|更新日 2020.2.22
|公開日 2017.8.30

【問 1】 Aが所有者として登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aと売買契約を締結したBが、平穏かつ公然と甲土地の占有を始め、善意無過失であれば、甲土地がAの土地ではなく第三者の土地であったとしても、Bは即時に所有権を取得することができる。

 Aと売買契約を締結したCが、登記を信頼して売買契約を行った場合、甲土地がAの土地ではなく第三者Dの土地であったとしても、Dの過失の有無にかかわらず、Cは所有権を取得することができる。

 Aと売買契約を締結して所有権を取得したEは、所有権の移転登記を備えていない場合であっても、正当な権原なく甲土地を占有しているFに対し、所有権を主張して甲土地の明渡しを請求することができる。

 Aを所有者とする甲土地につき、AがGとの間で10月1日に、Hとの間で10月10日に、それぞれ売買契約を締結した場合、G、H共に登記を備えていないときには、先に売買契約を締結したGがHに対して所有権を主張することができる。

(平成19年問3)

 解説&正解 

【1】 [不動産の即時取得]
動産の取引行為によって、平穏・公然・善意・無過失に動産の占有を始めた者は、即時に所有権を取得できるが(即時取得)、不動産については即時取得の適用はない。
善意・無過失のBが、平穏かつ公然と甲土地の占有を始めても、即時に所有権を取得することはできないのである。。
本肢の記述は誤りです。

【2】 [登記の公信力]
Cが「登記を信頼」して、甲土地がA所有であると信じて売買契約を行っても、所有権を取得することはできない。「第三者Dの過失の有無」には関係がない。
本肢の記述は誤りです。

※ 「物権の存在を推測させるような登記を信頼して取引した者は、その登記が真実の権利関係を反映しない虚偽のものであっても保護される」という公信の原則は、土地建物などの不動産取引には適用されない。
登記に公信力はない(登記を信じてもそれだけでは保護されない)のである。

【3】 [不法占有者]
正当な権原なく占有している不法占有者Fに対しては、真実の権利者Eは、登記がなくても自らの所有権を主張して甲土地の明渡しを請求することができる。

不法占有者不動産に対する侵害者であって取引の当事者ではないから、はじめから「登記により物権変動を対抗する」という177条の対抗問題にはならないのである。
本肢は正しい記述です。

【4】 [二重譲渡と登記]
典型的な二重譲渡の問題で、基本中の基本です。
A所有の甲土地が、①A→G、②A→Hと二重譲渡され、互いに対抗関係に立つ場合には177条の原則(早く登記をした方が権利を取得する)により、先に登記を備えた者が完全に所有権を取得する。
したがって、Gが先に売買契約を締結しても「登記を備えていない」以上、Hに対して所有権を主張することはできない。
本肢の記述は誤りです。

※ 二重譲渡の場合、権利の優劣は登記の先後で決まるから、どちらか先に登記を備えた者が完全に権利を取得する
もし、どちらも登記を備えていないときは両者の地位に優劣はなく、どちらからも権利を主張できない。

とにかく早く登記をした者が優先して権利を取得するというのが、177条の趣旨である。権利の変動があった以上、この変動を迅速に公示(登記)して取引の安全を図るべきであって、これを放置した者は不利益を受けてもやむをえないのである。

[正解] 3

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【問 2】 所有権がAからBに移転している旨が登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 CはBとの間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、甲土地の真の所有者はAであって、Bが各種の書類を偽造して自らに登記を移していた場合、Aは所有者であることをCに対して主張できる。

 DはBとの間で売買契約を締結したが、AB間の所有権移転登記はAとBが通じてした仮装の売買契約に基づくものであった場合、DがAB間の売買契約が仮装であることを知らず、知らないことに無過失であっても、Dが所有権移転登記を備えていなければ、Aは所有者であることをDに対して主張できる。

 EはBとの間で売買契約を締結したが、BE間の売買契約締結の前にAがBの債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除していた場合、Aが解除した旨の登記をしたか否かにかかわらず、Aは所有者であることをEに対して主張できる。

