|公開日 2020.03.10


れいちゃん01

このテーマははじめて聞きますね。

たくちゃん01

今回の改正で新設されたテーマだよ。

れいちゃん01

どんな狙いがあるの?

たくちゃん02

何といっても、配偶者が死亡して残された一方配偶者の居住場所を確保するという点だね。


1|まえがき

|残された配偶者保護のための改正法|
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、改正相続法によって新設された配偶者保護のための規定です。

高齢化社会が進展してきたことに伴い、配偶者の一方が死亡したときに、残された配偶者(以下「配偶者」)もまた高齢であることが多く、とくに住み慣れた住居に居住する権利を保護する必要性がより高まっています。
配偶者の生活保障を考えるにあたっては、生活の拠点である居住場所の確保がとくに重要といえるわけです。

改正相続法は、上記2つの新たな権利を創設するほか、婚姻期間が20年以上の夫婦間については、いわゆる持戻し免除の意思表示があったものとする推定規定も新設しています。

2|配偶者短期居住権

 配偶者短期居住権の意味

短期居住権というのは、配偶者の一方が死亡した場合に、残された配偶者が相続開始時に被相続人の建物に無償で居住していたときには、無償での短期の居住権を認めるというものです。

「残された配偶者」の生活の拠点を保護するため、判例の従来の見解をもとに、今回これを明文化して、法定の短期居住権を認めたのです(最判平8.12.17)

 配偶者短期居住権の成立

配偶者短期居住権は、相続関係者の意思表示とは関係なく成立する居住権です。

夫婦が同居する不動産があっても、それが夫婦共有名義であるとは限らず、被相続人名義であることも少なくありません。

このような場合、当該不動産は相続財産として遺産分割の対象となるわけですが、旧法のもとでは、当該不動産に対する相続開始後の配偶者の占有権原が明確ではなく、生活の本拠となる居住の権利が十分には保護されないのです。

そこで改正法は、判例法理をもとに、配偶者に対し、一定期間につき当該不動産の居住権を認めたわけですが、これが配偶者短期居住権(短期居住権)です。

当該不動産を無償で使用することができる「使用貸借類似の権利」であり、一定の要件を満たしていれば、相続関係者の意思表示等をまたずに成立します。

 配偶者短期居住権の要件

短期居住権が認められる要件・内容は、①~④のとおりです。

①配偶者が、②被相続人の財産に属した建物に、③相続開始時に無償で居住していた場合に、④その居住建物の所有権を相続または遺贈等により取得した者に対して有する、その居住建物(一部使用のときはその部分に限る)に無償で一定期間居住することができる債権です。つまり──

① 短期居住権は、配偶者に認められた権利であること。
② 対象となる建物は、被相続人の財産に属した建物であること。
建物を被相続人が配偶者以外の他の者と共有していた場合でも、短期居住権は認められます。
③ 配偶者が相続開始時に無償で居住していた場合であること。
相続開始時に被相続人と同居している必要はありません。
④ 短期居住権は、居住建物の所有権を相続または遺贈等により取得した者に対する債権であること。

居住建物の取得者は、その居住建物を第三者に譲渡するなどして配偶者の居住建物の使用を妨げてはならないのですが、短期居住権に「第三者対抗要件は認められておらず」、したがって居住建物取得者がこの義務に違反して第三者に譲渡した場合でも、原則として配偶者は、居住建物の新所有者に短期居住権を主張できません。

なお、短期居住権では、居住建物の使用権限は認められますが、収益権限は認められません。後述する「配偶者居住権」と異なる点です。

また、配偶者が、①相続開始の時において「配偶者居住権」を取得したとき、または、②相続人の欠格事由に該当するとき、③廃除により相続権を失ったときは、短期居住権を取得することはできません。

 無償で居住できる期間

無償で居住できる期間は、(1)と(2)で区別されます。

(1) 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をする場合
(2) それ以外の場合

(1)の場合は、
① 遺産分割により居住建物の帰属が確定した日、または、
② 相続開始の時から6か月を経過した日
のいずれか「遅い日まで」短期居住権が存続します。

(2)の場合は、
配偶者以外の者が、遺贈、死因贈与により居住建物の所有権を取得したとき、あるいは配偶者が相続放棄したときなどです。
この場合には、居住建物取得者はいつでも短期居住権の消滅の申入れをすることができ、この申入れの日から6か月を経過した日まで短期居住権が存続します。

