|公開日 2020.05.19

【問 1】 Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金 1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。この場合の相殺に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 BがAに対して同年12月31日を支払期日とする貸金債権を有している場合には、Bは同年12月1日に売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。

 同年11月1日にAの売買代金債権がAの債権者Cにより差し押さえられても、Bは、同年11月2日から12月1日までの間にAに対する別の債権を取得した場合には、同年12月1日に売買代金債務と当該債権を対当額で相殺することができる。

 同年10月10日、BがAの自動車事故によって被害を受け、Aに対して不法行為に基づく損害賠償債権を取得した場合には、Bは売買代金債務と当該損害賠償債権を対当額で相殺することができる。

 BがAに対し同年9月30日に消滅時効の期限が到来する貸金債権を有していた場合には、Aが当該消滅時効を援用したとしても、Bは売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。

(平成30年問9)

 解説&正解 

長文の問題ですが、内容は過去に出題されてきた基本的な事項ばかりです。過去問練習をしていれば正解できる問題です。

【1】 [自働債権の弁済期]
相殺をしかけるBの貸金債権(自働債権)の債務者であるAは、弁済期(12/31)までは支払う必要がないという期限の利益を有している。
したがって「弁済期が到来していない」貸金債権を自働債権とする相殺は、債務者の有する期限の利益を一方的に奪うこととなり妥当でないので、Bの貸金債権(Aの債務)必ず弁済期が到来していなければならない。
Bの貸金債権の弁済期は「12月31日」だから、「12月1日」に相殺することはできない。本肢の記述は誤りです。

【2】 [差押え後の自働債権]
相殺に用いる自働債権が、受働債権の差押え後に取得された場合には、相殺することはできない。
受働債権であるAの「売買代金債権」が11/1に差し押さえられた後に、11/2から12/1の間にBの「別の債権」(自働債権)が取得されているので、Bは、12/1に売買代金債務と「別の債権」とを相殺することはできないのである。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [不法行為債権による相殺]
被害者Bは、不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権として、自己の売買代金債務と相殺することができる。
「不法行為者」Aの方から、被害者Bが有する損害賠償請求権を受働債権とする相殺が許されないのは、被害者に現実の救済を保障するためだから、本肢のように「被害者」の方から相殺をして決済することを望んでいれば、これを認めても支障はない。
本肢は正しい記述です。

【4】 [相殺適状にない自働債権]
時効消滅にかかった自働債権も、その消滅前に相殺適状(相殺に適した状態)にあった場合には、その自働債権で相殺することができる。
しかし、Bの貸金債権(自働債権)は、9/30に消滅時効の期限が到来し、Aは消滅時効を援用している。
したがって、Aの売買代金債権が成立した10/1時点では、Bは貸金債権を有しておらず、双方の債権は相殺適状にはなく、Bは売買代金債務と貸金債権とを相殺することはできない。
本肢の記述は誤りです。

[正解] 3

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