|更新日 2019.11.28
|公開日 2017.08.05

31年間の出題傾向旧民法時代には31年間で19問頻出テーマでした。今回の改正で内容が一変しましたが、売買はやはり契約では最重要テーマですから、しっかり勉強する必要があります。
昨年、令和元年(2019)には新民法では削除された売主の「瑕疵担保責任」が出題されました。
[改 正] 売主の担保責任など、多くの規定が一新されました。

れいちゃん01

売買契約ではどんな勉強をするの?

たくちゃん02

売買契約は、宅建業で必須の業務だから、基礎から応用までしっかり勉強しないとね。

れいちゃん03

改正が多いって聞いたけど……。

たくちゃん03

法定責任説に立った従来の条文はすべて撤廃され、契約責任説による条文が多く新設されたんだよ。ちょっと大変かもしれないけど、頑張ろうね!


1|買主の追完請求権

中古マンションを買ったところ、あとで雨漏り(=契約不適合が見つかったという場合、買主はどのようにこの不適合を解決すればいいのでしょうか。

もともと売主には、契約の内容に適合した目的物を引き渡す契約上の義務がありますから、その「目的物に契約内容の不適合がある」場合には、まずは買主には、売主に対して「履行の追完を請求できる」追完請求権が認められています。

1|追完請求の内容は3つ
追完請求の内容は、3通りあります。
① 目的物の修補
② 代替物の引渡し(取替え)
③ 不足分の引渡し

追完の方法は、買主が選択しますが、雨漏りの場合には、②・③は無理ですから、①の修補請求、つまり雨漏りを修繕する方法を選択することになります。
この場合、買主に「不相当な負担」を課するものでなければ、売主は、買主が選択した方法とは「異なる方法で追完する」ことが認められています。

たとえば、買主が、①の修補請求したときでも、②の代替品のほうが安価で、かつ、買主に不相当な負担を課するものでない場合には、売主は代替品の給付により追完をすることができます。
買主の保護と売主の負担とのバランスを考えたわけですね。

2|買主が有責の場合
契約不適合が「買主の責めに帰すべき事由」によるとき、つまり買主に帰責事由があるときには、買主は追完請求をすることができません。
中古マンションの雨漏り(契約不適合)が、買主の日曜大工が原因で生じた場合には、追完請求は認められないわけです。

2|買主の代金減額請求権

 催告による代金減額請求

買主の追完請求に対して、売主が履行を追完しない場合には、買主には、不適合の程度に応じて「代金の減額」を請求する代金減額請求権が認められています。

買主の代金減額請求権は、債務不履行に基づく損害賠償請求権とは違って、売主に帰責事由(故意・過失・信義則違反)があるかどうかを問わずに認められる権利です。

|まず催告するのが原則|
代金減額請求権を行使するためには、原則として、まず「追完の催告」をしなければなりません。雨漏りが見つかったからといって、直ちに代金減額請求ができるわけではないのです。
というのも、代金減額は契約の一部解除という性質がありますから、通常の解除と同様に、まずは催告が必要とされるのです。

民法は「買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる」(563条1項)としています。

 催告不要の代金減額請求

ただし、次の場合には催告なしに、直ちに減額請求をすることができます。
催告しても意味がないからです。

① 履行の追完が不能であるとき
② 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
③ 催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき

 買主が有責の場合

ただし、目的物の契約不適合が「買主の責めに帰すべき事由」による場合には、代金減額請求権は認められません。
追完請求の場合と同じです。

 減額される代金額

減額される代金額は「不適合の程度に応じて」算定されます。
減額割合の算定基準時は、契約時ではなく引渡し時とされます。

3|損害賠償請求権・解除権

さて、引き渡された目的物が契約不適合である場合には、買主には、追完請求権・代金減額請求権が認められているのですが、そのほかに、債務不履行の一般規定に従って、損害賠償請求権契約解除権が認められています。

1|損害賠償と解除について
売主の債務不履行を理由に損害賠償請求をするには、売主に帰責事由がなければなりません(415条1項)
旧民法の瑕疵担保責任の場合には、無過失責任と解されていましたが、新民法では、売主に帰責事由が必要です(564条)
なお、契約を解除するには、売主の帰責事由は必要ありません(541条)

2|買主に帰責事由があるとき
ただし、買主に帰責事由があるときには、損害賠償請求も契約解除もできません。
雨漏りの原因が、買主の帰責事由による場合には、追完請求権も代金減額請求権もないわけですが、損害賠償請求も契約解除も認められないわけです。

4|権利の契約不適合の場合

売主には、契約に適合する「物」を引き渡す義務があるのと同じように、「権利」についても契約に適合する権利を移転する義務があります。
したがって、移転した「権利」が契約不適合の場合には、「物」の引渡しと同じように、買主は、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除をすることができます。
新民法は、物と権利を統一的に運用しているわけです。

|権利が不適合のケース|
権利が契約不適合のケースとしては、次のような場合があります。
① 目的物に制限物権(地上権、抵当権など)が存する場合
② 建物のために存するとされた土地賃借権が存しなかった場合
③ 不動産の上に対抗力を有する他人の賃借権が存する場合

5|担保責任の期間制限

売主の担保責任も長く続くわけではありません。

1|知った時から1年
売主が、契約不適合の物を引き渡した場合は、買主がその不適合を知った時から1年以内に、その旨を「売主に通知」しないときは、買主は、履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除をすることができません。
不適合があっても、通知しないときは、これらの権利を失うということです。

