認をして、Aの代金債権900万円の消滅時効が中断しても、C、Dの債務はその影響を受けず時効中断しないので、後日、時効によって消滅する可能性があります。

 期限の猶予
Aが、Bに対して期限の猶予をしても、C、Dの債務は猶予されません。
たとえば、7月1日の支払期日を、Bについてだけ7月末日としても、CとDの支払期限は7月1日のままですから、この期日を過ぎればC・Dは履行遅滞になります。

2 6つの絶対的事由

連帯債務は、むしろ「他の債務者にも効力を及ぼす」絶対的事由の方が多いのです。

たとえば「弁済」を考えてみましょう。
連帯債務者のうち、だれか1人が弁済したら、ほかの債務者はもう弁済する必要はありません。債権者は弁済を受けて目的を実現できたわけですから、これは当然でしょう。

つまり、弁済の効力は他の債務者にも影響を与えているのです。
債権の実現という共同の目的が達成できたのであれば、その影響を受けてもいいということなのです。

他の債務者にも効力が及ぶことを絶対的効力といいますが、弁済のほかにも、次の事由があります。

ほかの債務者にも効力が及ぶ絶対的事由

① 各債務者の負担部分に関係なし
・請求  ・更改  ・混同
② 各債務者の負担部分のみ
・相殺  ・免除  ・時効

請求は別にして、どの事由も債権の消滅に関わっています。

「弁済」があれば債権が消滅する
「時効」が完成すれば債権が消滅する
「相殺」されれば債権が消滅する
というように。

つまり「消滅原因」が生じれば、「全員に対して等しく影響が及ぶ」(絶対的)のです。

1人によって「弁済」がなされれば、ほかの債務者はもう「弁済」する必要はない、つまり影響を与えるのは当然だということは理解しやすいでしょうから、これに関連づけて覚えていけばいいのです。

それでは、少しくわしく6つの絶対的事由をみておきましょう。

1 請 求

連帯債務では、債権者は、連帯債務者の1人か数人または全員に対して、全部または一部の履行を請求できます。

請求は、同時でも順次でもかまいません。

連帯債務者はそれぞれ、債権者に対しては全額を支払う義務があるので、債権者はお金のありそうな人から全額を回収できますので、債権者にとっては大変都合がいいわけです。

請求が絶対的効力を有するというのは、「1人に請求すればその効果は全員に及ぶ」ということです。

履行を請求すれば、債権の消滅時効の進行を中断するので、Bに履行請求すれば、C・Dに対しても消滅時効が中断します。

履行請求があれば、Bは履行遅滞となり、同時にC・Dも履行遅滞になります。

「時効中断」と「履行遅滞」、この2つは基本中の基本ですから、必ず覚えてください。

同じ中断事由でも、債権者がする「請求」には絶対的効力があるのですが、債務者がする「債務の承認」には相対的効力しかないという点も要注意です。

2 更 改

更改というのは、あまり聞き慣れませんが、プロ野球選手の契約更改というのはよく耳にするでしょう。

これまでの債務を消滅させて新たな債務を成立させることです。

債務を消滅させるのですから、「弁済」と同じように考えていいのです。

1人によって「弁済」されると、他の債務者の債務も消滅するように、Aと債務者Bとの間に「更改」があったときは、Aの債権は消滅し、C・Dの債務も消滅します。

3 混 同

混同は、たとえば債権者と債務者の間に「相続」があって、両者の地位が同一人に帰属することです。

債権者Aが死亡し、BがAを相続して代金債権を承継した場合には「混同」が生じ、Bは弁済したものとみなされるため、C・Dの債務も当然に消滅するのです。

4 相殺──援用権者に注意

Bが、Aに対して600万円の債権(これを反対債権といいます)を有している場合をみていきましょう。

本人が援用する場合(436条1項)

本人が援用する相殺

B本人が600万円の反対債権で相殺すれば、これは「弁済」そのものであるため、当然にCもDも600万円だけ債務が消滅します。

他の債務者が援用する場合(同2項)

他の債務者が援用する相殺

Bが相殺しないときは、CまたはDは、Bの負担部分300万円について相殺を援用できます。せっかくBが反対債権をもっているのですから、C・Dにも相殺を認めて法律関係を簡易に決済したほうがいいでしょう。

ただし、人の債権ですから最小限(負担部分)にとどめなければならないわけです。

負担部分が影響を与える事由は、このほかに2つあります。

5 免 除

たとえば、AがBの債務を免除したとしましょう。

相対的効力の原則を貫くと、C・Dに対しては本来の債権900万円を請求できますから、Cが900万円弁済すれば、Cは、Bが負担すべき300万円をBに請求して清算することになります(これを求償といいます)。

Bとしては「Aさん、あなたが免除してくれて感謝していたのに、Cに900万円支払わせたおかげで、私はCから300万円請求されて支払った。
これは、あなたが免除するといったことと矛盾するのだから、この300万円はあなたが負担すべきだ」ということになり、これを認めると、求償がぐるぐる巡って無用の手数がかかります。

そこで、Bの負担部分300万円に絶対的効力を認めて、CもDも本来の債務900万円から300万円だけ減らして600万円の債務しか負わないことにすれば、Cが600万円を弁済したときは、Dに300万円求償するだけで簡潔に済みます。

こうすれば、Bは内部関係においても求償されることがなく、免除の恩恵を受けることができるようになります。

つまり、債権者Aが、Bに対して債務を免除すると、Bの負担部分についてだけ、C・Dも債務を免れることになるというわけです。

6 時 効

考え方は免除と同じです。

「1人のために時効が完成したときは、その者の負担部分について、他の債務者も債務を免れる」ということです。

時効が完成したということは、10年間まったく請求してこなかったということですから、これはもう、ある意味で免除と同じと考えていいのではないでしょうかね。

負担部分についてだけ絶対的効力が認められる「免除」「時効」「相殺」の3つは、確実に覚えるようにしましょう。

これら6つの絶対的事由を除いて、あとは相対的効力のみの事由です。

3 条文とポイントまとめ

1 ポイントまとめ

1 (原則相対的効力
1人について生じた事由は、当人だけに効力を生じる。
①債務の承認  ②期限の猶予
③無効  ④取消し

2 (例外6つの絶対的事由
1人について生じた事由は、他の債務者にも効力を生じる。
①請求  ②更改  ③混同
④相殺  ⑤免除  ⑥時効
(④・⑤・⑥は負担部分のみ影響)

2 条文の確認

♠ 432条(履行の請求)
数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の1人に対し、または同時にあるいは順次に、すべての連帯債務者に対し、全部または一部の履行を請求することができる。

♠ 433条(1人についての無効・取消し)
連帯債務者の1人について法律行為の無効または取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。

♠ 434条(1人に対する履行の請求)
連帯債務者の1人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。

♠ 435条(1人との間の更改)
連帯債務者の1人と債権者との間に更改があったときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。

♠ 436条(1人による相殺等)
1 連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
2 反対債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者が相殺を援用することができる。

♠ 437条(1人に対する免除)
連帯債務者の1人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。

♠ 438条(1人との間の混同)
連帯債務者の1人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。

♠ 439条(1人についての時効の完成)
連帯債務者の1人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。

♠ 440条(相対的効力の原則)
434条から439条までに規定する場合(請求、更改、相殺、免除、混同、時効)を除き、連帯債務者の1人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない


(この項終わり)