|公開日 2017.7.20|最終更新日 2018.6.04

今回のテーマは法定地上権です。成立要件をシッカリ押さえましょう。あと抵当権の消滅などです。

1 法定地上権の意味

「地上権」というのはお分かりですね。
他人の土地を借りて、その上に建物を建てたり工作物を建造するための物権でしたね。

地上権は、もともと当事者間の「地上権設定契約」によって発生するのですが(約定地上権)、法定地上権は「法定」とあるように、当事者の意思や設定契約ではなく、一定要件の下に法律上当然に発生する地上権なのです。

なぜ通常の地上権のほかに、法定地上権が必要なのでしょうか。
どうして抵当権の項目に、地上権が出てくるのでしょうか。


法定地上権を定めた388条にはこうあります。
「土地およびその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地または建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について地上権が設定されたものとみなす。」

法定地上権は、土地と建物が同一の所有者に属する場合に、土地または建物について抵当権が設定され、その後、抵当権が実行(競売)されて「土地と建物の所有者が別人になったとき」は、建物のために地上権が設定されたものとみなされるというものです。

「建物のために」というのは、建物を保護するということです。
法定地上権は建物を保護するためのシステムなんですね。

どういうことかというと、競売の結果「土地と建物の所有者が別人になった」ときは、その所有者間では地上権設定契約が締結されていないのですから、土地の所有者(競落人)は、建物の所有者に対して、建物を撤去して土地から出て行けと主張して、更地にしてから自分の建物を建てることができるわけです。

どうしてだか、おわかりですね。
建物の所有者は、何の権利もなく他人の土地に建物を建てているという状態になっていますからね。

しかしこれでは、競売があるたびに建物が壊されてしまい、多大な経済的損失となるばかりでなく、建物所有者にあまりに不利益ですね。競売しても建物には買い手がつかないでしょう。
法定地上権が認められた趣旨は、こうした事情が考慮されているのです。

2 法定地上権の成立要件

どういう場合に法定地上権が成立するのか、その成立要件について注意すべき点を確認しておきましょう。

1 建物の存在とその時期

法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時にすでに建物が存在していることが絶対に必要です。これは判例の一貫した態度です。

たとえば、まだ建物が存在していない更地に一番抵当権が設定され、それから建物が築造され、その後設定された二番抵当権が実行されても、建物のために法定地上権は成立しません。

抵当権が実行されると、抵当不動産上のすべての抵当権(一番抵当権、二番抵当権)が一括して清算されますが、このとき建物のために法定地上権が成立するかどうかは、一番抵当権設定時が基準とされます。建物が存在する二番抵当権設定時ではありません。

一番抵当権設定時に建物が存在していない場合には、一番抵当権者は「建物のない土地」として、つまり法定地上権による利用制限がない土地として担保価値を高く評価していますから、その後に建てられた建物のために法定地上権を認めると、その価値が著しく害されることになるからです。

たとえ抵当権者が建物築造を事前に承認していても、法定地上権は成立しません。

問題となる点をみておきましょう。

1 登記は関係ない?
土地・建物が同一の所有者に属している場合に、土地に対する抵当権設定当時、建物が存在していれば、その保存登記がなくても法定地上権は成立します。
抵当権設定時に建物が存在していれば、土地の抵当権者は建物を前提に担保価値を評価するからです。

2 一方のみが譲渡されたときは?
同一人が所有する土地・建物のうち、建物だけに抵当権が設定された後に土地が譲渡された場合には、建物の競落人のために法定地上権が成立します。
すでに建物が存在していれば、建物上の抵当権は法定地上権を伴うものとして担保価値が評価されるからです。

3 再築の場合はどうなの?
土地に対する抵当権設定当時に建物が存在していれば、後に改築されたり、滅失して再築された場合でも、法定地上権は成立します。
抵当権設定時に建物が存在していれば、それが担保評価の基礎となっているからです。

