|公開日 2017.7.8|最終更新日 2018.5.23

今回のテーマは、復代理と代理権の消滅です。やさしいテーマですから、ケアレス・ミスが命取りになります。

1 復代理人──本人の代理人である

復代理というのは、代理人が自分の権限内の行為を行わせるため、復代理人を選任し、本人の代理人とすることです。
復代理人は、代理人の代理人ではなく、本人の代理人ですから「本人の名」で代理行為をし、その効果は本人に帰属します。

復代理人を選任する権限を「復任権」といいますが、復任権は、本人の許諾や法律の規定によって付与される別個の権限とされますので、復代理人を選任することは代理行為ではありません。

復任権については、任意代理と法定代理とでその範囲・責任に違いがあります。

1 任意代理人の復任権

任意代理人は、本人の信頼に基づいて選任されているので、原則として復任権はありません。委ねられた事務を他人任せにしないで、自分で処理するのが原則です。
本人からすれば、代理人その人を信頼して選任したわけですから、簡単に復代理人を選任されては困るでしょう。

ただし、次の①または②に限っては、復代理人を選任することが許されます。
① 本人の許諾を得たとき
② やむを得ない事由があるとき(たとえば緊急の事情があって本人の承諾を得る時間もないときなど)
この2点を押さえてください。

2 法定代理人の復任権

法定代理人は、本人の許可や特別の事情がなくても、いつでも自己の責任で自由に復代理人を選任できます。
法定代理人の権限は、広範囲にわたり、辞任も容易ではなく、しかも本人の信任に基づいて代理権が与えられたものではないからです。

3 選任による代理人の責任

1 任意代理人の場合
復代理人を選任したときは、その選任・監督について責任を負います。

しかし、本人の指名に従って復代理人を選任した場合は、責任が軽減されます。つまり、復代理人が不適任・不誠実であることを知りながら、本人に通知せず、または、解任することを怠った場合にのみ責任を負います。
代理人の責任として当然でしょう。

2 法定代理人の場合
復代理人の選任・監督に過失があろうとなかろうと、復代理人が本人に損害を加えたときは、法定代理人は、常に責任を負います。
ただし、選任することが病気などやむを得ない事由によるときは、任意代理人と同じく、選任・監督についてのみ責任を負います。

4 復代理の効果

復代理人は、代理人の代理人ではなく本人の代理人ですから、代理人と同一の権利を有し義務を負います。
また、復代理人の選任は代理権の譲渡ではないので、復代理人を選任しても代理権が消滅することはありません。
代理人・復代理人が同等の立場で、ともに本人を代理することになります。

復代理人は、代理人の選任・監督に服し、その復代理権も代理人の権限内に限られます。

2 代理権の消滅原因──代理権は相続される?

代理権の消滅は「代理権消滅後の表見代理」で問題となりますので、シッカリ押さえておきましょう。

1 共通の消滅原因

1 本人の死亡
本人が死亡したときは、本人の相続人の代理人となるのではなく、代理権は消滅します。
本人を保護するための法定代理では、代理の必要がなくなるためです。
また任意代理では、本人が信任した代理人をそのまま相続人の代理人とすることは適切ではないからです。

ただし、当事者間で特段の合意があった場合は例外として、当該事務処理に関しては代理権は存続します。
預金通帳等を交付して、入院費の支払いや葬儀の施行など自己の死後の事務処理を委託した契約について、「死後も代理権を終了させない旨の合意を含む」とした判例があります(最判平4.9.22)
本人死亡により代理権が消滅する不都合を解消する趣旨です。

2 代理人の死亡
代理人が死亡したときは、代理人の相続人が代理人となるのではなく、代理権は消滅します。代理権は相続されません。

3 代理人が後見開始の審判、または破産手続開始の決定を受けたとき
「すでに」代理人となっている者が、「その後」後見開始の審判を受けたときは、判断能力が不十分となったため、そのまま代理行為を担当させるのは適切ではないからです。

また、破産手続開始の決定を受けたときは、財産管理能力がなくなったわけですから、やはり代理人としては不適格といえます。

2 任意代理に固有の消滅原因

任意代理の場合には、このほかに、本人が破産手続開始の決定を受けたときにも、代理権が消滅します。
本人に財産管理能力がなくなるわけですから、そのまま代理人を通じて自由に契約させることは適切とはいえないからです。

3 条文とポイントまとめ

1 条文の確認

棒暗記するのではなくて、しっかり確認しておきましょう。

♠ 104条(任意代理人の復任権)
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

♠ 105条(復代理人を選任した代理人の責任)
1 代理人は、104条の規定により復代理人を選任したときは、その選任および監督について、本人に対してその責任を負う。
2 代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。
ただし、その代理人が、復代理人が不適任または不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知しまたは復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。

♠ 106条(法定代理人の復任権)
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、105条1項の責任(選任監督)のみを負う。

♠ 111条(代理権の消滅事由)
1 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
 一 本人の死亡
 二 代理人の死亡、または代理人が破産手続開始の決定もしくは後見開始の審判を受けたこと。
2 委任による代理権は、前項の事由のほか、委任の終了によって消滅する。

2 ポイントまとめ

♠ 復任権
1 任意代理人──原則として復任権はない。本人の許諾を得たとき、または、やむを得ない事由があるときに、例外的に認められる。
2 法定代理人──本人の許可や特別の事情がなくても、いつでも自己の責任で復代理人を選任できる。

♠ 代理権の消滅原因
1 法定代理・任意代理共通の消滅原因
 (本 人) 死亡
 (代理人) 死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判
2 任意代理権は、本人が破産手続開始の決定を受けたときにも消滅する。


(この項終わり)