|更新日 2020.2.22
|公開日 2017.5.01

【問 1】 不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において、第三者とはいわゆる背信的悪意者を含まないものとする。

 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約に係る意思表示を詐欺によるものとして適法に取り消した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該取消後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。

 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約を適法に解除した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該契約の解除後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。

 甲不動産につき兄と弟が各自2分の1の共有持分で共同相続した後に、兄が弟に断ることなく単独で所有権を相続取得した旨の登記をした場合、弟は、その共同相続の登記をしなければ、共同相続後に甲不動産を兄から取得して所有権移転登記を経た第三者に自己の持分権を対抗できない。

 取得時効の完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者は、その旨を登記しなければ、時効完成後に乙不動産を旧所有者から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。

(平成19年問6)

 解説&正解 

【1】 [取消後の第三者と登記]
売買契約に基づく所有権移転登記後に、契約が取り消された場合は、
① 取消しによる買主→売主の所有権復帰と、
② 取消後の買主→第三者への所有権移転とは、
二重譲渡の関係が成立し対抗関係となるため、権利関係の優劣は登記で決まる

売主は、詐欺を理由に売買契約を取り消しても、その旨の登記をしなければ、取消後に当該不動産を取得して登記を移転した第三者に所有権を対抗することはできない。本肢は正しい記述です。

【2】 [解除後の第三者と登記]
売買契約に基づく所有権移転登記後に、契約が解除された場合は、
① 解除による買主→売主への所有権復帰
② 解除後の買主→第三者への所有権移転とは、
二重譲渡の関係が成立し対抗関係となるため、権利関係の優劣は登記で決まる

売主が契約を解除して所有権が売主に復帰しても、その旨の登記をしなければ、解除後に当該不動産を取得して登記を経た第三者(善意・悪意に関係なく)に所有権を対抗することはできない。本肢は正しい記述です。

【3】 [虚偽の単独登記]
兄弟が共同相続した不動産について、兄が勝手に単独名義で登記した場合、この登記は、弟の持分に関する限り虚偽の登記(無権利の登記)である。
したがって第三者が登記を受けても、弟の持分について、はじめから権利を取得することはできないのである。
弟は「共同相続の登記」をしなくても、登記を経た第三者に自己の持分権(相続分)を対抗することができる。本肢の記述は誤りです。

【4】 [時効完成後の第三者と登記]
① 所有権を時効取得した者と、
② その時効完成後に所有権を取得した第三者とは、
二重譲渡と同様の関係となり、所有権取得の優劣は登記の先後で決まるから先に登記を備えた者が完全な権利者となる

乙不動産の時効取得者は、その登記をしなければ、時効完成後に同一不動産の所有権を取得してその登記を経た第三者に所有権を対抗することはできない。
本肢は正しい記述です。

[正解] 3

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【問 2】 AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 CもBから甲土地を購入しており、その売買契約書の日付とBA間の売買契約書の日付が同じである場合、登記がなくても、契約締結の時刻が早い方が所有権を主張することができる。

 甲土地はCからB、BからAと売却されており、CB間の売買契約がBの強迫により締結されたことを理由として取り消された場合には、BA間の売買契約締結の時期にかかわらず、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。

 Cが時効により甲土地の所有権を取得した旨主張している場合、取得時効の進行中にBA間で売買契約及び所有権移転登記がなされ、その後に時効が完成しているときには、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。

 Cは債権者の追及を逃れるために売買契約の実態はないのに登記だけBに移し、Bがそれに乗じてAとの間で売買契約を締結した場合には、CB間の売買契約が存在しない以上、Aは所有権を主張することができない。

(平成22年問4)

 解説&正解 

【1】 [二重譲渡と登記]
典型的な二重譲渡の問題。
Bの所有地が、B→A、B→Cと二重譲渡されている場合、A・Cの権利の優劣は登記の先後で決定される。したがって、いまだ登記のないCは、Bに対して所有権を主張することはできない。
「登記がなくても、契約締結の時刻が早い方が所有権を主張することができる」ことは、ありえないのである。本肢の記述は誤りです。

【2】 [強迫による取消と登記]
C→Bの契約が、Bの強迫を理由に取り消された場合は、B→第三者Aへの売却が、
① その取消前になされていたのか
② その取消後になされたのか、によって権利関係はまったく異なってくる。

①は、96条の第三者保護の問題として、Cは登記がなくてもAに所有権を主張できるが、②は、177条の対抗問題として、Cは登記がないとAには対抗できない。
「BA間の売買契約締結の時期にかかわらず、……所有権を主張することができる」とはいえないのである。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [時効完成前の第三者と登記]
「取得時効の進行中」に、B→Aへの契約によりAが登記した後に、占有者Cの時効が完成した場合には、Cは「登記がなくても」Aに所有権を主張することができる。

時効完成前に物権変動がある場合には、CとAは物権変動の当事者であって、はじめから177条の対抗関係にはないのである。
本肢は正しい記述です。

【4】 [虚偽表示と177条の第三者]
「売買契約の実態はないのに登記だけBに移し」というのは虚偽表示であるから、CB間の売買契約は無効である。
虚偽表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない」のであるが、問題文からは、Aが善意かどうか不明である。
ただAが善意であれば、仮装譲渡者Cは、Aに所有権を対抗できないのであるから、「CB間の売買契約が存在しない以上」というのは理由にならない。
本肢の記述は誤りです。

[正解] 3

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【問 3】 Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 甲土地を何らの権原なく不法占有しているCがいる場合、BがCに対して甲土地の所有権を主張して明渡請求をするには、甲土地の所有権移転登記を備えなければならない。

 Bが甲土地の所有権移転登記を備えていない場合には、Aから建物所有目的で甲土地を賃借して甲土地上にD名義の登記ある建物を有するDに対して、Bは自らが甲土地の所有者であることを主張することができない。

 Bが甲土地の所有権移転登記を備えないまま甲土地をEに売却した場合、Eは、甲土地の所有権移転登記なくして、Aに対して甲土地の所有権を主張することができる。

 Bが甲土地の所有権移転登記を備えた後に甲土地につき取得時効が完成したFは、甲土地の所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。

(令和元年問1)

 解説&正解 

【1】 [177条の第三者と不法占有者]
不法占有者に対しては、甲土地の買主Bは所有権移転登記を備えなくても、甲土地の所有権を主張して明渡請求をすることができる。本肢の記述は誤りです。

【2】 [土地賃借権の対抗要件]
土地の賃借権は、賃借権そのものの登記がなくても、賃借人が登記建物を所有するときは、土地賃借権を第三者に対抗することができる(借地借家10条)

「甲土地上にD名義の登記ある建物を有する」土地賃借人Dは、すでに土地賃借権の対抗要件を備えているから、「所有権移転登記を備えていない」Bは、甲土地の所有者であることをDに主張することはできない。本肢は正しい記述です。

【3】 [前主と登記]
甲土地が、A→B→Eと順次売却(譲渡)された場合、所有権も順次移転しており、Eは移転登記がなくても、Aに対して甲土地の所有権取得を対抗できる。
AはEの前々主であって、はじめからEとは対抗関係にはないからである。
本肢は正しい記述です。

※ もともとAは、Bに対して登記移転に協力する義務があるので、新所有者Eに「登記がないこと」を主張することは許されない。

【4】 [時効完成前の第三者と登記]
甲地を時効取得したFと、その時効取得前に所有権移転登記を備えたBは、物権変動の当事者であって、そもそも対抗関係にはない
Fは登記がなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張できるのである(あたかも、旧所有者Aに時効取得を主張できるのと同じように)。本肢は正しい記述です。

[正解] 1

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