|更新日 2019.7.13
|公開日 2017.5.10

【問 1】 抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 債権者が抵当権の実行として担保不動産の競売手続をする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要があるが、対象不動産に関して発生した賃料債権に対して物上代位をしようとする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要はない。

 抵当権の対象不動産が借地上の建物であった場合、特段の事情がない限り、抵当権の効力は当該建物のみならず借地権についても及ぶ。

 対象不動産について第三者が不法に占有している場合、抵当権は、抵当権設定者から抵当権者に対して占有を移転させるものではないので、事情にかかわらず抵当権者が当該占有者に対して妨害排除請求をすることはできない。

 抵当権について登記がされた後は、抵当権の順位を変更することはできない。

(平成25年 問5)


 解説&正解 

 誤り [物上代位と弁済期]
抵当権を実行するためには、絶対に「被担保債権の弁済期が到来」している必要がある。そもそも弁済期は債務者の利益のためにあるのだから、抵当権者(債権者)がその弁済期到来を無視して抵当権を実行することは許されないのである。
抵当権と同視できる物上代位を行使する場合も、同じである。

 正しい [従たる権利としての借地権]
借地上の建物に抵当権が設定された場合、原則として、抵当権の効力は借地権(抵当不動産の従たる権利)についても及ぶ。
判例は「建物所有に必要な借地権は、建物所有権に付随し、これと一体となって一の財産的価値を形成しているから」としている(最判昭40.5.4)

※ 判例は、建物とそれに必要な借地権を「主物・従物の関係」(87条2項)として捉えている。

 誤り [抵当権に基づく妨害排除請求権]
抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して抵当不動産を適切に維持保存するよう求める請求権を保全するため、その不法占有により、優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使して、直接抵当権者に建物を明け渡すよう求めることができる(最判平11.11.24)

 誤り [抵当権の順位の変更]
抵当権を登記した後でも、各抵当権者の合意によって抵当権の順位を変更することができる。
ただし、法律関係が複雑になるのを避けるため、順位の変更は、登記をすることが効力要件とされている。

[正解] 2

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【問 2】 物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、物上代位を行う担保権者は、物上代位の対象とする目的物について、その払渡し又は引渡しの前に差し押さえるものとする。

 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Bの一般債権者が差押えをした場合には、Aは当該賃料債権に物上代位することができない。

 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Aが当該建物に抵当権を実行していても、当該抵当権が消滅するまでは、Aは当該賃料債権に物上代位することができる。

 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物が火災によって焼失してしまった場合、Aは、当該建物に掛けられた火災保険契約に基づく損害保険金請求権に物上代位することができる。

 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物について、CがBと賃貸借契約を締結した上でDに転貸していた場合、Aは、CのDに対する転貸賃料債権に当然に物上代位することはできない。

(平成24年 問7)


 解説&正解 

 誤り [差押えと物上代位の優劣]
判例によれば、債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は、差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられる。

抵当権者Aは、B所有の建物に先に抵当権設定登記をしているので、Bの一般債権者が賃料債権の差押えをしても、Aは賃料債権に物上代位することができる(最判平10.3.26)

 正しい [物上代位の行使時期]
最高裁は「目的不動産に対して抵当権が実行されている場合でも、抵当権実行の結果、抵当権が消滅するまでは、賃料債権に対しても抵当権を行使することができるというべきである」として、抵当権を実行できる場合も、抵当権を実行するとともに、賃料債権への物上代位も認めている(最判平1.10.27)

 正しい [損害保険金請求権への物上代位]
抵当権は、抵当目的物の売却、賃貸、滅失、損傷によって債務者が受けるべき金銭に対しても行使することができる。
つまり「火災保険契約に基づく損害保険金請求権」にも物上代位できるのである。

 正しい [転貸料に対する物上代位]
判例(最判平12.4.14)は、抵当権者は、原則として、賃借人が取得する転貸料について物上代位を行使することはできないとしている。

抵当不動産の所有者は、抵当不動産をもって被担保債権の履行責任を負担するものであるが、抵当不動産の転借人は、そのような履行責任を負担するものではなく、自己の債権を被担保債権の弁済に当てられるべき立場にはない
また、物上代位を認めると、転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなるからである。

[正解] 1

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【問 3】 Aは、Bから借り入れた 2,000万円の担保として抵当権が設定されている甲建物を所有しており、抵当権設定の後である平成20年4月1日に、甲建物を賃借人Cに対して賃貸した。Cは甲建物に住んでいるが、賃借権の登記はされていない。この場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

 AがBに対する借入金の返済につき債務不履行となった場合、Bは抵当権の実行を申し立てて、AのCに対する賃料債権に物上代位することも、AC間の建物賃貸借契約を解除することもできる。

 抵当権が実行されて、Dが甲建物の新たな所有者となった場合であっても、Cは民法第602条に規定されている短期賃貸借期間の限度で、Dに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。

 AがEからさらに 1,000万円を借り入れる場合、甲建物の担保価値が 1,500万円だとすれば、甲建物に抵当権を設定しても、EがBに優先して甲建物から債権全額の回収を図る方法はない。

 Aが借入金の返済のために甲建物をFに任意に売却してFが新たな所有者となった場合であっても、Cは、FはAC間の賃貸借契約を承継したとして、Fに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。

(平成20年 問4)


 解説&正解 

 誤り [抵当権の物上代位性]
債務者Aが、借入金の返済について債務不履行となった場合、抵当権者Bは、Aの有する賃料債権に対して物上代位することができる(抵当権の物上代位性)。
しかし、AC間の建物賃貸借契約を解除する権限まではない。

 誤り [抵当権設定後の短期賃貸借]
甲建物には先にBの抵当権が設定されており、対抗要件を備えている(177条)
一方、甲建物の賃借人Cは「賃借権の登記」をしていないが、「甲建物に住んでいる」ので建物賃借権の対抗要件を備えている(借地借家法31条)

この場合、両者の優劣は177条の原則により、先に対抗要件を備えた抵当権が優先するから、「短期賃貸借期間の限度」であってもCは建物賃借権をBに対抗できず、したがって、抵当権を実行した建物の競落人Dに対しても賃借権を主張することはできない。

※ 短期の賃貸借は、抵当権の競落人にも対抗できるとしていた「短期賃貸借の保護制度」はすでに廃止され、不動産に関する物権変動の優劣は、177条の原則どおり登記の先後によって決せられる。
したがって抵当権設定後の賃借権は、原則として、登記の有無、期間の長短に関係なく、抵当権者(したがって競落人)に対抗できない。

 誤り [抵当権の順位の譲渡]
「甲建物の担保価値が 1,500万円」だから、一番抵当権者Bの 2,000万円が実行されれば、二番抵当権者Eの1,000万円は全然回収されない。
この場合、Eは、Bからその順位の譲渡を受けて一番抵当権者となることによって、Bに優先して債権全額を回収することができるのである。

 正しい [第三取得者と賃借権者の対抗関係]
甲建物の賃借人Cは「賃借権の登記はされていない」場合でも、建物の引渡しを受けて居住しているので、借地借家法上、建物賃借権の第三者対抗要件を備えている。
したがって、賃貸建物の譲渡により、Aの賃貸人としての地位を承継した新所有者Fに対して、建物賃借権を主張することができる。

※ 選択肢2との違いに注意。

対抗要件

選択肢2は「抵当権の実行」です。
選択肢4は「譲渡」です。

[正解] 4


(この項 終わり)