|更新日 2020.01.18
|公開日 2017.07.18

31年間の出題傾向31年間で15問出題されている頻出テーマです。内訳は、一般原則3問、転貸借8問、敷金4問となっています。
判決文問題は2問で、土地転貸借(平27年)と、通常損耗(平30年)が出題されました。
どのテーマも重要ですから広く勉強する必要があります。
[改 正] 非常に多くの改正がありました。ただ従来の判例法理を明文化したテーマもあり、旧法で勉強したことが生かせる項目もあります。

れいちゃん01

賃貸借の出題状況は?

たくちゃん01

30年間で15問だから、頻出テーマだね。

れいちゃん01

どんなのが出るの?

たくちゃん02

転貸借や敷金が多いね。
でも賃借人の義務などの基本項目も決して無視してはダメだよ。
難しい選択肢が多くあっても、その中の1選択肢の基本項目のおかげで正解できた、なんてことも珍しくないからね。


1|賃貸借の意味と成立

1 賃貸借の意味と成立

土地やマンションを借りている人は、イメージしやすいと思いますが、賃貸借というのは、他人の土地や建物を借りて使用・収益する代わりに、その対価として賃料(地代・家賃)を支払い、契約が終われば賃借物を返還するという契約です。

賃料を支払う、つまり有償契約であるという点が、無償(無料・ただ)で借りる「使用貸借」と根本的に違います。

|借地借家法との関係|
ところで、みなさんが土地やマンションを借りる場合には、いったい民法と借地借家法のどちらが適用されるのでしょうか。
まず、この両者の関係を確認しておきましょう。

もともと土地・建物の賃貸借を対象とした民法の規定は、基本的には貸主・借主を対等の立場にあるものと想定して、契約自由の原則に委ねた内容になっているものですが、どうしても貸す側の立場が強くなり、借主が弱い立場に立たされるというのが現実です。

とくに「土地・建物」の賃貸借ということになると事態は深刻になりますので(家賃の値上げがいやなら出て行ってくれ、みたいに生活や経済活動の基盤を失うおそれがある)借主が不当に不利にならないように民法よりももっときめこまかく特別に規定して、安心して他人の不動産を利用できるようにしたのが借地借家法というわけです。

つまり、民法は「原則法・一般法」、借地借家法はその「特別法」という関係に立ちます。

したがって、とくに「建物」の賃貸借をする場合とか、建物の所有を目的として「土地」の賃貸借をする場合には、まず借地借家法が民法に優先して適用されることになります(特別法は一般法に優先する)

借主保護のために特別に作られた法律であるため、借主保護とは関係のない事項については、依然として民法の規定が適用されます。土地・建物の賃貸借だからといって、民法がまったく適用されないというわけではありませんので注意しましょう。

  • 民法で定める賃貸借 ← 原則規定
  • 借地借家法の賃貸借 ← 借主保護のための特別規定

2 賃貸借の存続期間

賃貸借の存続期間は、50年を超えることができません。
かなり長いですね。これは建物では耐震・防火などの建築技術が発達して耐用年数が伸びたからです(改正前は20年でした)
契約でこれより長い期間を定めても、50年とされます。
この期間は更新できますが、更新の時からやはり50年を超えることはできません。

2|賃貸人の義務

以下、賃貸人と賃借人の主な義務を確認しておきましょう。

1 使用・収益させる義務

賃貸人は、賃借人に賃借物を使用・収益させる義務を負います。
これこそが賃貸人の基本的な義務です。

ここから、賃貸人は賃借物を賃借人に引き渡すべき義務を負い、第三者が賃借物の使用・収益を妨害するときは、その妨害を排除すべき義務を負う、というように個別的な義務が生じます。

2 修繕義務

賃貸人には、賃貸物の使用・収益に必要な修繕義務があります。
使用・収益義務の当然の帰結といえます。

賃貸家屋の屋根が台風で壊れたような場合に、賃貸人としても、家屋の保存のために屋根を修繕するのは当然でしょう。
したがって、賃貸人が保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができません。

なお、賃貸人が、賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は契約を解除することができます。

|こんなとき修繕義務はない|
修繕が「賃借人の責めに帰すべき事由」によって必要となったときは、賃貸人に修繕義務は生じません。賃借人に責任があるのに、賃貸人に修繕義務を課すのは衡平ではないからです。

3 費用償還義務

1|必要費は直ちに
賃借人が、賃借物について賃貸人が負担すべき必要費を支出したとき、たとえば、借家の土台入換え工事をしたり畳の修繕をしたりして必要費を支出した場合には、賃借人は、賃貸借の終了をまたずに直ちにその償還を請求することができます。

2|有益費は契約終了時に
賃借人が、賃借物を改良するなどの有益費を支出したときは、賃貸人は賃貸借の終了時に、賃借物の価格の増加が現存している限り、賃借人の選択に従い、その費用か増加額のどちらかを償還しなければなりません。
この場合、裁判所は、賃貸人の請求により償還について相当の期限を許与することができます。

