|公開日 2017.9.26|更新日 2018.7.11

今回は委任です。29年間で4問(四択)の出題です。選択肢で出されることもありますので、基本事項だけ確認しておきましょう。

1 意 味

委任というのは、「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」(643条)とあるように、法律事務の処理を人に依頼する契約のことです。

たとえば、不動産業者に土地・建物の売却購入を依頼したり、マンションの賃貸を依頼するような場合です。

前者は「売買契約の締結」を委任しており、後者はマンションの「賃貸借契約の締結」を委任しているわけです。

♦ 委任と委託の違い

他人に事務処理を依頼する契約には、委任準委任があります。この違いは、委任は、受任者が「売買契約や賃貸借契約を締結する」というように、事務処理の内容が「契約を締結する」ことであるのに対し、準委任は、受託者が「不動産を管理する」「学校を経営する」というように、「契約の締結」以外事実的行為の事務処理が内容になっている点にあります。

委任は、このように契約締結が内容になっているので、通常、受任者には契約締結の代理権が与えられており、ほとんどが「代理人」となります。

また、宅建業法で出てくる媒介契約(売主・買主の仲介をする)は、準委任に該当します。準委任は委託ともいいます。

準委任(委託)には「委任の規定が全部準用」されますので、結局、両者を区別する実益はほとんどないため、同じように考えて問題はありません。

・委任 → 事務処理の内容は「契約締結」
・委託 → 事務処理の内容は「事実的行為」
(委任の規定が準用)

委任契約の際には、通常は委任状が交付されますが、委任状は第三者に対して受任者の権限を証明する手段であって、委任成立の要件ではありません。

主要なポイントを整理しておきましょう。

2 受任者の義務

1 善管注意義務

委任は、歴史的に、委任者と受任者双方の人間的な信頼関係を基礎として成立してきており、「対価の関係」で成立してきたものではないという背景があります。

したがって、受任者は、報酬の有無に関係なく、委任の本旨に従い、「善良な管理者の注意(善管注意)」をもって、委任事務を処理しなければなりません。「自己の事務処理におけると同程度の注意義務」では足らないのです。

委任も準委任も、対価の関係ではなく相互の信頼関係を基礎としているので、たとえ報酬がなくても、善管注意を欠けば「過失あり」として債務不履行となります。
無報酬だからといって、受任者の責任が軽くなることはないのです。

2 報告義務

受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも事務処理の状況を報告しなければなりません。請求があるときに委任事務の処理状況を報告すればよく、必ずしも「定期的に」報告する必要はありません。

また、委任終了後は「遅滞なく」その経過および結果を報告しなければなりません。

3 受取物の引渡義務

受任者は、事務処理中に受領した金銭、収取した果実を委任者に引き渡さなければならず、また、自己名義で取得した権利は、その名義を委任者に移転しなければなりません。

4 金銭消費についての責任

委任事務処理にあたって金銭を受けとっても、その金銭は委任者の財産に帰属するものですから、受任者が、委任者に引き渡すべき金額を自分のために消費した場合には、金銭の引渡時期が到来していないときでも、金銭を消費した日以後の遅延利息を支払い、損害があれば、その賠償責任を負わなければなりません。

5 受任者の復任権

代理のところでも学習しましたが、受任者は、原則として、自分で事務を処理し、他人に代行させることができません。
例外的に、①本人の許諾を得たときか、または、②やむをえない事由があるときでなければ、復代理人を選任できないのです。これも委任の特質から導かれることです。

3 委任者の義務

1 報酬支払義務

委任は無償が原則であるため、特約がなければ報酬を請求することはできず、また報酬があるときも、原則として、委任事務の履行後でなければ請求することができません。
つまり後払いが原則ですから、受任者は、報酬に関して同時履行の抗弁権はないのです。

委任が、受任者の「責めに帰することができない事由」によって履行の中途で終了したときは、受任者は、すでに履行した割合に応じて報酬を請求することができます(割合的報酬請求権)。
委任の報酬は、請負のように「仕事の完成」に対してではなく、事務処理の「労務そのもの」に対して支払われるものだからです。

