|更新日 2019.12.20
|公開日 2017.08.05

31年間の出題傾向31年間で10問出題。頻出テーマといえるでしょう。多くは、売買契約と関連して出題されています。
平成22年(2010)に判決文問題(かなり難問)が出題されて以来、ここ9年間出題されていません。気をつけましょう。重要なテーマですから、しっかり理解する必要があります。
[改 正] 大幅に改正されました。
れいちゃん02

契約の解除って?

たくちゃん01

契約をなかったことにすることだよ。

れいちゃん01

得点のポイントは?

たくちゃん02

やはり、解除できる要件とその効果だね。

1|解除の趣旨を知ろう

しっかりと約束をしたはずなのに、それが守られない。何度催促しても、ウンともスンとも言ってこない。
こんなことは、私たちのふだんの生活でもけっこうありますよね。
しかし、土地・建物の売買となると、事態は深刻です。

 解除の意味と機能

契約の解除というのは、一方の当事者の意思表示によって、すでに有効に成立した契約を解消させて、その契約がはじめから存在しなかったことにすることをいいます。一方的に、契約成立以前の状態に戻すわけです。

たとえば、不動産の売買契約で、期限になっても売主がその不動産を引き渡さない。そんなとき、買主としてはその引渡しを請求するとともに、履行遅滞=債務不履行を理由に損害賠償を請求する、あるいは裁判所に訴えて履行を強制することも可能です。
しかしこれらの場合には、買主は自分の代金債務を履行しなければなりません。
ただ今後も、このような売主とやっていくのは相当やっかいなものです。
買主としては、むしろ契約を解消して、新たに売主を探したほうがいいのではないでしょうか。

このように、当事者の一方がその債務を履行しないときに、相手方を救済するための手段として法律上当然に認められているのが、解除(法定解除)なのです。
ことに民法では、解除すれば自分の債務は消滅するうえに、相手方に責任があれば損害賠償を請求することもできますので、解除する者(解除権者)にとっては大変有利といえるわけです。

 債務者の帰責事由は不要

解除は、債務不履行が、債務者の帰責事由によるものでなくてもすることができます。不動産の引渡しが、自然災害等により遅延している場合でも、解除することができます。
というのも、解除は、債務者に対する「責任追及の手段」ではなく、債権者を契約の拘束から解放するための制度だからです。
債務不履行の責任を追及する損害賠償とは、この点が異なります。

2|履行遅滞による契約解除

 催告による解除

相手方が履行遅滞にある場合にする解除は、催告による解除です。

1|履行の催告
さて、相手方が履行遅滞にあっても、直ちに契約を解除することはできず、必ず催告が必要です。
まず相手方に対して相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときに、解除することができるわけです。
民法としては、いったん有効に成立した契約ですからなるべく存続させたいわけで、また相手方にも最後のチャンスを与えるのが適切だからです。

注意しなければならないのは、相手方が「履行遅滞」にあるということです。
履行期に履行しないからといって、それが直ちに「履行遅滞」になるとはいえない場合がありましたね。

ここで、同時履行の抗弁権が思い浮かびましたか。
たとえば、売買のような双務契約の場合、双方には「同時履行の抗弁権」がありますから、相手方が履行期に履行しないからといって、必ずしも「履行遅滞」にあるわけではありませんね。

したがって、契約を解除するためには、相手方が「履行遅滞」にあることが必要ですが、そのためには、解除権者は自ら履行の提供(弁済の提供)をして、同時に履行しなければならないという状況を解消、つまり相手方の「同時履行の抗弁権」を消滅させる必要がありましたね。

「同時履行の抗弁権」があるからこそ、相手方は「履行遅滞」にならないのですから、「履行遅滞」にするには、この抗弁権を消滅させることが必要なのです。

そして、「履行の提供」をして「履行遅滞」となった相手方に対して「催告」し、履行がないときに解除できるわけです。
「履行の提供」もせずに、「催告」するだけで解除することはできないのです。

