|更新日 2019.11.10
|公開日 2017.07.04

31年間の出題傾向意思表示全体の出題数は18問頻出テーマです。内訳は、錯誤3問、詐欺1問、総合問題9問で、虚偽表示は5問です。
直近では、平成30年(2018)に1選択肢で出題されました。
虚偽表示は、意思表示の中では重要なテーマで、法的な思考力を養うにはもってこいといえます。
とくに「善意の第三者」に対する権利関係は要注意です。
[改 正] 虚偽表示を定めた新94条は、旧民法の規定をそのまま採用しています。一言一句変更はありません。

れいちゃん02

虚偽表示って何なの?

たくちゃん04

相手と相談して「うその契約」をすることだよ。

れいちゃん03

えー! そんな契約をしたらどうなるの?

たくちゃん03

もちろん無効だよ。とくに第三者との関係が問題になるね。

1|虚偽表示って何?

ふつう私たちは「うその契約」なんてしませんよね。
相手方と示し合わせて売買契約をでっち上げる、なんてことします?
ほとんど経験しませんよね。

虚偽表示というのは、私たちがほとんど経験しないようなことなんです。
とくに土地・建物などの不動産取引に関してはね。不動産取引でうその契約をするというのは、相当にワルイ連中です。

 虚偽表示の意味

虚偽表示というのは「相手方と通じてした虚偽の意思表示」をいいます。
「相手方と相談してうその契約をでっち上げる」ことです。
たとえば、債権者の差押えを免れるため、あるいは税金をごまかすため、「本当は売買の意思がないのに土地・建物の所有者名義を第三者に移転する」というような行為です。

|実際の試験問題では|
「虚偽表示」という用語は、「心裡留保」と同様、条文には存在しません。
条文には「相手方と通じてした虚偽の意思表示……」(94条1項)と書いてあります。

実際の試験問題でも「虚偽表示」という用語は使われておらず、「売り渡す意思はないのに通謀して」とか、単に「通謀して」「仮装譲渡」、あるいは「意を通じた仮装のもの」「仮装の売買契約」などと書いてあります。
問題文にこうした記述があれば、ズバリ「虚偽表示」のことですからね、注意しておきましょう。

2|虚偽表示の効果

双方がその気もないのに結んだ契約は有効なのでしょうか。

 当事者間における効果

典型的な例をあげて考えていきましょう。

虚偽表示

Aが、債権者の差押えを免れるために、売却の意思はないのに、知人Bと通謀して自分の土地をBに仮装売買し、登記を移転したとしましょう。
他人Bの所有となった(らしい)土地に対しては、Aの債権者はもう差押えはできませんからね。
はたして、このような売買契約は有効なのでしょうか。

|虚偽表示は無効である|
民法は「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする」と定めています。
相手方と通謀した虚偽の意思表示は、当事者間では無効です。「うその契約は無効である」ということです。

|意思なきところに効果なし|
意思表示制度というのは「当事者が本当に意図するところ(内心の意思)に従って法律効果を与える」という制度です。
ところが虚偽表示は、内心の意思がないのに、「あるかのような外観」を作り上げているのです。
当事者双方は、本当は売る意思も買う意思もない、つまり、はじめから所有権を移転させようという意思は「存在しない」わけです。

したがって「意思なきところに効果なし」という意思表示制度の原則どおり、AB間の仮装売買は効力を生じないもの、つまり無効とされるのです。
そもそも「うその契約」に法律上の効力を与える必要はまったくありませんからね。

虚偽表示による売買契約は無効であって、契約としての拘束力はありません。
つまり、土地の所有権は移転しないで「はじめからAにあった」ということであるため、Aは土地を引き渡す義務はなく、Bも代金を支払う義務はありません。
たとえBに登記が移転されていても、Bの登記は実体を伴わない無効の登記なので、Aはいつでも売買契約の無効を主張して、無効登記の抹消を請求できることになるわけです。

 第三者に対する効果

重要なのは、第三者に対する効果です。
Bが自分に登記があることをいいことに、その土地を第三者Cに売ってしまったという場合、はたして、Aは虚偽表示による契約の無効を主張してCから土地を取り返せるでしょうか(ちなみに、Bには横領罪などの犯罪が成立します)。

これは、いいかえれば「真実の権利者Aを保護すべきか、それとは知らずに権利を取得した第三者Cを保護すべき」かという問題なんですね。

虚偽表示と第三者

この場合、民法は「虚偽表示による無効は、善意の第三者に対抗することができない」として、善意の第三者Cを保護しています(94条2項)

|対抗できないとはどういうことか|
「善意の第三者に対抗できない」という意味は、Aとの通謀によってBが所有者になっていることを「知らない」善意の第三者Cとの関係では、AB間の仮装売買は「有効になされたものとして扱う」、つまり所有権は、A→B→Cに「有効に移転」しており、Cは「完全に所有権を取得する」ということです。ここは重要です。

Aは、善意の第三者Cに対しては「AB間の契約は虚偽表示により無効だから、土地の所有権はBに移転しておらず、所有権は私にある」ということを主張できないのです。
たとえ登記が第三者Cに移転していなくても、AもBも、Cに登記がないことを主張して土地の返還を求めることはできません(最判昭44.5.27)