 配偶者短期居住権の消滅

短期居住権は、以下の事由によって消滅します。

① 期間満了
短期居住権は、一定期間に限って認められた権利なので、その期間が満了すれば、当然に消滅します。

② 配偶者の死亡
短期居住権は、相続開始時に被相続人の建物に居住していた配偶者に認められる権利なので、配偶者の相続人には相続されず、配偶者の死亡によって消滅します。

③ 配偶者居住権の取得
短期居住権を有していた配偶者が、配偶者居住権を取得した場合は、短期居住権によって保護を図る必要がなくなるため、短期居住権は消滅します。

④ 用法遵守・善管注意義務違反
短期居住権を取得した配偶者は、居住建物について、用法遵守・善管注意義務を負担することはもちろん、居住建物取得者の承諾なく第三者へ使用させることが禁止されます。

これらに違反した場合は、居住建物取得者は、短期居住権の消滅請求ができますので、これにより、短期居住権が消滅することになります。

⑤ 居住建物の滅失
対象である居住建物が全部滅失等した場合には、権利の目的物がなくなるため、短期居住権は当然に消滅します。

|原状回復義務|
なお、配偶者居住権を取得した場合を除いて、短期居住権が消滅した場合には、配偶者は、居住建物の返還、附属物の収去などの原状回復義務を負うことになります。

3|配偶者居住権

1 配偶者居住権の成立要件

配偶者居住権は、原則として、残された配偶者が死亡するまでの間、無償で引き続きその居住建物に居住できる権利です。

次の(1)~(3)に該当するときに配偶者居住権が成立します。

(1)配偶者が、相続開始時に「被相続人所有の建物に居住」していたこと
(2)被相続人が、居住建物を「配偶者以外の者」と共有していないこと
(3)以下の①または②のいずれかに該当するとき
① 当事者の意思による取得
・遺産分割等による配偶者居住権の取得
② 遺産分割審判による取得

(1)の要件については、配偶者居住権は配偶者の居住を保護する権利であり、生活保障を図る趣旨なので、被相続人が所有する建物に配偶者が居住している必要があるわけです。
「居住していた」というのは、当該建物を生活の本拠としていたことを意味します。

(2)の要件については、被相続人の遺言や共同相続人間の遺産分割によって、共有持分権者となった第三者に、配偶者による無償の居住を受忍すべきであるとの負担を生じさせることはできないためです。

なお、配偶者が共有持分権を有する場合には、配偶者居住権を取得することは妨げられません。

2 配偶者居住権の内容

1|法的性質
配偶者居住権は「賃借権類似」の法定債権とされます。

2|対抗力
居住建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。

3|使用収益権
配偶者居住権を取得すると、配偶者は居住していた「建物の全部」について使用収益する権利が認められます。

4|存続期間
配偶者居住権の存続期間は、「配偶者の終身の間」とされています(1030条)
ただし、遺産分割協議または遺言に別段の定めがあるとき、あるいは家庭裁判所が遺産分割審判において別段の定めをしたときは、それより「短い期間」を定めることができます。

5|配偶者居住権の範囲
配偶者居住権は「居住していた」ことが必要ですが、建物全体を居住の用に供していたことまでは要件とされていません。
一部しか使用していない場合でも、配偶者居住権は「建物全体」に発生します。

6|用法遵守義務・善管注意義務
配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用収益をしなければなりません。

7|譲渡禁止
配偶者居住権は、譲渡することができません。

8|使用収益に対する所有者の承諾
配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物を増・改築したり、第三者に使用収益させることができません。

9|修繕等
配偶者は、第一次的な修繕権を有します。配偶者が修繕した場合、通常の必要費は配偶者が負担し、特別の必要費は建物所有者が負担します。

有益費は、支出による価格の増加が現存する場合に限り、支出した金額または増加額のいずれかを建物所有者の選択によって建物所有者が負担します。

配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしなければ、建物所有者は自ら修繕することができます。

 配偶者居住権の消滅事由

配偶者居住権は、①~⑥の事由があるときは消滅します。

① 配偶者の死亡
配偶者居住権は、配偶者の居住の権利を保護するため政策的に設けられた権利であって、配偶者が死亡すればその必要がなくなるからです。

② 存続期間の満了
③ 居住建物の滅失
④ 混 同
配偶者が「所有権を取得」した場合における、混同による消滅です。

⑤ 配偶者居住権の消滅請求
配偶者が、用法遵守義務・善管注意義務に違反したときや、無断で増・改築したり、第三者に使用収益させたときに、建物所有者が配偶者居住権の消滅請求をした場合です。

⑥ 合意または権利放棄
配偶者居住権も一種の法定債権であることから、合意または配偶者による一方的な権利放棄により、配偶者居住権が消滅するとしたものです。

(この項終わり)

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