|公開日 2017.7.7|最終更新日 2018.5.23

今回のテーマは、最も基本的な代理の三者間の関係です。キチンと整理して理解しましょう。
1 本人・代理人の関係
2 代理人・相手方の関係
3 本人・相手方の関係

1 本人・代理人間──代理権の存在がポイント

1 そもそも代理権って何だろう

代理の本質は「代理人の行為によって直接に本人に権利義務を生じさせる地位」にあります。
代理人のこの地位を代理権といいます。
代理権と呼ばれますが、純粋な意味の「権利」ではなく、「権利能力」と同じように地位・資格という意味です。

2 代理の認められる範囲

代理は、本人に代わって契約をする制度ですから意思表示(契約・法律行為)に限って認められます。
意思表示ではない「不法行為」や「事実行為」に代理は認められません。

ただし、意思表示であっても、婚姻・縁組・認知・遺言など「身分上の行為」にも代理は許されません。
代理は、代理人が自分の判断で意思決定をするものですから、絶対に本人の意思決定を必要とする「身分上の行為」については、代理は許されないのです。

この種の行為を「代理に親しまない行為」といいます。
婚姻相手を代理人が決めたり、遺言の内容を代理人が決めたのでは、たまったものではありませんね。

3 代理権の発生原因

代理には、法定代理任意代理がありますが、これは代理権の発生原因による区別です。

 法定代理は、代理人を置くことが「法律」で定められている場合です。

たとえば、未成年者は父母の親権に服しますが(818条1項)、824条によってこの親権者には代理権が与えられています。
また、成年被後見人についての成年後見人は家庭裁判所が選任しますが、859条によってその者には代理権が与えられています。

 任意代理は、本人の「信任・依頼」を受けて代理人になる場合です。

通常は、本人と代理人との間に信頼関係があることが前提となっています。

代理権を与える行為を代理権授与行為(通常は委任契約)といい、慣例上、本人から代理人に「委任状」が渡されますが、「特別な要式」は必要ではなく、口頭でもかまいません。

法定代理は、親権者・成年後見人などのように代理権が広く認められた「包括的な代理」であることが多く、一方、任意代理は不動産の売買・賃貸など「個別的な代理」に多くみられます。

4 代理権の範囲

1 法定代理の場合
代理権の範囲は法定されています。
たとえば親権者は、子のために必要な一切の財産管理行為をする権限を有するとされており、これは824条以下の規定で法定されています。

2 任意代理の場合
本人・代理人間の代理権授与行為(委任契約)によって決まります。

【判例】に現われた事例には、以下のようなものがあります。
1 売買契約を締結する代理権には、登記をする権限、相手方から取消しの意思表示を受ける権限などが含まれます。
2 同じく売買契約を締結する代理権には、契約不成立の場合に手付金・内金の返還を受ける権限が含まれます。
3 売買代金取立のための代理権には、その売買契約を「合意解除」する権限は含まれません。

3 代理権の範囲が明らかでないとき
代理権があることは明らかなのですが、その範囲が不明な場合や、特に定められなかった場合には、最小限度の権限という意味で、次の3つの行為(管理行為)だけができます。

① 保存行為
財産の現状を維持する行為です。
たとえば、「家屋を修繕する」「消滅時効を中断する」「期限の到来した債務を弁済する」などです。
保存行為は、代理人が無制限にできます。

② 利用行為
収益を図る行為です。
たとえば、「家屋を賃貸して賃料をとる」「金銭を利息付で貸し付ける」などです。「物や権利の性質を変えない」範囲に限ってできます。

③ 改良行為
経済的価値を増加させる行為です。
たとえば「家屋に造作や、電気・ガス・水道などの設備を施す」「無利息の貸金を利息つきに改める」などです。これも「物や権利の性質を変えない」範囲に限ってできます。

預金を株式にするような利用行為、田地を宅地にするような改良行為は、「物または権利の性質を変える」ことになりますから、たとえ「本人の利益」となる場合でも、することはできません。
また、売買などのような処分行為もすることはできません。

5 自己契約と双方代理──禁止

自己契約というのは、代理人自身が契約の相手方となることです。
たとえば、Aからその所有家屋を売る代理権を与えられたBが、みずから買主となるという場合です。

双方代理というのは、同一人が、当事者双方の代理人となることです。
Aの代理人Bが、一方でAを代理し、他方でCを代理して、AC間の契約を締結する場合です。

自己契約や双方代理は許されるのでしょうか?