こうして、善意の第三者との関係では、無効の主張を制限したのです。
いうまでもなく、善意の第三者を保護して取引の安全を図るためなのです。

もちろん「AB間」では、虚偽表示が無効であることに変わりはないのですから、AはBに対して虚偽表示の無効を主張して土地の返還を求めることができます。
しかし、Cが完全に所有権を取得していますから、結局、返還できないことによる損害賠償をBに請求することになるのです。

※ 「善意の第三者を保護する=取引の安全を図る」という考え方は、民法や判例の基本的な思想で、表見代理制度など、今後いたるところで出てきますので、記憶しておきましょう。

3|善意の第三者

 第三者の範囲

さて「虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗できない」のですが、「第三者」とはだれをいうのでしょうか。

|第三者の範囲|
無効を対抗できない「第三者」というのは、すべての第三者ではなく、仮装売買などの虚偽表示による意思表示を前提として「新たに利害関係に立った第三者」をいいます。
たとえば、仮装譲受人Bからの「譲受人」とか、仮装譲受人Bに対する「抵当権者」とか、あるいは仮装債権の「譲受人」などが該当します。

いうまでもなく、虚偽表示をした当事者やその承継人(たとえば当事者の相続人)は「第三者」ではありませんからね。

ほかに注意点をあげておきましょう。

「当事者」に対しては、第三者が無効を主張してもよく、たとえば仮装譲渡人Aの債権者は、仮装譲受人Bのもとにある不動産を差し押さえることができます。

「善意の第三者」に対しては、当事者はもちろん、他の第三者も無効を主張できません。Cに対しては、仮装譲渡人Aの債権者も無効を主張できないのです。

 善意・悪意の時期は「取引当時」を基準とします。
この時に善意であれば、あとで虚偽表示の事実を知って悪意になっても、善意であることに変わりはありません。

 過失があっても保護されるか

善意の第三者は過失があってもいいか、つまり「不注意で知らなかった」場合でも保護されるのでしょうか。

判例は、善意の第三者には過失があってもよい、つまり「無過失」であることを要しないとしています(大判昭12.8.10)
AB間の契約が仮装譲渡であることを「過失によって知らなかった」としても、第三者は保護されます。善意でありさえすればいいのです。

もともと民法では「真実であるかのような権利関係の外観」(Bに登記があるからBが権利者であるかのような外観)を信頼する第三者を保護しようという場合には、その第三者に過失がないこと、つまり「無過失」を要件とするのが原則です。

ところが虚偽表示の場合は、当事者が「積極的に虚偽の状態を作り出している」わけですから、その責任は重く、したがって第三者にはそれほど厳しい条件を要求しないで、とにかく「善意」であればよく、過失で知らなかった場合でも保護されるべきだとして「無過失」までは要求されないのです。
うその契約をでっち上げたABに同情の余地はなく、自業自得というわけですね。

「心裡留保」の場合も、第三者は「善意」であれば保護されましたね。「無過失」までは要求されませんでした。
やはり、故意にうその意思表示をした本人の責任は重く、その比較から、第三者にはそれほど厳しい条件は必要とされないのです。

 善意の第三者には登記が必要か

では、善意の第三者が保護されるために登記は必要でしょうか。
先に結論をいえば、登記は不要です。

「第三者Cとの関係」では、AB間の契約は有効として扱うということですから、所有権は、A→B→Cに有効に移転しており、その結果、A・Bは完全な無権利者になります。
Cは、Bから完全に所有権を取得するために、そもそも登記は必要ないのです。

したがって、Bにまだ登記が残っている場合に、Aがその登記を回復した後であっても、CはAに対して、登記の移転を請求することができます。

 転得者は第三者に含まれるか

虚偽表示の転得者

第三者Cからの転得者Dも「第三者」に含まれます。
転得者は善意であれば、直接の第三者が保護されるのと同じように保護されます。
前主の第三者Cが「悪意」であっても関係ありません。

また、Dは悪意であっても、前主Cが「善意」であれば、この時点でCは確定的に所有権者になっていますから、Dは真の権利者から所有権を取得したことになり、善意者の地位を承継するからです。
したがって、Aに対する関係でも完全な所有権者になります。

Aは、第三者C・転得者Dの双方が悪意のときに限り、虚偽表示の無効を主張できるにすぎません。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 「実際には売り渡す意思はないのに」「通謀して」行う意思表示は虚偽表示であって、表意者の真意に基づくものではないので無効ですね。
虚偽表示をした理由は関係ありません。正しい記述です。

[正解&解説] 虚偽表示による仮装譲渡は無効ですが、この無効は善意の第三者には対抗できませんでした。
したがって、Aは、AB間の仮装譲渡を知らない善意の第三者Cに対して「虚偽表示による無効を対抗することができない」という記述は、正しいですね。

ポイントまとめ

 虚偽表示は、当事者間では無効
 この無効は、善意の第三者には対抗できない
 善意の第三者は、過失があっても保護される。無過失でなくてもいい。
 善意の第三者は、登記がなくても保護される。
 転得者は善意であれば保護される。前主である第三者の善意・悪意は無関係。
 悪意の転得者も、前主の第三者が善意であれば保護される。

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