|公開日 2017.7.15
|更新日 2019.4.25

今回のテーマは物権変動です。次回の「対抗要件」とあわせて理解しましょう。また試験には直接出題されませんが、公示の原則や公信の原則も押さえておきましょう。

1|物権変動

1 物権変動の意味

物権変動というのは、物権(所有権、抵当権など)が発生したり、移転したり、消滅したりすることの「総称」です。

建物を新築すれば建物の所有権が発生し、土地を売買すれば土地の所有権が移転します。
また、土地に地上権を設定すれば地上権が発生し、抵当権を設定すれば抵当権が発生します。火災や取壊しなどによって建物が消失すれば、所有権・地上権等が消滅します。
これらをすべてひっくるめて物権変動といいます。

物権が変動する主な原因は、当事者間の契約遺言などの法律行為・意思表示です。
売買契約、贈与契約、地上権設定契約、抵当権設定契約などによって、所有権、地上権、抵当権等が発生・移転します。
そのほか、当事者の意思によらない時効相続によっても物権変動は生じます。

2 物権変動を生じる時期は?

家を買ったら(売買契約)、所有権が移転するのはいつでしょうか?
民法は「物権の設定および移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」(176条)と定めていますので、物権変動は、原則として意思表示をした時、つまりは契約時に生じることになります。

当事者の意思表示だけで物権が移転するので、これを物権変動における「意思主義」といいます。誤解を生じやすいのですが、物権変動は「登記をした時」に生じるのではありません。たとえば───
① 土地や建物の売買では、登記手続や残代金の支払いを後日に延ばしても、所有権は売買契約締結の時に移転します。
② 売買の予約では、売買完結の意思表示によって売買契約が成立すると同時に、所有権は移転します。

ただし、当事者が「特約で移転時期を定めたとき」は、その定めた時に生じます。
「登記の時」とか「代金完済時」に所有権が移転すると定めたときなどです。

3 公示の原則って?

物権の変動は「常に外部からわかるように明示・公示しなければならない」という原則です。つまり、権利状態が客観的にわかるようにする原則です。
どうしてこんな原則があるのでしょうか?

土地・建物のような「不動産」の取引は、外見上の変化を伴わないことが非常に多く、そのため、所有権・抵当権など排他的権利が頻繁に生じていても、外見上はまったくわかりません。
隣りの家や土地に抵当権が設定されているかどうか、近所の駐車場の持主が変わったかどうかは、家・土地や駐車場を外から見ただけではわからないのです。

物権は、同一の物について第三者の権利成立を認めない排他的権利であり、そのため、その変動も排他的効果を生じるために、これを外部からわかるようにしておかないと、第三者に予想外の損害を与え、ひいては取引の安全を害することになります。
土地を買ったところ、その土地にはすでに抵当権がついていた、ということが後でわかったのでは、安心して土地取引はできません。抵当権が設定されていることが、あらかじめ誰からもわかるようにしておかなければならないのです。

4 公信の原則って?

真実の権利関係があるような「外形を信頼した者は保護されなければならない」という原則です。
物権の存在を推測させるような外形(登記、登録、占有などによる公示を信頼して取引関係に入った者は、その外形が「真実の権利関係を反映しない虚偽のもの」であっても、保護されなければならないとするのです。
公示を信頼した者を保護する制度ですね。もちろん取引の安全のためです。

しかしながら、物権変動を明らかに公示するという公示の原則を徹底しても、その公示がいつも「真実の権利関係」を反映しているとは限りません。
たとえば、土地の所有権がAからBに移転したという登記=公示があっても、中には、Bが勝手に登記したものもあるかもしれないし、所有権を移転する契約が無効な場合(登記も無効となる)もあります。
あるいは、すでにAにより契約が取り消されたり、解除されたりして、登記の外形だけが残っているのかもしれません。

これでは、せっかく公示の原則を徹底しても、真実の権利関係が反映されているかどうか信頼できず、安全な取引を妨げることになりますね。
だからといって、取引のたびに、はたして公示が正しいかどうかをいちいち調査するのは非常に手間がかかりますし、確実に行うことも困難です。これだけで迅速な取引ができなくなります。

この解決を図ったのが公信の原則で、たとえ「公示が真実の権利関係を反映していなくても、公示を信頼した者は公示どおりの効果に従い保護される」としたのです。
公信の原則は、こうして一方で、取引の安全を保護する重要な機能を果たしますが、しかし反面では「真実の権利者の利益を犠牲にする」という面ももっています。
取引の安全のために「真実の権利者」を犠牲にして、虚偽の権利関係を優先させるからです。したがって、公信の原則を無制限に認めるわけにはいきません。

結局、民法は「動産取引」については公信の原則を認めることとし(即時取得の制度)、土地・建物など「不動産取引」においては公信の原則を採用しないこととしました。
土地・建物などの取引においては、「虚偽の登記をそれとは知らずに、真実と信じて取引しても保護されない」として、取引の安全よりも「真実の権利者の利益」を優先させたのです。
これを「登記に公信力はない」といいます。

2|ポイントまとめ

1 ポイントまとめ

1 物権変動を生じる時期
原則として契約の時(意思表示の時)
ただし、当事者間で特約があるときは、特約に従う。
2 公示の原則
物権変動は、常に外部からわかるように公示しなければならないという原則で、動産・不動産に共通。
3 公信の原則
真実の権利関係があるような外形を信頼した者は保護されなければならないという原則。
動産については認められているが(即時取得の制度)、不動産には認められていない。
登記を信じてもそれだけでは保護されない。つまり、登記に公信力はない。


(この項終わり)