|更新日 2019.7.13
|公開日 2017.5.10

【問 1】 AはBから 2,000万円を借り入れて土地とその上の建物を購入し、Bを抵当権者として当該土地及び建物に 2,000万円を被担保債権とする抵当権を設定し、登記した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているのはどれか。

 AがBとは別にCから 500万円を借り入れていた場合、Bとの抵当権設定契約がCとの抵当権設定契約より先であっても、Cを抵当権者とする抵当権設定登記の方がBを抵当権者とする抵当権設定登記より先であるときには、Cを抵当権者とする抵当権が第1順位となる。

 当該建物に火災保険が付されていて、当該建物が火災によって焼失してしまった場合、Bの抵当権は、その火災保険契約に基づく損害保険金請求権に対しても行使することができる。

 Bの抵当権設定登記後にAがDに対して当該建物を賃貸し、当該建物をDが使用している状態で抵当権が実行され当該建物が競売された場合、Dは競落人に対して直ちに当該建物を明け渡す必要はない。

 AがBとは別に事業資金としてEから 500万円を借り入れる場合、当該土地及び建物の購入代金が 2,000万円であったときには、Bに対して 500万円以上の返済をした後でなければ、当該土地及び建物にEのために2番抵当権を設定することはできない。

(平成22年 問5)


 解説&正解 

 正しい [抵当権の優先順位]
同一の不動産について数個の抵当権が設定された場合、抵当権の優劣は、登記の先後で決定される。抵当権「設定契約」の前後で決定されるのではない。
Cの抵当権設定登記は、Bの抵当権設定登記より「先である」ため、Cの抵当権が「第1順位」となる。

 正しい [抵当権の物上代位性]
抵当権には物上代位性があるから、抵当建物が火災によって焼失し、火災保険契約に基づく損害保険金請求権が発生した場合には、その請求権に対して抵当権を行使することができる。

 正しい [明渡し猶予]
建物への「抵当権設定登記後」に、その抵当建物を賃借したDは、建物賃借権を抵当権者Bに対抗できず、したがって建物競落人に対して直ちに建物を明け渡さなければならないのが原則である。

しかし、建物賃借人が競売手続の開始前から「使用している」場合には、建物競落人の買受けの時から6ヵ月を経過するまでは、建物を引き渡さなくてもよい。
「直ちに」明け渡さなければならないとすると、あまりに賃借人の保護に欠けるからである。

 誤り [数個の抵当権の設定]
債務者Aは、Bに「500万円以上の返済」をしなくても、さらにEから 500万円を借り入れることができる。
抵当権は、債権者(抵当権者)と債務者の合意によって設定されるものであり、債務者の被担保債権の額や増減に制約されるものではない。

[正解] 4

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【問 2】 Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Bはこの土地上に乙建物を築造し、自己所有とした。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

 Aは、Bに対し、乙建物の築造行為は、甲土地に対するAの抵当権を侵害する行為であるとして、乙建物の収去を求めることができる。

 Bが、甲土地及び乙建物の双方につき、Cのために抵当権を設定して、その旨の登記をした後(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。

 Bが、乙建物築造後、甲土地についてのみ、Dのために抵当権を設定して、その旨の登記をした場合(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権及び被担保債権が存続している状態で、Dの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。

 Aは、乙建物に抵当権を設定していなくても、甲土地とともに乙建物を競売することができるが、優先弁済権は甲土地の代金についてのみ行使できる。

(平成14年 問6)


 解説&正解 

 誤り [建物築造と土地抵当権の侵害]
抵当地上における建物の築造行為は土地の抵当権侵害とはいえず、建物の収去を求めることはできない。
そもそも抵当権は、抵当物が有する交換価値(金銭に換算した価格)を把握するだけで、抵当物自体は抵当権設定者(債務者や物上保証人)のもとに置いて、自由にその使用・収益を認める権利なのである。

