|公開日 2017.8.09
|更新日 2019.5.04

今回と次回のテーマは賃貸借です。30年間で15問(四択)出題されている頻出のテーマです。昨年(平成30年)は判決文が出題されました。
論点が多くありますので、1つ1つシッカリ押さえておきましょう。

1|民法と借地借家法の関係

マンションやアパートを借りて住んでいる人は、イメージしやすいと思いますが、賃貸借というのは、家賃などの使用料を支払って他人の建物を借りるような契約です。

使用料(借賃・賃料)を払う、つまり有償契約であるという点が、無償で借りる使用貸借契約と根本的に違います。


ところで、みなさんが土地を借りたり、マンションや建物を借りる場合には、いったい民法と借地借家法のどちらが適用されるのでしょうか。
まず、この両者の関係を理解することが先決です。

もともと土地・建物の賃貸借を対象とした民法の規定は、基本的には貸主・借主を対等の立場にあるものと想定して、契約自由の原則に委ねた内容になっているのですが、どうしても貸す方の立場が強くなって、借主が弱い立場に立たされるというのが現実です。

賃貸借のなかでも、社会的に重要な機能を果たしているのは、何といっても土地や建物など不動産の賃貸借です。

とくに「土地・建物」の賃貸借ということになると事態は深刻になりますので(家賃の値上げがいやなら出て行ってくれ……みたいに生活や経済活動の基盤を失うおそれがある)借主が不当に不利にならないように民法よりももっときめこまかく特別に規定して、安心して他人の不動産を利用できるようにしたのが借地借家法というわけです。
つまり、民法は原則法・一般法、借地借家法はその特別法という関係に立ちます。

したがって、とくに建物の賃貸借をする場合とか、「建物の所有」を目的として土地の賃貸借をする場合などには、まず借地借家法が優先して適用されることになります特別法は一般法に優先する

借主保護のために特別に作られた法律であるため、借主保護とは関係のない事項については、依然として民法の規定が適用されます。土地・建物の賃貸借だからといって、民法がまったく適用されないというわけではありませんので注意しておきましょう。

以上の関係を理解しておかないと、土地・建物の賃貸借は正解できませんからね。
宅建試験では、ときどき「民法及び借地借家法の規定よれば、正しい(誤っている)ものはどれか」というように、民法・借地借家法の双方の理解が問われますので、その違いをキチンと理解しておく必要があります。

  • 民法で定める賃貸借 ← 原則的な規定
  • 借地借家法の賃貸借 ← 借主保護のための特別規定

2|土地賃貸借と借地権

「土地」を借りる場合については、借りる目的(土地を何に利用するか)によって、民法と借地借家法の適用範囲が異なります。

つまり、「建物の所有」を目的として土地に地上権を設定したり、賃貸借をする場合に限って、借地借家法上「借地権」として適用・保護されます。

「建物以外」の、たとえば駐車場とか資材置場などに利用する場合には、借地借家法の適用はなく、民法で解決することになります。

「建物」というのは、必ずしも「住宅」である必要はありません。住宅に限って借地借家法の適用があると誤解する人が多いので、要注意です。

同じく他人の土地を利用する権利でも、地上権は物権で、賃借権は債権ですから、「借地権」は物権・債権双方の権利を含んだ概念なのですが、物権的な性格、つまり、より排他性をもたせた権利ということができます。

3|賃貸借の存続期間

賃貸借は他人の物を貸し借りするわけですから、その契約期間・存続期間が大変問題になります。

1 民法の規定では

賃貸借の存続期間については、民法の規定では20年を超えることができません。

したがって、当事者間の契約で20年より長い期間(たとえば25年とか30年など)を定めても20年とされます。
民法上は、最長でも20年なのです。

もちろん、存続期間を更新することはできますが、その場合でも、存続期間は、更新の時から20年を超えることができません。

2 借地借家法の規定では

これに対して、借地借家法の規定では次のようになっています。

1 借地権(土地賃貸借)
借地権の存続期間は30年です。
「建物の所有」が目的であるため、建物の耐用年数を考えて最低でも30年は必要だろうという趣旨です。
更新すればもっと長く土地利用ができます。もし30年より長い期間を定めた場合は、長い期間の方が存続期間となります。民法とは違い、50年とすることも可能です。

2 借家権(建物賃貸借)
借家権については、民法の存続期間に関する規定が明文で排除されていますので、20年を超えて、25年でも30年でも定めることができます。借家人保護を考慮してのことです。

ただし、1つだけ要注意です。
1年未満と定めたときには、「期間の定めがない賃貸借」とみなされます。
したがってこの場合には、賃貸人・賃借人双方は、いつでも解約の申入れをして契約を終了させることができます。

たとえば、選挙期間中にビルの事務所を借りたような場合です。
このような場合にまで、とくに賃借人を保護する必要もないという趣旨です。

4|不動産賃貸借の対抗力

不動産賃借権の対抗要件については、民法では、賃借権を登記することによって、その後その不動産について物権を取得した者に対して効力を生じるとしています。

一方、借地借家法では、賃借人(借地人・借家人)保護のために「より簡便な方法」が定められています。

1 借地権の対抗要件
借地権の対抗要件は、次の2つです。

  • 借地権の登記
  • 借地人の登記建物所有
どちらか一方があれば、借地人は、地主から借地を譲り受けた新所有者などに借地権を対抗することができます。

ただ「借地権の登記」は地主と借地権者が共同で行う必要があり、地主の協力がないとできません。
ところが「登記した建物を所有」する場合では、借地人が「自分の所有建物」について登記するわけですから、1人で登記して対抗要件を備えることができるため、この点が借地人保護になっているわけです。

2 借家権の対抗要件
借家権の対抗要件は、次の2つです。

  • 借家権の登記
  • 建物の引渡し
どちらか一方があれば対抗要件となります。
借家権という「権利自体の登記」または「建物の引渡し」を受けることです。

5|条文の確認

重 要 条文は暗記する必要はありません。
「基本的な論点を確認する」というつもりで読むようにしましょう。

以下は借地借家法の条文です。

 定義|2条 
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいう。

 借地権の存続期間|3条 
借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

 借地権の対抗力|10条 
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

 建物賃貸借の期間|29条 
1 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
2 民法604条の規定(存続期間は20年を超えることができない)は、建物の賃貸借については、適用しない。

 建物賃貸借の対抗力|31条 
1 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。


(この項終わり)