|公開日 2020.03.03

【問 1】 AがB所有の建物について賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない。

 AがBの承諾を受けてDに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃貸借契約がAの債務不履行を理由に解除され、BがDに対して目的物の返還を請求しても、AD間の転貸借契約は原則として終了しない。

 AがEに対して賃借権の譲渡を行う場合のBの承諾は、Aに対するものでも、Eに対するものでも有効である。

 AがBの承諾なく当該建物をFに転貸し、無断転貸を理由にFがBから明渡請求を受けた場合には、Fは明渡請求以後のAに対する賃料の全部又は一部の支払を拒むことができる。

(平成18年問10)

 解説&正解 

【1】 [無断転貸と背信的行為]
賃借人は、そもそも賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲渡したり、賃借物を転貸することができず、これに反して無断転貸があれば、賃貸人は契約を解除することができる。これが大原則。

しかし判例によれば、無断転貸であっても、賃貸人に対する「背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるとき」は、契約解除はできない(最判昭36.4.28)
賃貸借は、双方の信頼関係が継続する関係だから、その信頼関係を破壊するような悪質な無断転貸の場合にだけ解除できるとして、無断転貸を形式的に判断するのではなく、実質的に判断したのである。
本肢は正しい記述です。

【2】 [債務不履行と転貸借の終了]
適法な転貸借がなされても、賃借人Aの債務不履行によりAB間の賃貸借が解除されれば、Aは転借人Dに対して、転貸人としての債務が履行不能となる
したがってAD間の転貸借は、AB間の賃貸借の終了と同時に終了することになる。

転借人Dは、転借権を賃貸人Bに対抗できず、建物を返還しなければならない。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [承諾の相手方]
賃借権の譲渡または賃借物の転貸を行う場合、賃貸人Bによる承諾の相手方は、賃借人でも譲受人でも、また転借人でも有効である。
本肢は正しい記述です。

【4】 [担保責任と賃料支払拒絶権]
賃借権の無断転貸があれば、建物賃貸人Bは無断転貸を理由に、転借人Fに対しその明渡しを求めることができる。

この場合、転借人Fが明渡請求を受けたために、転借権の全部または一部を失うおそれがあるときは、それ以後、その危険の限度に応じて、転貸人Aに対する賃料の全部または一部の支払いを拒むことができる。
本肢は正しい記述です。

[正解] 2

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【問 2】 AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Aは、Bの賃料の不払いを理由に甲建物の賃貸借契約を解除するには、Cに対して、賃料支払の催告をして甲建物の賃料を支払う機会を与えなければならない。

 BがAに対して甲建物の賃料を支払期日になっても支払わない場合、AはCに対して、賃料10万円をAに直接支払うよう請求することができる。

 AがBの債務不履行を理由に甲建物の賃貸借契約を解除した場合、CのBに対する賃料の不払いがなくても、AはCに対して甲建物の明渡しを求めることができる。

 AがBとの間で甲建物の賃貸借契約を合意解除した場合、AはCに対して、Bとの合意解除に基づいて、当然には甲建物の明渡しを求めることができない。

(平成28年問8)

 解説&正解 

【1】 [債務不履行による解除と転借人]
判例は、適法な転貸借がある場合、賃貸人が賃料延滞を理由として賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して「賃料支払の催告」をすれば足りるのであって、転借人に対して延滞賃料の支払機会を「与えなければならない」ものではないとしている。
本肢は誤った記述です。

【2】 [適法な転貸借の効果]
適法な転貸借がある場合、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負うから、賃借人Bが甲建物の賃料を支払期日になっても支払わない場合には、賃貸人Aは転借人Cに対して、賃料10万円をAに直接支払うよう請求することができる。
本肢は正しい記述です。

※ 適法な転貸借があると、転借人は転借物の使用収益権をもって賃貸人に対抗できる代わりに、賃借人(転貸人)に対してだけでなく、賃貸人に対しても直接義務を負うことになります。