条文にはこうあります(108条)
「同一の法律行為については、相手方の代理人となり、または当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行および本人があらかじめ許諾した行為についてはこの限りでない

1 原 則
自己契約・双方代理は、原則として禁止されます。
事実上、代理人が自分一人で契約することになって、本人の利益が不当に害されるおそれがあるからです。

土地建物を売却する代理権を与えられた代理人が、自分でその買主となって格安で買うことが許されるとしたら、代理制度そのものが崩壊するでしょう。

2 例 外
ただし、次の場合には例外で、自己契約・双方代理も認められます。
この場合は本人の利益を害することはないからです。

① 債務の履行
「弁済期の到来した代金の支払い」などの債務の履行は、すでに確定した事項をただ決済するだけで、新しい利害関係を作り出すものではないので、自己契約を認めてもとくに問題はありません。

また「売買に基づく移転登記申請」も債務の履行に準じます。
【判例】では、所有権移転に伴う移転登記手続きについて登記権利者・登記義務者の双方代理を認めた例があります(最判昭43.3.8)

しかし、「代物弁済」「弁済期未到来の債務」「時効にかかった債務」「争いのある債務」などの履行は、本人に不利益を及ぼすおそれがあるので、債務の履行にはあたりません。

② 本人があらかじめ許諾した場合
自己契約・双方代理が禁止されるのは、本人の利益を保護するためですから、その本人が「あらかじめ許諾」していれば、禁止する理由はないのです。

3 効 果
自己契約・双方代理の禁止に違反した行為は無効なのではなく、無権代理行為となります。したがって、当然には本人に対して効力は生じませんが、本人が事後に追認すれば、完全な代理行為となります。

2 代理人・相手方間──契約の当事者

1 顕名主義──A代理人B

代理行為として成立するためには、相手方に代理行為であることがわかるように、代理人は、本人のためにすることを示さなければなりません。これを顕名主義(けんめいしゅぎ)といいます。

「本人のためにする」というのは、「契約は代理人の私がするが、契約の効果は本人に帰属する」ことを明らかにするという意味です。通常は「A代理人B」というふうに表示されます。

したがって代理人が、本人のためにすることを示さないでした意思表示は、代理行為であることが相手方にわからないので、原則として「代理人自身のための行為」とみなされ、代理行為は成立しません。

顕名がない以上、意思表示の効果はすべて「代理人に帰属する」ことになるため、たとえ代理人の意思が本人のためにするつもりであっても、これを理由に「錯誤による無効」を主張することはできないのです。

ただし、相手方が悪意のとき、または善意有過失のときには、代理行為が成立します。
つまり、代理人の意思表示が「本人のためである」ことを相手方が、
① 知っているとき(悪意)、または、
② 知らなかったけれども注意すれば知ることができた(善意だが過失がある=善意有過失)ときには、代理行為が成立し、本人に効力が生じます。
このような場合には、代理を認めても問題はないからです。

2 代理人の行為能力──代理人は未成年者でもいいの?

未成年者でもいいんです。代理人は、行為能力者であることを要しません。

条文にはこう書いてあります。
「代理人は、行為能力者であることを要しない」(102条)
これは、判断能力が十分とはいえない制限行為能力者が代理人となっても、代理行為が成立するということですが、なぜでしょうか?
それは「代理行為の効果はすべて本人に帰属するのであって、代理人は代理行為の効果を一切受けないため制限行為能力者が代理行為によって不利益を受けることはなく保護する必要はないから」です。

本人も、制限行為能力者であることを承知で代理人にするのですから、制限行為能力者が判断を誤って代理行為をしても、そのリスクは本人が負担するだけのことなのです。

「代理人は、行為能力者であることを要しない」という意味は、制限行為能力者が単独で行った代理行為も完全に有効であり、制限行為能力者であることを理由にその代理行為を取り消すことはできないということです。

ただし、代理人にも「意思能力」が必要なのはいうまでもありません。意思能力がないときは、そもそも法律行為・契約は無効だからです。

3 代理行為の瑕疵──代理人がだまされたら?