 FはBとの間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、その後AはBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合、FがBによる強迫を知っていたときに限り、Aは所有者であることをFに対して主張できる。

(平成20年問2)

 解説&正解 

【1】 [実質的無権利者]
「各種の書類を偽造」した売主Bは、登記名義があってもはじめから無権利者であるから、登記に公信力がない以上、買主CがBから所有権を取得することはできない。
Cの「所有権移転登記」は虚偽の登記であり、真の所有者Aは「所有者であることをCに対して主張できる」のである。
本肢は正しい記述です。

【2】 [虚偽表示と登記]
A→Bの所有権移転登記は、虚偽表示によるものであり無効である。
虚偽表示の無効は善意の第三者には対抗できないから、善意・無過失の第三者Dは登記を備えていなくても保護されるため、Aは所有者であることをDに主張することはできない。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [解除後の第三者と登記]
売買契約の解除後に第三者が登場した場合には、
① 解除によるB→Aへの所有権復帰と、
② 解除後の売買によるB→Eへの所有権移転とは、
二重譲渡と同様の関係が成立し、権利取得の優劣は登記で決定される

Bの債務不履行を理由にAが契約を解除して所有権が復帰しても、その登記をしなければ、解除後に売買した第三者Eに対して所有者であることを主張できない。
Aが所有権を主張できるかどうかは、「解除した旨の登記をしたか否か」にかかわっているのである。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [強迫による取消と登記]
強迫による契約の取消しは、善意・無過失の第三者にも対抗できる
つまり、第三者Fが、Bの強迫について善意・無過失であっても、Aは所有者であることをFに主張できるから、第三者Fが「強迫を知っていたときに限り、……主張できる」わけではないのである。
本肢の記述は誤りです。

[正解] 1

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【問 3】 A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 甲土地につき、時効により所有権を取得したBは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができない。

 甲土地の賃借人であるDが、甲土地上に登記ある建物を有する場合に、Aから甲土地を購入したEは、所有権移転登記を備えていないときであっても、Dに対して、自らが賃貸人であることを主張することができる。

 Aが甲土地をFとGとに対して二重に譲渡してFが所有権移転登記を備えた場合に、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できれば、Gは、登記がなくても、Fに対して自らが所有者であることを主張することができる。

 Aが甲土地をHとIとに対して二重に譲渡した場合において、Hが所有権移転登記を備えない間にIが甲土地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えたときは、Iがいわゆる背信的悪意者であっても、Hは、Jに対して自らが所有者であることを主張することができない。

(平成24年問6)

 解説&正解 

【1】 [時効完成前の第三者と登記]
甲地を時効取得したBは、その時効完成前にAから甲地を購入し移転登記を備えたCに対しては、登記がなくても所有権取得を主張することができる。
時効完成前に甲地を購入したCと、時効取得したBは、物権変動の当事者であって、はじめから対抗関係にはないのである。
本肢の記述は誤りです。

【2】 [土地賃借権の対抗要件]
土地の賃借権は、賃借人が登記ある建物を所有するときは、これをもって土地賃借権を第三者に対抗することができる(借地借家10条)

賃借地上に登記建物を有する土地賃借人Dは、土地賃借権の対抗要件を備えているから、「所有権移転登記を備えていない」Eは、Dに土地所有権を対抗できず、賃貸人であることを主張することもできない。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [二重譲渡と登記]
二重譲渡があった場合、その権利関係の優劣は登記の先後によって決定される。したがって、先に登記を備えたFが完全に甲土地の所有権を取得する。

売買契約の時期によっては権利関係の優劣は決定されないから、Gの契約が「先になされたこと」を立証しても、登記のないGは自らが所有者であることを主張することはできない。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [背信的悪意者からの転得者]
判例(最判平8.10.29)は、背信的悪意者からの転得者自身が背信的悪意でない限りは、177条の「第三者」に含まれるとしている。
したがって、未登記のHは、善意の転得者Jに対して、自らが所有者であることを主張することはできない。
本肢は正しい記述です。

[正解] 4

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