【3】 [債務不履行解除と転貸借の終了]
適法な転貸借がある場合でも、賃借人Bの「債務不履行」によりAB間の賃貸借が解除されれば、その結果、賃借人Bは、転貸人としての債務が履行不能となるため、BC間の転貸借は、AB間の賃貸借の終了と同時に終了する。

転借人Cは転借権を賃貸人Aに対抗できないため、建物を返還しなければならない。
本肢は正しい記述です。

【4】 [合意解除と転貸借の終了]
判例は、適法な転貸借がある場合、賃貸人と賃借人が賃貸借を「合意解除」しても、転借人に不信な行為があるなど特別の事情がある場合を除いて、転貸借は当然には終了しないとしている。
AはCに対して、Bとの合意解除に基づいて、当然には甲建物の明渡しを求めることはできないのである。
本肢は正しい記述です。

[正解] 1

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【問 3】 Aは、自己所有の甲建物(居住用)をBに賃貸し、引渡しも終わり、敷金50万円を受領した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 賃貸借が終了した場合、AがBに対し、社会通念上通常の使用をした場合に生じる通常損耗について原状回復義務を負わせることは、補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているなど、その旨の特約が明確に合意されたときでもすることができない。

 Aが甲建物をCに譲渡し、所有権移転登記を経た場合、Bの承諾がなくとも、敷金が存在する限度において、敷金返還債務はAからCに承継される。

 BがAの承諾を得て賃借権をDに移転する場合、賃借権の移転合意だけでは、敷金返還請求権(敷金が存在する限度に限る。)はBからDに承継されない。

 甲建物の抵当権者がAのBに対する賃料債権につき物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合においても、その賃料が支払われないまま賃貸借契約が終了し、甲建物がBからAに明け渡されたときは、その未払賃料債権は敷金の充当により、その限度で消滅する。

(平成20年問10)

 解説&正解 

【1】 [通常損耗の原状回復義務]
通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に「具体的に明記」されているなど、その旨の「特約が明確に合意されたとき」であれば、通常損耗について原状回復義務を負わせることができる。
本肢の記述は誤りです。

※ 判例(最判平17.12.16)は「賃借人が負担する賃借物の原状回復義務には、特約のない限り、社会通念上通常の使用に伴う通常損耗に係るものは含まれず、その補修費用は賃貸人が負担すべきである
したがって賃借人に対し、通常損耗について原状回復義務を負わせることは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるため、この義務を認めるためには、少なくとも、補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」としている。

要するに、賃借人に通常損耗の補修費用を請求するためには、前もってそのことをハッキリさせておくように、ということである。

【2】 [建物譲渡と敷金の承継]
賃貸建物が譲渡されたときは、敷金に関する権利義務関係は、賃借人Bの承諾がなくとも「敷金が存在する限度において」、つまり未払賃料を控除した残額について、当然に新賃貸人Cに承継される。
本肢は正しい記述です。

【3】 [賃借権譲渡と敷金の承継]
賃借人Bが、建物賃借権を適法に譲渡・移転する場合、賃貸人Aに対する敷金返還請求権の承継については、新賃借人Dに敷金返還請求権を譲渡するなど特段の事情のない限り、賃借権譲渡の承諾とは別に、そのためだけの合意が必要である。
本肢は正しい記述です。

【4】 [賃料債権差押えと敷金充当]
甲建物の抵当権者が、物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえた場合でも、賃貸借が終了し、建物が明け渡されたときは、未払賃料債権は「敷金の充当により、その限度で消滅する」
本肢は正しい記述です。

※ 判例は、「抵当権者は、物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前は、原則として抵当不動産の用益関係に介入できないのであるから、抵当不動産の所有者等(賃貸人など)は、賃貸借契約に付随する契約として敷金契約を締結するか否かを自由に決定することができる
したがって、敷金契約が締結された場合は、賃料債権は敷金の充当を予定した債権になり、このことを抵当権者に主張することができるというべきである」としている(最判平14.3.28)

[正解] 1

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