|公開日 2017.7.14|最終更新日 2018.5.29

今回のテーマは試験に直接出題されることはありませんが、物権の本質を理解することで所有権や抵当権などいろいろな物権をより深く理解することができます。もちろん試験にも有益ですので、最小限の知識だけは身につけておきましょう。

1 物権の存在理由──何で存在するの?

「物権」というのは、所有権、地上権、抵当権など、10種類の個々具体的な「物に対する権利」をひとまとめにした「総称」をいいます。

人が生活を営んで生きていくためには、土地・建物をはじめ、いろいろな物資(食糧品、衣料品、家電製品、自動車など、ありとあらゆる財物)を利用し消費しなければなりません。

しかも、これらの物資には限りがあるために、これらを直接に利用・消費する権利(物に対する権利)を認めて、これを互いに侵害しないようにして物資の利用を安全確実にする制度を必要としたのです。

これが「物権」が認められる最大の理由で、古くから人類の歴史とともに発展してきました。

2 物権の本質──直接的かつ排他的

物権の本質は、物を直接に支配して利益を受ける排他的な権利という点にあります。ちょっとわかりにくいので補足しましょう。

1 直接支配性

物権は、物を直接に支配します。
どういうことかというと、「権利」というのは、最終的にはその人に満足を与えることが目的なのですが、物権では、物権を有する人が「権利を実現して満足を得る」ために、他人の意思や行為を必要としないということです。

物権と対比される債権では、債権者が「権利を実現して満足を得る」ためには、債務者の行為(目的物の引渡し、金銭の支払いなど)を必要とするのに対し、物権では他人の行為を必要としません。
これを「直接」といいます。

たとえば、土地所有者(所有権者)は直接に土地を支配して、みずから使用したり管理するだけで満足を得ることができます。他人の行為は必要ありません。

一方、土地の賃借人(賃借権者──債権者)は、土地の所有者と賃貸借契約を結んで、賃貸人から土地の引渡しを受けてその使用を認められる、という「賃貸人の行為」によって、はじめて権利を実現することができるのです。

2 排他的権利──独占的な権利

物権は、排他的な権利です。
排他的というのは、要するに独占的ということで、目的物に1つの物権が成立するときは、同一の物権の成立を認めないということです。

ある人が甲土地を使用していれば、他人は甲土地を使用できませんし、マンションの102号室に住んでいれば、他人は同じ102号室には住めません。

物権は、同じ物に対して同一内容の物権が成立することを認めない権利ですから、他人を排斥する非常に強い権利なのです。

「所有権者」は、排他的に目的物を使用・収益・処分することができ、「地上権者」は、排他的に建物の所有目的で他人の土地を使用することができます。
「抵当権者」は、排他的に抵当不動産を競売して、自己の債権の弁済に充てることができます。

所有権は、目的物が有する「一切の価値」を、地上権は、目的物が有する「使用価値」を、抵当権は、目的物が有する「交換価値」をそれぞれ直接かつ排他的に支配するのです。

3 物権の効力

物権が、直接・排他的な権利であるという本質から、2つの効力が認められます。優先的効力と物権的請求権です。

1 優先的効力

物の上に成立するいろいろな権利に優先する効力をいい、2つの内容があります。

1 物権間の優先的効力
内容の対立する物権相互の間では、その効力は物権成立の時の順序に従います。

たとえば、すでにAの所有権が成立している物の上に、Bの所有権は成立しません。
抵当権は、成立時の前後によって順位が異なり(一番抵当権、二番抵当権のように)、先に成立したものが優先します。

また、土地に抵当権が設定された後で地上権(他人の土地を利用する物権)が設定されると、抵当権の実行(競売)によって地上権は消滅し、競落人は、地上権の制限のない土地を取得します。

反対に、地上権が設定された後に抵当権が設定され実行されても、地上権は消滅しません。競落人は、地上権の制限のある土地を取得することになるのです。

これらの優先的効力は、物権の排他性によるものです。そして、この優先的効力・排他性は、登記することにより完全に確保されます。
「登記は対抗要件である」という根拠はここにあるのです。

2 債権に優先する効力
債権が成立している物に物権が成立するときは、物権が優先します。

たとえば、Aの所有建物をBが賃借している場合に、Cが売買によりAから建物の所有権を取得すれば、賃借人Bは、新所有者Cに対して賃借権(債権)を主張できなくなります。
これが有名な「売買は賃貸借を破る」という意味です。
先に賃借権(債権)が成立していても、後で成立した所有権(物権)が優先するのです。

これは、物権が物に対する直接の支配権であるのに対し、債権は「債務者の行為」を介して間接に支配するにすぎない、という差から生じるのです。

ただし、不動産の賃借人を保護する理由から、例外として、土地・建物の賃借権など一定の債権は、登記や目的物の引渡しによって「物権に優先する効力」が認められていることは注意を要します。

2 物権的請求権──妨害してはいけない

物権が何かの事情によって「妨害」されている場合、物権者は、その妨害者に対して、妨害を除去するよう請求することができます。

隣家の樹木が倒れてきて庭を塞いでいるときに、「邪魔だから片づけろ」というわけです。この請求権を物権的請求権といいます。

物権は、物を直接に支配する権利ですから、この請求権を認めないと、物権はまったく有名無実となってしまいます。
民法は「占有権」についてだけ、「占有回収の訴え」「占有保持の訴え」「占有保全の訴え」という3つの請求権を定めています。

しかし、占有権に認められているくらいですから、これよりさらに強力な所有権、地上権、抵当権などの「本権」についても、当然に物権的請求権として「妨害予防請求権」「妨害除去請求権」「返還請求権」が認められています。

判例(最判平11.11.24)も、抵当不動産が不法占有されている場合、抵当権者は、不動産所有者が有する不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使して、直接抵当権者に建物を明け渡すよう求めることができるとしています。

なお判例は、債権には原則として妨害排除請求権を認めていませんが、対抗力を備えた不動産賃借権についてはこれを認めています(最判昭30.4.5)。

4 ポイントまとめ

1 物権は、物資の利用を安全確実にする制度である。

2 物権は、直接的な権利である。
債権の実現には債務者の行為を必要とするが、物権の実現には他人の行為を必要としない。

3 物権は、排他的権利である。
目的物に1つの物権が成立するときは、同一の物権の成立を認められない。

4 物権の優先的効力1
物権同士では、先に成立した物権が優先する。

5 物権の優先的効力2
債権が成立している物に物権が成立するときは、物権が優先する。

6 物権は物を直接に支配する権利だから、物権的請求権が認められる。


(この項終わり)