3|賃借人の義務

賃借人の主な義務は下記のとおりです。

1 賃料支払い・保管・返還義務ほか

1|賃料支払義務
賃料を支払う義務は、賃借人の義務の核心をなすものです。
そして、賃借物の一部が「賃借人の責任によらない」で滅失した場合には、賃料は滅失部分の割合に応じて当然に減額されますし、残存部分だけでは賃借目的を達成できないときは、契約の解除ができます。

2|保管・用法・返還義務
賃借人は、賃借物を返還するまで、善良な管理者の注意(善管注意義務)をもって賃借物を保管する義務を負います。
また、契約や賃借物の性質によって定まった用法に従って使用・収益することを要します。
そして、契約が終了すれば、賃借物を返還しなければならず、その際には原状回復が問題となります。

3|賃借権の無断譲渡等をしない義務
このテーマは、次回[賃貸借2|転貸借]で解説していますので、そちらをお読みください。

2 原状回復義務

賃貸借が終了したときは、賃借人は賃借物を返還しなければなりませんが、賃借物に損傷が生じた場合の原状回復が問題となります。

1|原 則
賃借人には、原則として、損傷の原状回復義務があります。
自分の責任で壊した部分は、キチンと元通りにして返すわけです。これは当然でしょうね。
新民法は「賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷について、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う」(621条1項)と定めています。

2|2つの例外
ただし以下の場合、賃借人に原状回復義務はありません。原状回復の対象外です。

① 通常損耗や経年変化による損傷
通常の使用による損耗の発生などは、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているもので、すでに賃料の中に含まれているからです。
したがって、通常損耗について「原状回復義務を負担させるには、その旨の特約(通常損耗補修特約)明確に合意されていることが必要である」というのが判例です(最判平17.12.16)
ここは判決文問題(2018年|平30年)として出題されました。

② 賃借人が有責でない損傷
損傷が「賃借人の責めに帰することができない事由」によるものであるときは、原状回復義務はありません。

4|賃借人の修繕権限

賃借人が賃借物を使用するために必要な修繕は、本来、賃貸人の義務です。
賃借物はあくまでも賃貸人の所有物ですから、賃借物の物理的変更を伴う修繕は、原則として処分権限がある所有者=賃貸人だけができるのです。
したがって、賃借人に修繕をすることが認められるのは、限られた場合だけです。
民法は、次の2つの場面で、賃借人に修繕権限を認めています。

1|賃貸人が修繕しないとき
修繕の必要性について、①賃貸人に通知した、または、②賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当期間内に修繕をしない場合です。

2|急迫の事情があるとき
このような場合、賃貸人の修繕をまっていたのでは、賃借物の損傷が拡大し使用・収益ができなくなるおそれがあるからです。

5|一部滅失等による賃料減額等

賃借物の滅失は、阪神淡路大震災・東日本大震災・熊本地震に限らず、大型台風を直近で経験するなど、もはや絵空事ではなくなりましたね。
さて、賃借物の一部滅失などにより使用・収益が不能になった場合、民法は2つの定めを設けています。

1|賃料の当然減額
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用・収益不能になった場合に、それが「賃借人の責めに帰することができない事由」によるものであるときは、賃料は、「使用・収益をすることができなくなった部分の割合に応じて」当然に(請求がなくても)減額されます。

というのも賃料は、使用・収益の対価として日々発生しているわけですから、賃借物の一部が使用できなくなっ場合には、賃料も当然にその部分の割合に応じて発生しないと考えられるからです。

2|契約解除
賃借物の一部が滅失等により使用・収益が不能になった場合に、残存部分のみでは賃借目的を達することができないときは、賃借人は、契約を解除することができます。

契約目的を達成することができない以上、賃借人に帰責事由があるかどうかに関係なく解除が認められます。

6|不動産賃借権の対抗要件

不動産賃借権は、これを登記したときは、その不動産の物権を取得した者や、その他の第三者に対抗することができます。

登記をして対抗要件を具備すれば、物権(所有権とか抵当権など)を取得した者に限らず、二重賃貸借における一方の賃借人や、不動産の差押え債権者にも対抗することができます。これは確定した判例です。

対抗要件としては、さらに借地借家法で、賃借人保護のため「簡便な方法」が認められています。

1|借地権の対抗要件
① 借地権の登記 または
② 借地人の登記建物の所有
登記建物は「自分の所有建物」について登記するわけですから、賃借人1人でできるので、この点が保護になっています。

2|借家権の対抗要件
① 借家権の登記 または
② 建物の引渡し
「建物の引渡し」だけで対抗要件を備えることができる点が、保護になるわけです。

※ 宅建試験の民法では「Aは自己所有の甲建物(居住用)をBに賃貸し、引渡しも終わり」(平20年問10)とか、「Bは自己名義で乙建物の保存登記をしているものとする」(平26年問7)というように、借地借家法上の対抗要件を備えていることを前提としている問題もあります。
こうした「登記以外」の対抗要件も覚えておきましょう。