2|軽微な債務不履行
ただし、催告期間を経過した時の債務不履行が、「その契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」には、解除することはできません。
契約目的の達成に必須的でない「付随的義務」の不履行や、「僅少部分」の不履行にすぎない場合には、解除はできず、損害賠償などの救済手段で満足すべきなのです。

 不相当に短い催告期間

ところで催告するにはしたのですが、催告期間が不相当に短いときはどう考えるべきでしょうか。催告期間が「不相当に短い」催告は有効なのでしょうか。
それとも、改めて相当の期間を定めて催告をやり直すべきでしょうか。

判例は、催告期間が「不相当に短いとき」であっても、その催告は有効であり、催告の時から起算して客観的に相当期間を経過すれば、改めて催告しなくても解除できるとしています。
相手方はすでに履行遅滞にあるのですから、非は相手方にあり、再度の催告は不要とされるのです(最判昭44.4.15)

 解除権に条件をつける?

解除の意思表示に条件をつけることは、相手方の立場をひどく不安定にするため、原則として許されません。

しかし、たとえば「1週間以内に履行がないときは、改めて解除の意思表示をしなくても、契約は解除されたものとする」というような条件であれば、すでに履行遅滞にある相手方をとくに不利益にするものではないので、有効とされます。
実際上きわめて多く行われています。

3|履行不能による契約解除

|催告しなくても解除できる|
債務が履行不能の場合は、催告することなく、直ちに解除することができます。
いくら催告しても履行の可能性はありませんからね。

今回の改正で、全部が履行不能の場合と一部が履行不能の場合が明文化されました。

 全部が履行不能の場合

債権者が、催告をすることなく直ちに解除できるのは、次の場合で、履行期前でも解除できます。

① 全部の履行が不能であるとき
たとえば、売主の不注意により、あるいは自然災害等により、不動産全部の引渡しが履行不能となったような場合、これを理由に解除することができます。

② 全部の履行を拒絶する債務者の「明確な意思表示」があるとき
「履行を拒絶する趣旨の言葉を発した」だけでは不十分で、「履行を拒絶する意思を明確に表示した」ことが必要です。

③ 一部の履行不能または一部の履行拒絶により、残存部分のみでは契約目的が達成できないとき
この場合も、契約全部を解除することができます。

④ 催告をしても目的達成の見込みがないことが明らかであるとき

 一部が履行不能の場合

次の場合にも、債権者は催告せずに、直ちに契約の一部を解除することができます。

 一部の履行が不能であるとき
 一部の履行を拒絶する債務者の「明確な意思表示」があるとき

4|解除の効果

 当事者間

1|原状回復義務
契約が解除されると、契約ははじめから存在しなかったことになり、したがって双方は、相互の債務について「契約がなかった状態に戻す義務」=原状回復義務を負うことになります。

まだ履行されていない「未履行債務」は履行する必要はなくなり、すでに履行された「履行済み債務」であれば、履行として受けとった物や利益を互いに返還する必要があります。
金銭を返還するときは、その受領時からの利息をつけなければなりません。
「解除の時点」からの利息ではありません。

2|使用利益の償還義務
解除の効果として、買主の使用利益の償還義務について【判例】を確認しておきましょう。

① 最判昭34.9.22
「特定物の売買により買主に移転した所有権は、解除によって当然遡及的に売主に復帰すると解すべきであるから、その間、買主が所有者としてその物を使用収益した利益は、これを売主に償還すべきものであること疑いない」

② 最判昭51.2.13
「売買契約が解除された場合に、目的物の引渡しを受けていた買主は、原状回復の内容として、解除までの間に目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負う」

3|原状回復義務と同時履行
双方の原状回復義務は、売買のような双務契約であれば、同時履行の関係に立ちます。
売主の代金返還債務と、買主の目的物返還債務は、同時に履行する必要があります。

4|損害賠償義務
契約が解除されると、債務不履行による損害賠償請求権も生じなかったはずですが、解除権者を保護するために、解除の遡及効に制限を加え、解除があっても損害賠償請求権が認められています。