代理では、実際に意思表示をするのは代理人ですから、心裡留保や虚偽表示、錯誤や詐欺・強迫(これらを代理行為の瑕疵といいます)、善意か悪意か、過失があったかどうかなどは、本人ではなく、すべて代理人について判断されます。

代理人が相手方と通謀して虚偽表示をすれば無効ですし、また代理人に錯誤があれば無効です。
代理人が詐欺や強迫を受ければ取り消すことができます(取消権は本人が取得します)。

なお、特定の代理行為が本人の指図によってなされたときは、本人は自分が知っていた事情や過失によって知らなかった事情について、代理人の不知や無過失を主張することができません。本人を保護する必要はないからです。

たとえば、本人が「特定の建物を購入するよう指定」したときは、本人が建物の欠陥を知っていたり、過失で知らなかった場合には、たとえ代理人がその欠陥について不知・無過失であっても、本人は売主に対して文句は言えないのです(売主に担保責任を追及することはできません)。

3 本人・相手方間──効果の帰属者

99条1項に「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる」と規定しているように、代理行為の効果は、すべて直接に本人に帰属します。
あたかも「本人自身がその意思表示をした」のと同様に、意思表示から生じるすべての効果が、直接本人に帰属するのです。

たとえば──、
代理人が家屋を買った場合、家屋の所有権・引渡請求権・登記請求権、代金の支払債務などはすべて本人が取得・負担します。これこそが代理の本質的効果なのです。

このほか、主な効果としては──、
① 心裡留保・虚偽表示・錯誤による無効は、本人が主張できます。
② 相手方の詐欺・強迫による意思表示の取消権は、本人が取得します。
③ 家屋に隠れた瑕疵(欠陥)があるとき、売主に担保責任を追及する権利は、本人が取得します。
代理人がこれらを行使できるかどうかは「代理権の範囲」の問題です。

なお、代理人が代理行為をするについて不法行為をしても、その損害賠償責任は代理人について生じます。本人には生じません。
不法行為はそもそも意思表示ではなく、不法行為責任は意思表示の効果ではないからです。
ただ、本人は、代理人を使用する者として「使用者としての責任」を負うことがあるだけです(不法行為における使用者責任)。

4 条文とポイントまとめ

1 条文の確認

99条(代理行為の要件・効果)
1 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

100条(顕名主義)
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、または知ることができたときは、本人に対して直接にその効力を生ずる。

♠ 101条(代理行為の瑕疵)
1 意思表示の効力が意思の不存在(=虚偽表示や錯誤のこと)、詐欺、強迫、またはある事情を知っていたこと、もしくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
2 特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。
本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

♠ 102条(代理人の行為能力)
代理人は、行為能力者であることを要しない

♠ 103条(権限の定めのない代理人の権限)
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物または権利の性質を変えない範囲内において、その利用または改良を目的とする行為

♠ 108条(自己契約、双方代理)
同一の法律行為については、相手方の代理人となり、または当事者双方の代理人となることはできない
ただし、債務の履行および本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

2 ポイントまとめ

1 代理は、意思表示(契約・法律行為)に限って認められる。
不法行為や事実行為、身分上の行為には認められない。
2 代理権の範囲が明らかでないときは、保存行為、利用行為、改良行為のみが認められる。
3 自己契約・双方代理は、原則として禁止
ただし、債務の履行や本人があらかじめ許諾した場合には例外的に認められる。
4 自己契約・双方代理の違反行為は、無権代理行為となる。
5 代理行為として成立するためには、原則として顕名が必要である。
6 代理人は、行為能力者であることを要しない
制限行為能力者が単独で行った代理行為も完全に有効で、制限行為能力を理由に代理行為を取り消すことはできない。
7 代理行為の瑕疵、善意か悪意か、過失があったかどうかなどは、すべて代理人について判断される。
8 代理人のした代理行為の効果は、すべて本人に帰属する。
代理人が詐欺や強迫を受ければ取り消すことができるが、取消権は本人が取得する。


(この項終わり)