|更新日 2020.02.01
|公開日 2017.12.25

【問 1】 AはBから 2,000万円を借り入れて土地とその上の建物を購入し、Bを抵当権者として当該土地及び建物に 2,000万円を被担保債権とする抵当権を設定し、登記した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているのはどれか。

 AがBとは別にCから 500万円を借り入れていた場合、Bとの抵当権設定契約がCとの抵当権設定契約より先であっても、Cを抵当権者とする抵当権設定登記の方がBを抵当権者とする抵当権設定登記より先であるときには、Cを抵当権者とする抵当権が第1順位となる。

 当該建物に火災保険が付されていて、当該建物が火災によって焼失してしまった場合、Bの抵当権は、その火災保険契約に基づく損害保険金請求権に対しても行使することができる。

 Bの抵当権設定登記後にAがDに対して当該建物を賃貸し、当該建物をDが使用している状態で抵当権が実行され当該建物が競売された場合、Dは競落人に対して直ちに当該建物を明け渡す必要はない。

 AがBとは別に事業資金としてEから 500万円を借り入れる場合、当該土地及び建物の購入代金が 2,000万円であったときには、Bに対して 500万円以上の返済をした後でなければ、当該土地及び建物にEのために2番抵当権を設定することはできない。

(平成22年問5)

 解説&正解 

【1】 [抵当権の優先順位]
同一の不動産について数個の抵当権が設定された場合、抵当権の優劣は、登記の先後で決定される。抵当権「設定契約」の前後で決定されるのではない。
Cの抵当権設定登記は、Bの抵当権設定登記より「先である」ため、Cの抵当権が「第1順位」となる。
本肢は正しい記述です。

【2】 [抵当権の物上代位性]
抵当権には物上代位性があるから抵当建物が火災によって焼失し、火災保険契約に基づく損害保険金請求権が発生した場合には、その請求権に対して抵当権を行使することができる。

【3】 [明渡し猶予]
建物への「抵当権設定登記後」に、その抵当建物を賃借したDは、建物賃借権を抵当権者Bに対抗できず、したがって建物競落人に対して直ちに建物を明け渡さなければならないのが原則である。

しかし、建物賃借人が競売手続の開始前から「使用している」場合は、建物競落人の買受けの時から6ヵ月を経過するまでは、建物を引き渡さなくてもよい。
「直ちに」明け渡さなければならないとすると、あまりに賃借人の保護に欠けるからである。本肢は正しい記述です。

【4】 [数個の抵当権の設定]
債務者Aは、Bに「500万円以上の返済」をしなくても、さらにEから 500万円を借り入れることができる。
抵当権は、債権者(抵当権者)と債務者の合意によって設定されるものであり、債務者の被担保債権の額や増減に制約されるものではない。本肢の記述は誤りです。

[正解] 4

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【問 2】 Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Bはこの土地上に乙建物を築造し、自己所有とした。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

 AはBに対し、乙建物の築造行為は、甲土地に対するAの抵当権を侵害する行為であるとして、乙建物の収去を求めることができる。

 Bが甲土地及び乙建物の双方につき、Cのために抵当権を設定して、その旨の登記をした後(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。

 Bが、乙建物築造後、甲土地についてのみ、Dのために抵当権を設定して、その旨の登記をした場合(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権及び被担保債権が存続している状態で、Dの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。

 Aは、乙建物に抵当権を設定していなくても、甲土地とともに乙建物を競売することができるが、優先弁済権は甲土地の代金についてのみ行使できる。

(平成14年問6)

 解説&正解 

更地に抵当権が設定された後に、乙建物が建てられたという点がポイント。


【1】 [建物築造と土地抵当権の侵害]
抵当地上の建物築造行為は土地の抵当権侵害とはいえず、建物の収去を求めることはできない。

そもそも抵当権は、抵当物が有する交換価値(金銭価格)を把握するだけで、抵当物自体は抵当権設定者(債務者とか物上保証人)のもとに置いて、自由にその使用収益を認める権利である。
更地に建物が建つと土地価格が下がることもある反面、大きな収益を生むホテルなどが建つと土地価格は上昇するので、築造行為が直ちに侵害行為になるとはいえないのである。本肢の記述は誤りです。

