|公開日 2017.5.10

【問 1】 AがBに対する債務の担保のためにA所有建物に抵当権を設定し、登記をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aが通常の利用方法を逸脱して、建物の毀損行為を行う場合、Aの債務の弁済期が到来していないときでも、Bは、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。

 抵当権の登記に債務の利息に関する定めがあり、他に後順位抵当権者その他の利害関係者がいない場合でも、Bは、Aに対し、満期のきた最後の2年分を超える利息については抵当権を行うことはできない。

 第三者の不法行為により建物が焼失したのでAがその損害賠償金を受領した場合、Bは、Aの受領した損害賠償金に対して物上代位をすることができる。

 抵当権の消滅時効の期間は20年であるから、AのBに対する債務の弁済期から10年が経過し、その債務が消滅しても、Aは、Bに対し抵当権の消滅を主張することができない。

(平成7年 問6)


[解説&正解]
 正しい  [抵当権に基づく妨害排除請求権]*最判平11.11.24
抵当物への毀損行為があれば、抵当権者は、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。
毀損行為があると、債務の弁済期に関係なく、抵当物の担保価値は減少し、債権が担保されなくなる。これは抵当権そのものに対する侵害であるから、抵当権も物権である以上、当然に物権的請求権としての「抵当権に基づく妨害排除請求」が認められるのである。

 誤り   [利息の範囲]*375条
利息については、原則として、満期のきた最後の2年分についてだけ抵当権の効力が及ぶ。
2年という制限をおいたのは、後順位抵当権者などほかの債権者の利益を保護するためだから、「他に後順位抵当権者その他の利害関係者がいない」場合には、この制限はなく、最後の2年分を超えて抵当権を行うことができる。

※ 利息に限らず、抵当権者が債務不履行によって生じた損害賠償請求権を有する場合でも同じで、通算して2年分を超えることができない。

 誤り   [物上代位の要件──差押え]*304条、372条
債務者Aが損害賠償金を「受領」してしまえば、抵当権者Bは、もはやその「受領した損害賠償金」に対して物上代位することはできない。
抵当権者が物上代位によって優先弁済を受けるためには、債務者が受領する損害賠償金の払渡し前に必ず差押えをする必要がある。

※ しかもこの差押えは、抵当権者自身が他の債権者に先立って最初にしなければないとするのが判例である(大判大12.4.7)。
※ 差押えが払渡し前に限定されているのは、抵当権はもともと「特定の物」に対する権利だから、払渡し後に債務者の「一般財産」に混入した場合にまで抵当権の効力を認めたのでは、広く一般財産に対して優先権を承認することとなり、あまりにも抵当権を優遇することになるからである。

 誤り   [抵当権の消滅時効]*396条、167条2項、大判昭15.11.26
債務者Aの債務が10年で時効消滅すれば、それを担保するBの抵当権も付従性により当然に消滅する。
抵当権は、①債務者や抵当権設定者(物上保証人)に対しては、債権が時効消滅すれば消滅し、抵当権だけが単独で時効消滅することはない(抵当権の付従性)。

※ ただし、②後順位抵当権者および抵当物件の第三取得者に対しては、その利益のために、被担保債権と離れ、抵当権だけが単独で20年の消滅時効かかる。
いいかえれば、抵当権を行使できる時から20年が経過すると、債権が時効中断されて消滅時効にかからない場合でも、第三取得者等は、抵当権の時効消滅を主張することができるのである。
[正解] 1

■しっかり読んでおきたい重要条文
*304条(物上代位)
抵当権は、その目的物の売却賃貸滅失または損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。
ただし、その払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければならない。
*375条(抵当権の被担保債権の範囲)
1 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。
2 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の2年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して2年分を超えることができない。
*396条(抵当権の消滅時効)
抵当権は、債務者および抵当権設定者(物上保証人)に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
*167条(抵当権等の消滅時効)
2 (債権または所有権)以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。

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【問 2】 抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 債権者が抵当権の実行として担保不動産の競売手続をする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要があるが、対象不動産に関して発生した賃料債権に対して物上代位をしようとする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要はない。

 抵当権の対象不動産が借地上の建物であった場合、特段の事情がない限り、抵当権の効力は当該建物のみならず借地権についても及ぶ。

 対象不動産について第三者が不法に占有している場合、抵当権は、抵当権設定者から抵当権者に対して占有を移転させるものではないので、事情にかかわらず抵当権者が当該占有者に対して妨害排除請求をすることはできない。

 抵当権について登記がされた後は、抵当権の順位を変更することはできない。

(平成25年 問5)


[解説&正解]
 誤り   [物上代位と弁済期]
抵当権を実行するためには、絶対に「被担保債権の弁済期が到来」している必要がある。そもそも弁済期は債務者の利益のためにあるのだから、抵当権者(債権者)がその弁済期到来を無視して抵当権を実行することは許されないのである。
抵当権と同視できる物上代位を行使する場合も、同じである。

 正しい  [従たる権利としての借地権]*最判昭40.5.4
借地上の建物に抵当権が設定された場合、原則として、抵当権の効力は借地権(抵当不動産の従たる権利)についても及ぶ。
判例は「建物所有に必要な借地権は、建物所有権に付随し、これと一体となって一の財産的価値を形成しているから」としている。

※ 建物とそれに必要な借地権を「主物・従物の関係」(87条2項)として捉えている。

 誤り   [抵当権に基づく妨害排除請求権]*最判平11.11.24
抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して抵当不動産を適切に維持保存するよう求める請求権を保全するため、その不法占有により、優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使して、直接抵当権者に建物を明け渡すよう求めることができる。

 誤り   [抵当権の順位の変更]*374条
抵当権を登記した後でも、各抵当権者の合意によって抵当権の順位を変更することができる。
ただし、法律関係が複雑になるのを避けるため、順位の変更は、登記をすることが効力要件とされている。
[正解] 2

■しっかり読んでおきたい重要条文
*370条(抵当権の効力の及ぶ範囲──付加一体物)
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である抵当不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合は、この限りでない。
*374条(抵当権の順位の変更)
1 抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2 順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。


(この項 終わり)