2 費用前払い、費用償還義務

委任には、報酬の有無に関係なく、費用等に関して次の義務があります。

① 受任者の請求があれば、事務処理費用を前払いしなければなりません。
② 受任者が立て替えた費用を、支出日以後の利息を含めて償還しなければなりません。
③ 受任者が事務処理のために「過失なく」損害を受けた場合は、その賠償をしなければならず、この損害賠償は、委任者の「無過失責任」です。

4 委任の終了

1 無理由解除

委任は、報酬の有無に関係なく、双方からいつでも解除することができます。
ただし、相手方に「不利な時期」に解除した場合には、原則として、損害を賠償しなければなりませんが、やむを得ない事由による場合には、損害賠償の責任はありません。

このように特別の理由がなくても解除できるのは、委任が双方の信頼関係を基礎としているからです。相手方を信頼できなくなったときは、いつでも解消できるようにしているわけです。

2 その他の終了事由

解除以外の終了事由は、次の3つです(任意代理権の消滅事由と同じです)。

1 委任者または受任者の死亡
たとえば、受任者が死亡すれば、有償・無償に関係なく、委任契約は終了します。
受任者の相続人が、受任者としての地位を承継することはありません。
委任は、双方の個人的な信頼関係が基礎となっているので、相続には適さないのです(一身専属性)。

2 委任者または受任者が破産手続開始の決定を受けたこと
3 受任者が後見開始の審判を受けたこと

双方に共通する終了事由は、死亡破産手続開始の決定の2つです。

後見開始の審判については「受任者」だけ。現実に事務処理(法律行為・事実的行為)を行うのは受任者ですから、委任者が後見開始の審判を受けてその行為能力が制限されても、委任は終了しないのです。

3 委任終了後の特別措置

委任の終了に際して、当事者に不測の損害が生じることのないよう、2つの特別措置がおかれています。これも当事者間の信頼関係から認められたものです。

1 緊急処分
委任者の死亡等により委任が終了した場合であっても、「急迫の事情」があるときは、受任者は、引き続き事務処理を行うなど、委任者の相続人等が事務を処理できる状態になるまで、必要な処分をしなければなりません(緊急処分義務)。
事務処理を放置して、委任者側に不測の損害を与えないためです。

2 委任終了の対抗要件
委任の終了事由は、
・これを相手方に通知したとき、または、
・これを相手方が知っていたとき
でなければ、相手方に対抗することができません。したがって、そのときまで当事者は委任契約上の義務を負うこととなります。

5 条文とポイントまとめ

1 ポイントまとめ

1 受任者の報酬請求権
委任契約は無償が原則だから、特約がなければ、報酬を請求できない。

2 受任者の善管注意義務
報酬の有無にかかわらず、受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う(善管注意義務)。

3 当事者双方の解除権
委任は、報酬の有無に関係なく、当事者双方からいつでも解除できる。

4 相手方に不利な時期の解除
委任は、いつでも解除できるが、相手方にとって不利な時期に解除したときは、やむを得ない事由がある場合を除いて、相手方の損害を賠償しなければならない。

5 一身専属性
受任者が死亡すれば、有償・無償に関係なく、委任契約は終了する。
受任者の相続人が承継することはない。

6 委託終了後の緊急処分
委任者が死亡すれば、委託契約は終了する。しかし、急迫の事情があるときは、受任者は、委任者の相続人等が事務処理できる状態になるまで必要な処分をしなければならない(緊急処分義務)。

2 条文の確認

♠ 644条(受任者の注意義務)
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

♠ 645条(受任者の報告義務)
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

♠ 648条(受任者の報酬)
1 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
2 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、その期間の経過後に請求することができる。
3 委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。

♠ 649条(受任者による費用の前払請求)
委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。

♠ 650条(受任者の費用等償還請求等)
1 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2 (略)
3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

♠ 651条(委任の解除)
1 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

♠ 653条(委任の終了事由)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者または受任者の死亡
二 委任者または受任者が破産手続開始の決定を受けたこと
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと

♠ 654条(委任終了後の処分)
委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者(またはその相続人あるいは法定代理人)は、委任者(またはその相続人もしくは法定代理人)が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。

♠ 655条(委任終了の対抗要件)
委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、または相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。


(この項終わり)