【2】 [建物の存在時期]
抵当権者Aの抵当権が実行されても、乙建物のために法定地上権は成立しない。
抵当権者は、土地に抵当権を設定する時に「建物のない更地」として担保価値を高く評価しており、後になって建物のために法定地上権を認めて土地使用を制限することは、土地の交換価値を下落させ、抵当権者の利益を著しく害することになる。
本肢の記述は誤りです。

※ 建物のために法定地上権が成立するには、土地への抵当権設定当時にその建物が存在していることが絶対に必要で、これは判例の一貫した態度。この時すでに存在していた建物を保護することこそが、法定地上権の趣旨である。
※ 抵当権者が建物築造を事前に承認していても、法定地上権は成立しない(最判昭51.2.27)

【3】 [建物の存在時期]
建物のない「更地」にAの一番抵当権を設定した後に、Dの後順位抵当権設定前に乙建物が築造され、その後、Dの抵当権が実行されても、乙建物のために法定地上権は成立しない。

抵当権が実行されると、抵当不動産上のすべての抵当権(一番抵当権、後順位抵当権)が一括清算されるが、このとき法定地上権が成立するかどうかは、一番抵当権設定時が基準とされる。

一番抵当権設定時に建物が存在していない以上、一番抵当権者は「建物のない土地」として、つまり法定地上権による制約がないものとして担保価値を高く評価しているので、その後存在した建物のために法定地上権を認めると、この担保価値を著しく害することになるのである。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [抵当地と建物の一括競売]
甲地に抵当権を設定した後に、債務者Bが乙建物を建てた場合、抵当権者Aは、乙建物に抵当権を設定していなくても、甲地と乙建物を一括競売することができる。
一括競売は、無用に建物を取り壊す不経済を回避するための制度である。

ただし、抵当権は甲地だけに設定されているので、乙建物の売却代金から優先弁済を受けることはできない。
本肢は正しい記述です。

[正解] 4

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【問 3】 Aは、A所有の甲土地にBから借り入れた 3,000万円の担保として抵当権を設定した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Aが甲土地に抵当権を設定した当時、甲土地上にA所有の建物があり、当該建物をAがCに売却した後、Bの抵当権が実行されてDが甲土地を競落した場合、DはCに対して、甲土地の明渡しを求めることはできない。

 甲土地上の建物が火災によって焼失してしまったが、当該建物に火災保険が付されていた場合、Bは、甲土地の抵当権に基づき、この火災保険契約に基づく損害保険金を請求することができる。

 AがEから 500万円を借り入れ、これを担保するために甲土地にEを抵当権者とする第2順位の抵当権を設定した場合、BとEが抵当権の順位を変更することに合意すれば、Aの同意がなくても、甲土地の抵当権の順位を変更することができる。

 Bの抵当権設定後、Aが第三者であるFに甲土地を売却した場合、FはBに対して、民法第383条所定の書面を送付して抵当権の消滅を請求することができる。

(平成28年問4)

 解説&正解 

【1】 [一方の譲渡]
土地と建物の同一所有者が、土地への抵当権設定後に建物を第三者に売却した場合、その後、抵当権が実行されたときには建物のために法定地上権が成立する。
甲土地の競落人Dは、建物譲受人Cに対し甲土地の明渡しを求めることはできない。
本肢は正しい記述です。

※ この場合、建物売却時に建物のために土地利用権(土地賃借権・地上権等)が設定されていたはずであるが、この利用権は「抵当権設定後」であるために競売により消滅してしまう。したがって、建物のために法定地上権を認めるべきであり、これを認めても土地の抵当権者に不都合は生じないというのが判例(大判大12.12.14)である。

【2】 [物上代位]
抵当権は甲土地に設定されているから、抵当権の効力は建物には及ばない
したがって、建物の焼失により火災保険契約による損害保険金が生じても、物上代位によってこれを請求することはできない。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [抵当権の順位の変更]
1番抵当を2番抵当に、2番抵当を1番抵当にするというように、抵当権の順位を変更するためには、各抵当権者の合意が必要である。

しかし順位の変更は、債務者の利害には影響しないので(抵当権者同士の順位が入れ替わるだけ)債務者の承諾は不要であり、債務者「Aの同意がなくても」することができる。本肢は正しい記述です。

【4】 [抵当権消滅請求権者]
抵当不動産の第三取得者Fは、登記をした債権者Bに対して、民法383条の定める書面を送付して抵当権消滅請求をすることができる。本肢は正しい記述です。

[正解] 2

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