|公開日 2020.08.17

31年間の出題傾向「土地の工作物責任」は、わずか3問です。直近は平成17年(2005)、以後14年間出題されていません。
また「共同不法行為責任」は単独で出題されたことはなく、使用者責任との絡みで、わずか2問です。
直近では平成25年(2013)に出題され、以後6年間出題なしです。
いずれも、時間がないときはスルーでもかまいません。
[改 正] ありません。

1|土地の工作物責任

1 意味・性質

「土地の工作物等の責任」というのは、土地の工作物の瑕疵(設置または保存)のために、他人に損害を生じさせた責任は、第1次的に占有者が、そして占有者が「損害の発生を防止するのに必要な注意をした」ときは、所有者がその責任を負わなければならない、とする特殊の不法行為責任です。

この責任は、加害の原因となった瑕疵を「だれが作り出したかにかかわりなく」占有者・所有者に生じる性質のもので、また占有者・所有者の故意・過失が加害の事実そのものについて存在することも要件ではありません。
とにかく、土地工作物の瑕疵によって他人に損害を生じさせた責任は、占有者・所有者が負わなければならないのです。

この根拠は、他人に損害を生じさせるかもしれない危険性をもった瑕疵ある工作物を支配している以上は、「その危険について責任がある」という危険責任に求められています。

|土地の工作物|
「土地の工作物」というのは、家屋や橋梁(きょうりょう)などの建造物のほか、水道設備・道路・電柱など土地に接着して人工的に築造されたあらゆる設備をいいます。
「機械」のように、工場内に据付けられたものは含まれません(大審大1.12.6)

宅建試験では、「建物の外壁」の瑕疵や、「家屋を囲う塀」の瑕疵などが出題されています。

2 だれが責任を負うか

1|第1次的に占有者、最終的に所有者
賠償責任の負担について、占有者と所有者は「順位的関係」にあって、第1次的には占有者が賠償責任を負います。
ただし、占有者が「損害の発生を防止するのに必要な注意をしたこと」を証明すれば、占有者は免責され、所有者が、最終的に賠償責任を負担します。

所有者には、なんらの免責事由が認められておらず、完全な無過失責任です。
つまり、所有者は「損害の発生を防止するのに必要な注意」を怠らなかったことを立証しても免責されません。
「過失がないとき」でも賠償責任を負うわけです(大審昭3.6.7)
ただし、絶対的な責任ではないので、たとえば、異常な自然災害などが原因だったときには「不可抗力」を理由に免責が認められる場合があります。

2|求償関係
工作物責任は、占有者または所有者に生じる性質のものですが、工作物を設置した「請負人」など、損害の原因について「他に責任を負うべき者」があるときは、損害賠償をした占有者・所有者は、その者に対して求償することができます。

3 損害賠償請求権の消滅時効

土地工作物責任による損害賠償請求権は、一般の不法行為責任と同様に、①または②に従い、時効消滅します。

 被害者またはその法定代理人が、損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき
 不法行為時から20年間行使しないとき

2|共同不法行為責任

1 意 味

共同不法行為というのは、①数人の者が共同の不法行為によって他人に損害を加えたとき、②共同行為者中のだれが実際に損害を加えたか明らかでないとき、および、③行為者を教唆(きょうさ)した者や幇助(ほうじょ)した者は、「生じた損害全額について連帯して責任を負う」ものとする特殊の不法行為です。

2 効 果

共同不法行為が成立すると、各人は「連帯して損害全額の賠償責任を負う」ことになります。
「連帯責任」とすることによって被害者の救済を図っているわけです。

このような責任は、損害の発生について直接・間接に「関連共同」しているため、結果についても共同責任とするのが妥当であるとの考えに基づいています。
このため、被害者は、共同不法行為者のだれに対しても賠償を請求することができ、厚く保護されることになるのです。

※ この考え方によると、加害者にとっては軽微な原因しか与えていない場合でも、全額の責任が負わされることになり、そのうえ、結果としては、資本力のある加害者だけに責任が集中するおそれもあります。
この不公平をどのように解消するかは、共同不法行為の1つの課題とされています。

3 連帯責任と求償関係

宅建試験に出題された例から確認しておきましょう。
「Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A・Cの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為をして、各人が、Eに対して損害賠償債務を負担した場合」です。

1|全額の連帯責任
たとえば、被害者Eに対する加害者BとDの「加害割合が6対4」であっても、使用者Aは、Eに対して全額の賠償責任を負わなければなりません。

被用者Bは、Eに対し損害全額の責任を負い、使用者Aは、その指揮監督下にある被用者Bと一体をなすものとして、Bと同じ内容の責任を負うのです。
加害割合6対4は、内部的な負担部分として考慮されるだけです。

2|使用者間の求償
使用者Aが、加害者B・Dの過失割合に従って定められる自己の負担部分を超えてEに賠償したときは、その超える部分について、他方の使用者Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができます。
各使用者間の求償は、責任分担の公平を図るために認められているからです。

3|被用者への求償
使用者Aが、被用者Bの不法行為により、Eに対し損害賠償債務を負担したことにより損害をこうむった場合は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、Bに対して損害の賠償または求償の請求をすることができます(最判昭51.7.8)

4|被用者による求償
使用者Cの被用者Dが、自己の負担部分を超えてEに対し損害を賠償したときは、その超える部分について、一方の使用者Aに対しAの負担部分(=Bの負担部分)の限度で求償することができます。
被害者Eとの関係では、使用者Aと被用者Bは一体をなすものであり、Aは、Bと同じ内容の責任を負うものだからです。

ポイントまとめ

 土地の工作物とは、建造物・道路・水道設備・電柱など、土地に接着して人工的に築造されたあらゆる設備をいう。機械など工場内に据付けられたものは含まれない。
 工作物責任を負うのは、第1次的に占有者、最終的に所有者である。
 占有者が「損害の発生を防止するのに必要な注意をしたとき」は免責され、所有者が賠償責任を負う。
 所有者の責任は無過失責任で、過失がないときでも賠償責任を負う。ただし「不可抗力」を理由に免責が認められる場合がある。
 工作物を設置した請負人など、損害の原因について責任を負うべき者があるときは、占有者・所有者は、その者に求償することができる。

 共同不法行為者の各人は、連帯して損害全額の賠償責任を負う。
 被用者が共同不法行為責任を負う場合、その加害割合に関係なく、使用者は全額の賠償責任を負う。
 使用者が、被用者の共同不法行為により損害賠償債務を負担したことにより損害をこうむった場合、信義則上相当と認められる限度において、Bに求償できる。
 共同不法行為者の被用者が、自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分について、一方の使用者に対しその負担部分の限度で求償できる。

宅建民法基礎|テーマ一覧