|更新日 2020.02.01
|公開日 2017.07.10

31年間の出題傾向無権代理の出題数は[表見代理・無権代理]9問、令和1年(2019)には、無権代理行為と相続に関する「判決文問題」が出題されました。
[改 正] 無権代理人の責任が改正されました。
れいちゃん02

無権代理って?

たくちゃん04

代理権が全然ないのにやった行為なんだよ。

れいちゃん03

それで、どうなるの?

たくちゃん03

無権代理人が責任を負うことになるんだ。

1|無権代理

 意 味

無権代理というのは、まったく代理権のない者が代理行為をする場合をいいます。
いわば、本人の知らないところで、代理人と称する者が代理行為をしたわけで、さすがに本人にそのまま責任を負わせることはできません。

表見代理とはならない「無権代理」では、何の責任もない本人を犠牲にしてまで相手方の利益を優先させることは適切ではないので当然には本人に対してどのような効果も生じません。
まず、ここを押さえましょう。


ところで、無権代理行為は、いまだ効果を生じない状態、つまり有効とも無効とも確定しない状態にあります。
この未確定状態を「確定」できるのは、本人と相手方です。そのため──

  • 本人には、追認権・追認拒絶権
  • 相手方には、催告権・取消権
がそれぞれ与えられています。

本人が追認すれば有効なものとして確定し、追認を拒絶すれば無効に確定します。
相手方が取り消せば無効に確定します。

 本人は何ができる?

|本人の追認権・追認拒絶権|
本人は、無権代理行為によってどのような法律効果も受けませんが、これを追認して、代理権があってなされたと同様の効果を生じさせることもできます。
無権代理行為を有効なものとして確定させる権利を追認権といいます。

無権代理行為といっても、全部が全部、本人に不利益なものとは限りません。
息子が親の代理人と称して、勝手に親の土地を売却したところ、意外と高く売れたので、親がこの無権代理行為(売買契約)を追認する場合などです。

1|追認はだれにする?
追認をする相手方は、無権代理人でも、相手方でもかまいません。

2|追認したらどうなる?
無権代理行為は、本人が追認すると「契約の時にさかのぼって」はじめから有効な代理行為として確定します。

3|追認を拒絶したらどうなる?
勝手に代理行為をされたのですから、本人としては追認を拒絶して、無権代理の効果が自分に及ばないようにすることができます。
追認を拒絶すれば、無権代理行為は無効なものとして確定します。

 相手方は何ができる?

|相手方の催告権・取消権|
相手方は、本人の「追認」があれば、無権代理行為は本人に対して効力を生じ、「追認がなければ」効力を生じないという不安定な状態におかれます。
そこで、こうした相手方を救済するため催告権取消権が与えられています。

1|催告権──早く決めよう
本人に対して、相当の期間を定めて、その期間内に「無権代理行為を追認するかどうか」を確答するよう催告することができます。
この催告に対し、本人が確答しないときは追認を拒絶したものとみなされ、無権代理行為は無効なものとして確定します。

この催告権は、無権代理人に代理権がないことを知っていた悪意の相手方にもある、ということに注意してください。
催告は、無権代理行為の効力を早期に確定させることを促すものだからです。

2|取消権──善意・無過失の相手方
本人が追認すると、無権代理行為は有効な代理行為として確定します。
相手方はたとえ善意・無過失であっても、もう取消しはできなくなります。
したがって、取消しは、本人の「追認がない間」にする必要があります。

そして、取消しもまた、無権代理行為を確定的に無効にする行為であるため、取消しがあると、本人はもう追認できなくなるのです。
ただし、相手方が悪意のとき、つまり無権代理であることを知っていたときは、この取消権はありません。

 無権代理人の責任

無権代理人には重い責任が課せられています。けしからん奴ですからね。
これは、代理制度に対する社会的信用の維持と取引の安全確保を図るために認められた特別の責任です。

1|原則──履行責任または損害賠償責任
本人の追認拒絶によって、無権代理契約が無効と確定した場合、もう本人に無権代理の効果が及ぶことはなくなります。

一方、無権代理人は、相手方の選択に従い、契約の履行または損害賠償の責任を負うこととなります。
つまり、自分自身が本人として契約した場合と同様に、その「契約を履行」するか、それに代わる「履行利益の損害賠償」をしなければなりません(最判昭32.12.5)

この責任は、無権代理人に過失があるかどうかに関係なくみとめられる無過失責任です(最判昭62.7.7)