4 別々に競落された場合
双方に抵当権が設定(共同抵当といいます)された後、双方が別人に競落された場合にも、建物のために法定地上権が成立します。

3 抵当地上の建物の一括競売

(法定地上権とは直接の関係はありませんが)抵当権設定後に、その抵当地上に建物が築造されたときは、抵当権者は(建物に抵当権を設定していないのだが)、土地とともに建物を一括競売することができます。

どうしてこんなことが認められているのでしょうか。

これは、抵当権の実行を容易にし、また、土地・建物を同一の買受人に帰属できるようにして建物の存続を図るためなんですね。

更地に抵当権を設定した後の問題で、抵当権設定後という点に要注意です。

ただし一括競売をしても、建物の売却代金からは優先弁済を受けることはできません。抵当権は土地だけに設定されているからです。

なお、競売できる建物は、
① 抵当権設定者が建築したものに限らず、
② 設定者以外の第三者が建築したものでもかまいません(建物所有者が抵当権者に対抗できる場合を除く)。

これは、第三者名義の建物が建築されることにより、一括競売が妨害される事例に対応するためなのです。

4 抵当権の消滅

抵当権の消滅原因には、
① 物権一般に共通のもの
② 担保物権に共通のもの
③ 抵当権に特有のもの
があります。簡単にみておきましょう。

1 物権一般に共通の消滅原因

目的物の滅失があります。
建物に抵当権を設定した後に、地震や土砂崩れで建物が崩壊すれば、抵当権は消滅します。瓦礫となった木材や建材の上に抵当権が存続するわけではありません(大判大5.6.28)。

2 担保物権に共通の消滅原因

債務者の債務が弁済されたり、時効消滅すれば、それを担保する債権者の抵当権も付従性により当然に消滅します。
ただし一部弁済の場合は、担保物権の不可分性により、抵当権は全体として存続します。また、抵当不動産が競売された場合にも消滅します。

3 抵当権の時効消滅

第三取得者が生じた場合は、代価弁済や抵当権消滅請求によって、抵当権は消滅します。さらに、時効による消滅があります。

1 抵当権の消滅時効
抵当権は、債務者および抵当権設定者(物上保証人)に対する関係においては、その担保する債権と同時でない限り、時効によって消滅しません。

2 目的物の時効取得による消滅
抵当不動産が債務者または抵当権設定者以外の者によって占有され、この者について取得時効が完成するときは、これによって抵当権は消滅します。
取得時効は原始取得ですから、所有権だけではなく抵当権も消滅するのです。

5 その他の注意点

1 抵当不動産の売主の担保責任

抵当不動産の買主(第三取得者)は、抵当権設定の知・不知に関係なく、抵当権の実行前においては、抵当権が設定されているからといって売買契約を解除することはできません。

抵当権が実行されて抵当不動産の所有権を失ったときに、契約の目的達成が不可能になったとして契約を解除できるのです。

2 買主の代金支払拒絶

買い受けた不動産に抵当権の登記があるときは、買主(第三取得者)は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、売買代金の支払いを拒むことができます。

この場合、買主がいつまでも抵当権消滅請求をしないで支払いを拒むことも考えられますので、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができます。

6 条文とポイントまとめ

1 条文の確認

♠ 388条(法定地上権)
土地およびその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地または建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について地上権が設定されたものとみなす。(以下略)

♠ 396条(抵当権の消滅時効)
抵当権は、債務者および抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

♠ 397条(抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅)
債務者または抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。

2 ポイントまとめ

1 法定地上権の成立には、抵当権設定当時に建物が存在していることが絶対に必要。

2 建物の保存登記がなくても法定地上権は成立する。

3 土地に対する抵当権設定当時に建物が存在していれば、後に改築・再築されても、法定地上権は成立する。

4 別々に競落された場合でも、法定地上権は成立する。

5 抵当権設定後、その抵当地上に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地と建物を一括競売することができる。

6 一括競売できる建物は、抵当権設定者が建築したものに限らず、設定者以外の第三者が建築したものでもよい。

7 抵当権は、目的物の滅失、弁済、競売、代価弁済、抵当権消滅請求などにより消滅する。

8 債務者または抵当権設定者以外の者により占有された抵当不動産の取得時効が完成すると抵当権は消滅する。


(この項終わり)