|公開日 2020.02.10

31年間の出題傾向四択での出題数は3問。直近では、平成27年(2015)に出題されました。選択肢として出題されることもあるので、ここに解説している基本だけでもおさえておきましょう。
[改 正] 少しの追加だけです。

1|同時履行の抗弁権の意味

1|同時履行の抗弁権の意味

|同時にするのが公平だ|
同時履行の抗弁権というのは、たとえば、買主が代金支払債務の「履行の提供」をしないで、売主に対して目的物の引渡しを請求した場合、売主は、買主の代金支払いと引換えでなければ目的物を引き渡さない、と抗弁できることをいいます。

売買のような双務契約では、双方が互いに対価的な債務を負っているので、同時に履行することが公平だからです。

2|相手方債務の弁済期
同時履行は「互いの債務が弁済期にある」ときの義務ですから、「相手方の債務が弁済期にない」ときには、同時履行の抗弁権はありません。
「先に」弁済期がきた債務を「先に履行」するのは、当然だからです。

この点について、民法は「ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない」として、同時履行の抗弁権を認めていません。

3|填補賠償債務の履行も対象に
一方の債務が履行不能となって、その履行に代わる損害賠償債務、つまり填補賠償債務となった場合にも、その填補賠償債務ともう一方の債務とは、同時履行の関係に立ちます。
改正法で、この点が明文化されました。

2|履行遅滞との関係

さて、売買では、売主・買主の双方が同時履行の抗弁権を有していますから、たとえば、買主が履行期に履行しない(代金を払わない)からといって、買主が常に履行遅滞となるわけではありません。
同時履行の抗弁権を有する買主は、「履行遅滞」にはならないからです。

したがって、買主に「履行遅滞」の責任を負わせるには、売主は、目的物引渡しの提供=履行の提供をして、買主の同時履行の抗弁権を消滅させて、買主を「履行遅滞」にする必要があります(最判昭29.7.27)
この点は「契約の解除」で問題となりますので、しっかり理解しておきましょう。

3|同時履行にあるケース

宅建試験に出た例を中心に確認しておきましょう。

1|代金支払債務と移転登記義務
不動産売買では、買主の代金支払債務と、売主の不動産引渡し・登記移転義務とは、同時履行の関係にあります。これは確立した判例です。
宅地の買主が、代金支払の弁済期に履行の提供をしない場合には、売主は、宅地の引渡しと登記を拒むことができるというわけです。

2|請負と報酬の支払義務
請負の報酬は、目的物の引渡しと同時に支払わなければなりません。
土地の整地や建物建築など、目的物の引渡しを要する請負契約では、請負人の目的物引渡債務と注文者の報酬支払債務とは、同時履行の関係に立ちます。

3|取消し・無効と原状回復義務
取消しによる双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあります。
たとえば、売買契約が詐欺を理由に取り消された場合、売主・買主は互いに、給付された物を返還する原状回復義務を負うことになりますが、このときの双方の原状回復義務も同時履行の関係に立ちます(最判昭47.9.7)

売買が無効の場合の原状回復も、双方の返還義務は同時履行の関係に立ちます。

4|解除と原状回復義務
契約の解除によって生じた双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあります。
売買が解除された場合、双方は、互いに相手方を契約のなかった原状に戻す原状回復義務を負うこととなりますが、売主の代金返還債務と、買主の目的物返還債務は、同時に履行されなければなりません。

※ 債務不履行を理由に解除された場合でも「債務不履行をした者が先に」原状回復義務を履行する必要はなく、双方の原状回復義務が同時履行の関係に立ちます。

5|受取証書の交付と弁済
受取証書は、弁済したことの証拠となりますから、弁済受取証書の交付とは、同時履行の関係に立ちます(大判昭16.3.1)
ただし、弁済と債権証書の返還とは、同時履行の関係にはありません。
なお、全部の弁済をしたときには、債権証書の返還を請求することができます。

4|同時履行にないケース

1|貸金債務の弁済と抵当権の抹消登記
弁済が先です。
貸金債務の弁済と「抵当権の抹消登記」とは、同時履行の関係にはありません。
弁済は、その担保のために設定された抵当権の抹消登記手続よりも、先に履行しなければならないのです。
貸主が抵当権の抹消登記手続の履行を提供しない場合でも、借主が先に弁済する必要があります(最判昭57.1.19)

2|敷金返還債務と建物明渡債務
建物の明渡しが先です。
敷金の返還債務と建物の明渡債務とは同時履行の関係にはなく、先に建物明渡債務を履行しなければなりません。
敷金返還請求権は、契約終了後、建物明渡し完了時に発生する権利ですから、先に建物明渡債務を履行する必要があります。

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[正解&解説] 賃貸人の敷金返還債務と、賃借人の建物明渡債務は同時履行の関係にはありません。
敷金返還請求権は、契約終了後、建物明渡し完了時に発生するので、先に建物明渡債務を履行しなければならないのです。記述は誤りです。

ポイントまとめ

 同時履行の抗弁権を有する当事者は、履行期に履行しなくても履行遅滞とはならない。
 同時履行の関係にあるケース
① 代金支払債務と移転登記義務
② 請負と報酬の支払義務
③ 取消しと原状回復義務
④ 解除と原状回復義務
⑤ 受取証書の交付と弁済
 同時履行の関係にないケース
① 貸金債務の弁済と抵当権抹消登記
弁済が先
② 敷金返還債務と建物明渡債務
建物明渡しが先

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