2|例 外
ただし、以下の場合にはこの責任はありません。
① 本人の追認を得たとき
② 代理権を証明したとき
③ 相手方が、代理人と称する者に代理権がないことを知っていたとき、または過失によって知らなかったとき(悪意または有過失

ただし、相手方に過失がある場合でも「無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた」ときは、その責任を負わなければなりません。
④ 無権代理人が未成年者等のとき
これらの者に重い責任を負わせるのは適当とはいえないからです。

 表見代理との関係

無権代理と表見代理の関係について、判例(最判昭62.7.7)は「両者は互いに独立した制度であり、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し117条の責任を追及することができる」としています。

表見代理も無権代理の一種であるため、「表見代理が成立」する場合でも、相手方は無権代理人の責任を選択して追及することができるわけです。

つまり、相手方は自由に──
① 本人に表見代理の主張をすることもできますし、これを主張せずに、
② 無権代理人に履行責任または損害賠償責任を追及することができます。

2|相続と無権代理行為

相続によって、無権代理人の地位と本人の地位が同一人に帰属した場合の問題です。ちょっとややこしいので、じっくり読むようにしてください。

 無権代理人が本人を相続

|無権代理人相続型──本人死亡|
たとえば、本人Aの子Bが無権代理人として、Aの財産を処分した後に「Aの死亡」によってこれを相続したような場合です。

無権代理|本人を相続

1|単独相続の場合
無権代理人が、単独で相続した場合(または他の相続人が相続放棄して単独相続となる)について、判例は「本人が自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたもの」として、無権代理行為は「当然に有効となる」としています(最判昭40.6.18)

無権代理人には、①相続による本人としての資格と、②無権代理人としての資格が併存しているのですが、相手方から「本人の資格」での追認を求められたときには、追認を拒絶できる本人の地位を承継したとしても、信義則上追認を拒絶することはできません。

本人に効果が帰属するものとして行為していながら、その地位を相続したら追認を拒絶するということは「信義則上」許されないのです。
そこまでして無権代理人を保護する理由はなく、むしろ善意・無過失の相手方を保護すべきだからです。

2|共同相続の場合
無権代理人が他の相続人と共同相続した場合には、相続人全員が「共同で追認」しないかぎり、無権代理人の相続分についても有効とはなりません。

判例は「無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するものであり、全員が共同して行使する必要がある」として、「共同の追認がない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない」としています(最判平5.1.21)

無権代理行為とは関係のない他の相続人の利益を保護するためです。

 本人が無権代理人を相続

|本人相続型──無権代理人死亡|
たとえば、Aの子Bが無権代理人として、Aの財産を処分した後に「Bが死亡」し、本人AがBを相続したような場合です。

無権代理人を相続

本人が無権代理人を相続した場合には、本人が自分の資格で被相続人の無権代理行為の「追認を拒絶」しても信義則に反するところはなく、相続によって無権代理行為が当然に有効となるものではありません。

しかし、本人は、追認を拒絶できる地位にあっても、相続により無権代理人の責任も承継するから、相手方は善意・無過失であれば、本人に対して、①履行請求か、②損害賠償請求をすることができます(最判昭48.7.3)
「追認拒絶できる地位」にあることを理由に、この責任を免れることはできません。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 無権代理行為の追認には遡及効があり、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生じます。「追認をした時から将来に向かって生ずる」のではないので、誤りです。
本人が追認すると、はじめから有効になされた代理行為となるのです。

ポイントまとめ

 無権代理について、本人には、追認権または追認拒絶権、相手方には、催告権および取消権が与えられている。
 無権代理行為は、本人が追認すると、契約の時にさかのぼって効力を生じ、はじめから有効な代理行為として確定する。
 追認を拒絶すれば、無権代理行為は無効なものとして確定する。
 相手方は、本人に対して、相当の期間を定めて、無権代理行為を追認するかどうかを確答するよう催告ができる。確答がないときは、追認拒絶とみなされ、無権代理行為は無効なものとして確定する。
 善意・無過失の相手方は、本人が追認をしない間であれば、無権代理行為を取り消すことができる。

 悪意の相手方には、取消権はない。
 善意・無過失の相手方は、本人に表見代理の主張をすることもできるし、これを主張せずに、無権代理人に履行責任または損害賠償責任を追及することができる。
 無権代理人は、自己の代理権を証明したとき、または、本人の追認があるときを除いて、相手方の選択に従い、履行または損害賠償の責任を負う。
 本人が死亡して、無権代理人が単独相続した場合、無権代理人は追認を拒絶することはできない。
10 無権代理人が死亡して、本人が相続した場合、本人に対して、履行請求か損害賠償請求をすることができる。

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