更地に建物が建つと土地価格が下がることもあるが、反面、大きな収益を生むリゾートホテルなどが建つと土地価格は上昇する。

 誤り [建物存在時期]
抵当権者Aの抵当権が実行されても、乙建物のために法定地上権は成立しない。
建物のために法定地上権が成立するには、土地への抵当権設定当時に建物が存在していることが絶対に必要で、これは判例の一貫した態度である(最判昭36.2.10ほか)

というのも、この時すでに存在していた建物を保護することこそが法定地上権の趣旨だからである。
抵当権者は、土地に抵当権を設定する時に、「建物のない土地」として担保価値を評価しており、後になって建物のために法定地上権を認め土地使用を制限することは、土地の交換価値を下落させ、抵当権者の利益を著しく害することになる。

※ 抵当権者が建物築造を事前に承認していても、法定地上権は成立しない(判例)

 誤り [建物の存在時期]
「更地」にAの一番抵当権を設定した後に、Dの後順位抵当権設定前に乙建物が築造され、その後、Dの抵当権が実行されても、乙建物のために法定地上権は成立しない。

抵当権が実行されると、抵当不動産上のすべての抵当権(一番抵当権、後順位抵当権)が一括して清算されるが、このとき建物のために法定地上権が成立するかどうかは、一番抵当権設定時が基準とされる。

一番抵当権設定時に建物が存在していない場合、一番抵当権者は「建物のない土地」として、つまり法定地上権による制約がない土地として担保価値を高く評価しているから、その後存在した建物のために法定地上権を認めると、この担保価値を著しく害することになるのである。

 正しい [抵当地と建物の一括競売]
甲地に抵当権を設定した後に、債務者Bの乙建物が建てられた場合、抵当権者Aは、乙建物に抵当権を設定していなくても、甲地と乙建物を一括競売することができる。
これにより抵当権の実行が容易になり、また、土地と建物が同一の買受人に帰属できるようにして建物の存続を図ろうとしたのである。

ただし、抵当権は甲地だけに設定されているから、乙建物の売却代金から優先弁済を受けることはできない。

[正解] 4

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【問 3】 抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 賃借地上の建物が抵当権の目的となっているときは、一定の場合を除き、敷地の賃借権にも抵当権の効力が及ぶ。

 抵当不動産の被担保債権の主債務者は、抵当権消滅請求をすることはできないが、その債務について連帯保証をした者は、抵当権消滅請求をすることができる。

 抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する。

 土地に抵当権が設定された後に抵当地に建物が築造されたときは、一定の場合を除き、抵当権者は土地とともに建物を競売することができるが、その優先権は土地の代価についてのみ行使することができる。

(平成27年 問6)


 解説&正解 

 正しい [抵当権の効力の及ぶ範囲]
建物所有に必要な敷地の賃借権は、建物所有権に付随しこれと一体となって一つの財産的価値を形成しているから、賃借地上の建物に抵当権を設定したときには、抵当権の効力は原則として、敷地の賃借権にも及ぶ。

※ したがって、抵当権の実行により、競落人が建物所有権を取得した場合には、特段の事情がないかぎり、敷地の賃借権も競落人に移転する。

 誤り [抵当権消滅請求権者]
「主たる債務者」もその「連帯保証人」も、抵当権消滅請求をすることはできない。
これらの者は、もともと抵当債務を負担しており債務全額を弁済すべきであるから、これに満たない金額で抵当権を消滅させるべきではないのである(たとえ抵当不動産の第三取得者となった場合でも)。

抵当権消滅請求の制度は、抵当不動産の所有権を取得した第三取得者を保護するための制度だから、主たる債務者、保証人(およびこれらの承継人)は、抵当権消滅請求をすることはできない。

 正しい [代価弁済による抵当権消滅]
記述のとおり。抵当不動産の第三取得者が、抵当権者の請求に応じて抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する。

 正しい [抵当地・建物の一括競売]
土地への抵当権設定後に、建物が建てられた場合、抵当権者は(建物に抵当権を設定していなくても)土地と建物を一括競売することができる。
ただし、抵当権は土地だけに設定されているから、建物の売却代金からは優先弁済を受けることはできない。

[正解] 2


(この項 終わり)