7|賃貸人の地位の移転

さて、登記には、①第三者に対して賃借権を対抗できる「第三者対抗要件」と、もう1つ、②物権取得者に賃貸人の地位が移転する「賃貸借の承継」という2つの効果があります。
ここでは「賃貸借の承継」を確認しておきましょう。

1 賃貸人の地位の移転

1|当然承継
賃借人が、賃借権の対抗要件を備えている場合には、賃貸人たる所有者が、その賃貸不動産を譲渡したときは、賃貸人たる地位も当然に譲受人に移転します。
譲受人たる新所有者は、旧所有者の賃貸借契約上の地位を当然に承継することになるわけです。
これは確立した判例で、今回明文化されました。

注意しなければならないのは、新所有者に賃貸人の地位が移転(当然承継)するのは、賃借人が「対抗要件」を備えている場合ということです。
賃借人に対抗要件がなければ、賃貸人の地位は、所有者と新所有者との間で地位譲渡の合意があってはじめて、新所有者に移転します(最判昭46.4.23)
賃貸不動産を譲渡する契約とは別に、この合意が必要というわけです。

2|登記が必要
この賃貸人の地位の移転は、賃貸不動産について所有権の移転登記をしなければ、賃借人に対抗することができません。

3|費用償還・敷金の承継
賃貸人たる地位が譲受人に移転したときは、賃借人が有する費用償還に係る債務、および敷金の返還に係る債務は、譲受人が承継することになります。

2 合意による賃貸人の地位の移転

|賃借人に対抗要件がない場合|
先述したように、賃貸不動産の所有権が移転しても、賃借人に対抗要件がないときには、当然に賃貸人の地位が移転することはありません。
この場合、賃貸人の地位は、譲渡人と譲受人との地位譲渡の合意によって、譲受人に移転します。

なお、譲渡人が不動産所有権とともに賃貸人たる地位を譲受人に移転するには、「賃借人の承諾は不要」です。

一般に、契約上の地位の移転は「債務の引受け」を伴うために、契約の相手方の同意が必要とされます。しかし、賃貸人の主な債務は賃貸物を使用させることであって、賃貸人が変わったからといって履行方法が異なるものではなく、賃貸物の所有権を有していれば履行できるものです。
つまり、賃貸人の地位が移転しても、賃借人が不利益を受けることはないので「賃借人の承諾は不要」とされるのです。

なお、合意承継の場合でも、譲受人は、賃貸物の所有権移転登記をしなければ、賃貸人たる地位を賃借人に対抗できません。

8|妨害停止請求等

対抗要件を備えた賃借人は、その賃借権に基づいて次のような請求ができます。

1|妨害停止
賃借不動産の占有を第三者が妨害しているときには、その第三者に対して妨害停止を請求することができます。

2|返還請求
賃借不動産の占有を第三者が占有しているときには、その第三者に対して返還請求をすることができます。
これらは、不法占拠者や二重賃貸借における劣後賃借人に対して有効です。

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[正解&解説] 必要費というのは、借家における畳替えのように、通常の使用に適する状態に保存するための費用のこと。
貸主は、借主に賃借物を使用収益させる義務があるので、借主が必要費を支出したときには、借主はその償還を請求することができます。
本問は正しい記述です。

ポイントまとめ

 賃貸借の存続期間は、50年を超えることができず、更新しても、更新の時から50年を超えることはできない。
 賃貸人が保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
 修繕が、賃借人の責めに帰すべき事由により必要となったときは、賃貸人に修繕義務は生じない。
 賃借人が必要費を支出したときは、賃借人は、賃貸借の終了前でも直ちにその償還を請求できる。
 賃借物の一部が賃借人の責任によらずに滅失した場合は、賃料は滅失部分の割合に応じて当然に減額され、残存部分だけでは賃借目的を達成できないときは、契約解除できる。

 賃借人は、賃借物を返還するまで善良な管理者の注意をもって賃借物の保管義務を負う。
 賃貸借が終了したときは、賃借人は原則として、賃借物の受領後に生じた損傷について原状回復義務を負う。
 通常損耗や経年変化による損傷、賃借人が有責でない損傷については、原状回復義務がない。
 賃貸人が修繕しないとき、または急迫の事情があるときは、賃借人に修繕権限が認められる。
10 賃借人が、賃借権の対抗要件を備えている場合には、賃貸人たる所有者が、賃貸不動産を譲渡したときは、賃貸人たる地位も当然に譲受人に移転する。

11 賃貸不動産の所有権が移転しても、賃借人に対抗要件がないときは、賃貸人の地位は当然には移転せず、その地位は、譲渡人と譲受人との地位譲渡の合意によって譲受人に移転する。
12 賃借不動産の占有を第三者が妨害しているときは、対抗要件を備えた賃借人は、妨害停止および返還請求ができる。

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