結局、買主が解除すると、①代金返還請求、②受領時からの利息の支払い請求、③損害賠償請求の各請求をすることができることになります。

 第三者との関係

契約を解除しても、第三者の権利を害することはできません(545条1項)。
第三者については、解除前と解除後に分けて考える必要があります。

1|解除前の第三者との権利関係
この場合は、解除の遡及効、つまり545条1項の問題です。

契約の解除と第三者との関係

買主Bが第三者に売却した後になって、Aが、Bの債務不履行を理由にAB間の契約を解除した場合は、Aは、解除による所有権復帰を第三者に対抗できません。

契約が解除されると、解除前に権利を取得していた第三者も「はじめから権利を取得しなかった」こととなります。
しかし民法は、他人の債務不履行によって第三者が権利を失うのは行きすぎと考えて「第三者の権利を害することはできない」と定め、解除の遡及効を制限して第三者を保護しました。

ただし、第三者は、善意・悪意が問題とされない代わりに、Aよりも先に登記を備える必要があります(最判昭33.6.14)
この場合の登記は、Aと対抗関係に立つからではなく、保護に値する第三者となるには、権利者としてなすべきことを全部終えていなければならないという理由です。

2|解除後の第三者
この場合は、177条の対抗問題です。

Aが、Bとの契約を解除した後に、第三者が現れた場合には、
① 解除によるB→Aの所有権復帰
② 解除後のB→第三者への所有権移転とは、二重譲渡と同様に対抗関係となり、その優劣は対抗要件(登記)で決まります。

Aが解除しても、その所有権復帰の登記をしないうちに、解除後の第三者が先に登記を備えてしまえば、Aは第三者に所有権を対抗できません。
177条の原則どおり、先に登記をしたほうが勝つのです。

 解除権の不可分性

当事者の一方が数人あるときは、契約の解除は、その全員から、または全員に対してのみ、することが必要です。これを解除権の不可分性といいます。
したがってまた、1人について解除権が消滅すれば、全員について解除権が消滅します。
一部の者とだけ解除の効果を認めると、法律関係が複雑になるからです。

たとえば、夫婦が共同でマンションを借りている場合、貸主は、配偶者の一方に対してだけ解除の意思表示をしても、効果は生じません。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 買主の代金不払=債務不履行を理由に契約を解除すれば、契約ははじめから存在しなかったことになる、つまり「さかのぼって消滅する」ため損害賠償請求権も生じないはずですが、解除権者保護のため解除の遡及効が制限され、したがって損害賠償請求権は存続することになります。
「損害賠償請求はできない」との記述は、誤りです。

ポイントまとめ

 履行遅滞による契約解除は、まず相手方に対して相当期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときにすることができる。
 契約を解除するためには、相手方が履行遅滞にあることが必要で、そのためには、解除権者は自ら履行の提供をして、相手方の同時履行の抗弁権を消滅させる必要がある。
 催告期間が不相当に短いときでも、その催告は有効であり、催告の時から起算して客観的に相当の期間を経過すれば、改めて催告しなくても解除できる。
 全部の履行を拒絶する債務者の明確な意思表示があるときは、催告せずに解除できる。
 一部が履行不能の場合には、催告せずに「直ちに」一部を解除できる。

 解除の結果、買主には使用利益の償還義務が生じる。
 売主の代金返還債務と、買主の目的物返還債務は、同時履行の関係にある。
 当事者の一方または双方が数人あるときは、その全員から、また全員に対して、解除の意思表示をしなければならない(解除権の不可分性)。
 契約が解除されると、当事者双方は、互いに原状回復義務を負う。
金銭を返還するときは、受領時からの利息をつけなければならない。
10 解除権を行使しても、第三者の権利を害することはできないが、その善意・悪意は問題とされない。ただし保護されるには、登記を備える必要がある。
11 解除前の第三者は解除の遡及効の問題であり、解除後の第三者は対抗問題である。

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