|公開日 2020.02.01

【問 1】 物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、物上代位を行う担保権者は、物上代位の対象とする目的物について、その払渡し又は引渡しの前に差し押さえるものとする。

 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Bの一般債権者が差押えをした場合には、Aは当該賃料債権に物上代位することができない。

 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Aが当該建物に抵当権を実行していても、当該抵当権が消滅するまでは、Aは当該賃料債権に物上代位することができる。

 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物が火災によって焼失してしまった場合、Aは、当該建物に掛けられた火災保険契約に基づく損害保険金請求権に物上代位することができる。

 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物について、CがBと賃貸借契約を締結した上でDに転貸していた場合、Aは、CのDに対する転貸賃料債権に当然に物上代位することはできない。

(平成24年問7)

 解説&正解 

【1】 [差押えと物上代位の優劣]
判例によれば、債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は、差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられる(最判平10.3.26)

抵当権者Aは先に、Bの所有建物に抵当権設定登記をしているので、Bの一般債権者が賃料債権の差押えをしても、Aは賃料債権に物上代位することができる。
本肢の記述は誤りです。

【2】 [物上代位の行使時期]
判例は「目的不動産に対して抵当権が実行されている場合でも、抵当権が消滅するまでは、賃料債権に対しても抵当権を行使することができる」として、抵当権を実行するとともに、建物の賃料債権への物上代位も認めている(最判平1.10.27)
本肢は正しい記述です。

【3】 [保険金請求権への物上代位]
抵当権は、抵当目的物の売却、賃貸、滅失などによって債務者が受けるべき金銭に対しても行使することができる。
つまり「火災保険契約に基づく損害保険金請求権」にも物上代位できるのである。
本肢は正しい記述です。

【4】 [転貸料に対する物上代位]
判例(最判平12.4.14)は、抵当権者は、原則として、賃借人が取得する転貸料について物上代位を行使することはできないとしている。

抵当不動産の所有者は、抵当不動産をもって被担保債権の履行責任を負担するものであるが、抵当不動産の転借人は、そのような履行責任を負担するものではなく、自己の債権を被担保債権の弁済に当てられるべき立場にはない
また、物上代位を認めると、転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなるからである。
本肢は正しい記述です。

[正解] 1

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【問 2】 Aが所有する甲土地上にBが乙建物を建築して所有権を登記していたところ、AがBから乙建物を買い取り、その後、Aが甲土地にCのために抵当権を設定し登記した。この場合の法定地上権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Aが乙建物の登記をA名義に移転する前に甲土地に抵当権を設定登記していた場合、甲土地の抵当権が実行されても、乙建物のために法定地上権は成立しない。

 Aが乙建物を取り壊して更地にしてから甲土地に抵当権を設定登記し、その後にAが甲土地上に丙建物を建築していた場合、甲土地の抵当権が実行されたとしても、丙建物のために法定地上権は成立しない。

 Aが甲土地に抵当権を設定登記するのと同時に乙建物にもCのために共同抵当権を設定登記した後、乙建物を取り壊して丙建物を建築し、丙建物にCのために抵当権を設定しないまま甲土地の抵当権が実行された場合、丙建物のために法定地上権は成立しない。

 Aが甲土地に抵当権を設定登記した後、乙建物をDに譲渡した場合、甲土地の抵当権が実行されると、乙建物のために法定地上権が成立する。

(平成30年問6)

 解説&正解 

法定地上権の「成立要件」の出題。難問ですがチャレンジしてみてください。

【1】 [建物の存在時期]
土地に対する抵当権設定時に建物が存在していれば、建物の「登記」がなくても法定地上権は成立する(大判昭14.12.19)

Aが所有する甲土地と乙建物について、甲土地にCの抵当権設定登記をしている場合に、甲土地の抵当権が実行されたときは、乙建物のために法定地上権が成立する。
「成立しない」とする本肢の記述は誤り。

【2】 [更地にした場合]
「更地にしてから」甲土地に抵当権を設定登記し、その後、丙建物を建築していたとしても、甲土地の抵当権が実行されれば、丙建物のために法定地上権が成立することはない。
土地への抵当権設定登記時に、建物は存在していないからである。
本肢は正しい記述です。

【3】 [共同抵当の場合の再築建物]
土地と建物が共同抵当となっている場合に、建物がいったん取り壊され、新建物が再築されても、土地の抵当権者が、新建物について共同抵当権の設定を受けたなど特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない(最判平10.7.3)

「丙建物にCのために抵当権を設定しない」場合には、法定地上権は成立しないのである。本肢は正しい記述です。
※ 共同抵当ではない場合の「再築」ではないことに注意。

【4】 [一方のみの譲渡]
同一人が所有する土地・建物のうち、土地だけに抵当権が設定された後に建物が譲渡された場合には、建物のために法定地上権が成立する。
すでに建物が存在しているので、法定地上権の制限があるものとして担保価値が評価されるからである。
本肢は正しい記述です。

[正解] 1

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【問 3】 債務者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額2,000万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額2,400万円)、債権者Dが三番抵当権(債権額 4,000万円)をそれぞれ有しており、Aにはその他に担保権を有しない債権者E(債権額 2,000万円)がいる。甲土地の競売に基づく売却代金 5,400万円を配当する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 BがEの利益のため、抵当権を譲渡した場合、Bの受ける配当は0円である。

 BがDの利益のため、抵当権の順位を譲渡した場合、Bの受ける配当は 800万円である。

 BがEの利益のため、抵当権を放棄した場合、Bの受ける配当は 1,000万円である。

 BがDの利益のため、抵当権の順位を放棄した場合、Bの受ける配当は 1,000万円である。

(平成27年問7)

 解説&正解 

債権額と配当額を混同しないように。これも難問です。

【1】 [抵当権の譲渡の効果]
抵当権の譲渡は、抵当権者が抵当権だけを抵当権を有しない債権者に対して行うものであり、抵当権の譲受人は、譲渡人の有している利益以上の利益を受けることはできない。

譲受人Eの 2,000万円は、譲渡人Bの抵当権の被担保債権(2,000万円)と順位(一番抵当権)の限度で担保されるから、結局Eは、2,000万円の配当を受けることとなり、「Bの受ける配当は0円」となる。
本肢は正しい記述です。

【2】 [抵当権の順位の譲渡の効果]
BからDに対して抵当権の順位が譲渡された場合、Bは後順位となるから、譲受人Dは、自己の配当額(1,000万円)とBの配当額(2,000万円)の合計額(3,000万円)から優先弁済を受けることになる。

したがって、Dは債権額 4,000万円のうち 3,000万円の配当を受けられるので、Bの受ける配当は0円となる。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [抵当権の放棄の効果]
抵当権の放棄は、一番抵当権者が、無担保債権者のために行うものであって、一番抵当権者Bが、Eのために抵当権を放棄した場合には、Eに対する関係においてのみ優先権を失うにすぎない。

つまり、Bが本来受けるべき配当額 2,000万円を、BとEがその債権額(B 2,000万円:E 2,000万円=1:1)に比例して分配することになるので、Bの受ける配当は 1,000万円、Eも 1,000万円となる。
本肢は正しい記述です。

【4】 [抵当権の順位の放棄の効果]
Bが、Dに対して抵当権の順位を放棄した場合は、BとDは同順位となるから、双方の配当額(債権額ではない)の合計額(3,000万円)を、その債権額に比例して分配する。
したがって、Bの受ける配当は 1,000万円で、Dは 2,000万円となる。
本肢は正しい記述です。

[正解] 2

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