何年たっても売主が責任を負うとしたのでは、売主にあまりに酷な結果となります。早期に法律関係を安定させ、売主を保護する必要があるのです。

2|通知は明確に
通知すれば足りるのであって、「請求」までを要求されるものではありません。
ただし、この通知は明確にする必要があります。
原因や損害額について、現在調査中の段階で、とりあえず売主に対して不適合の存在を通知するという対応では、権利保存にはなりません。

判例はこのようにいっています。
「損害賠償請求権を保存するには、少なくとも、具体的に瑕疵(不適合)の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、損害額の算定根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある」(最判平4.10.20)

3|売主に悪意・重過失があるとき
ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかった場合には、期間制限はなく、買主が通知を怠っていても、これらの権利が認められます。
通知がないからという理由で、不適合を知っている売主を免責することは相当でないと考えられるからです。

4|権利の不適合には適用なし
以上の期間制限は「権利」に関する契約不適合には適用されません。
この場合には、債権の消滅時効に関する一般原則によって処理されます(166条1項。主観的起算点から5年、客観的起算点から10年)

6|危険の移転

1|引渡し後のリスクは買主が負う
たとえば建物の売買契約で、契約日から20日後に引渡しの予定、60日後に残代金決済予定とされ、予定どおり20日後に建物が引き渡された。ところが、45日後に地震が発生して建物が倒壊してしまった。

この場合、買主は、残代金を支払わなければならないのでしょうか。

売買における危険の移転

買主に目的物(土地・建物などの特定物に限る)が引き渡された場合に、その引渡し以後、目的物が「当事者双方の責めに帰することができない事由」によって滅失または損傷したときは、そのリスクは、買主が負担しなければなりません。

つまり、買主は、滅失・損傷を理由として、履行の追完請求、代金の減額請求、損害賠償請求、契約解除をすることはできないのです。代金の支払いを拒むこともできません。

「引渡し時」が「危険の移転時期」というわけですね。
これは、買主が引渡しを受けた以上、目的物は買主の支配下に入ったのであり、その後のリスクは買主が甘受すべきなのです。

考えてみれば、当然のような気もしますよね。
引渡しを受けてもう住んでいるわけですから、自然災害で倒壊したからといって、残りの代金は支払わなくていいというのは、売主にとってあまりに不利益ですね。

2|履行の提供があったときも同じ
目的物の「引渡し」を終えていなくても、履行の提供があった場合にも同様の扱いがなされます。

つまり、売主が「履行を提供」したにもかかわらず、①買主がその受領を拒み受領遅滞、または、②受けることができない場合に、「履行の提供があった時以後」当事者双方の無責の事由によって滅失・損傷した危険は、買主がそのリスクを負い、履行の追完請求、代金の減額請求等は認められません。

※ ここでいう「危険の移転」と、引渡し前の履行不能を問題とする「危険負担」とを混同しないよう、要注意です。

7|抵当権等がある場合の費用償還請求

|所有権保存の費用を請求できる|
買い受けた不動産に、契約不適合の「抵当権」や質権等があった場合、買主が費用を支出してその不動産の「所有権を保存」したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができます。

実際の売買契約では、不動産に抵当権等の担保が付されている場合には、担保をはずしたうえで買主に引渡しをすることが、売主の義務とされています。

8|担保責任を負わない旨の特約

契約不適合の物・権利について「担保責任を負わない旨の特約」も有効です。
しかし売主は、知りながら告げなかった事実や、自ら第三者のために設定した権利、または第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができません。

9|買主の代金支払拒絶

 権利を取得できないおそれがある場合

次のような場合には、買主は、その「危険の程度に応じて」代金の全部または一部の支払いを拒むことができます。
① 売買の目的について「権利を主張する者」や「その他の事由」により、
② 買主が買い受けた権利の全部あるいは一部を取得することができず、または失うおそれがあるとき

 抵当権等の登記がある場合

買い受けた不動産について契約不適合の抵当権登記があるときは、買主は、「抵当権消滅請求の手続」が終わるまで、その代金の支払いを拒むことができます。
なお、この手続きが遅れないようにするために、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をするよう請求することができます。

代金支払拒絶は、契約不適合の質権・先取特権の登記がある場合も同様です。

ポイントまとめ 売買の目的物に不適合がある場合、買主には追完請求権が認められる。
 追完請求の内容は、目的物の修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しの3つがある。
 買主に不適合の帰責事由があるときは、追完請求権はない。
 買主による追完の催告に対し、売主が相当期間内に履行の追完をしないときは、買主は、不適合の程度に応じて代金減額請求ができる。
 次の場合は、追完の催告なしに、直ちに代金減額請求ができる。
① 履行の追完が不能
② 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示
③ 履行の追完を受ける見込みがないことが明らか

 買主に不適合の帰責事由があるときは、代金減額請求権はない。
 買主には、追完請求権・代金減額請求権のほかに、損害賠償請求権・契約解除権がある。
 移転した権利に不適合がある場合にも、同じように買主に追完請求権等が認められる。
 担保責任の期間は、買主が不適合を知った時から1年である。
10 不適合につき売主に悪意または重過失があるときは、この期間制限はない。

11 目的物の引渡し以後に、目的物が「当事者双方の責めに帰することができない事由」によって滅失・損傷したときは、買主は、履行追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除ができない。この場合でも、買主は、代金支払いを拒むことができない。
12 買い受けた不動産に、契約不適合の抵当権等があった場合に、買主の費用でその所有権を保存したときは、売主に対し費用の償還請求ができる。
13 担保責任を負わない旨の特約も有効だが、売主は、知りながら告げなかった事実については、責任を免れることができない。
14 買い受けた不動産に、契約不適合の抵当権登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、代金支払いを拒むことができる。
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