|更新日 2020.5.22
|公開日 2017.5.10

【問 1】 所有権及びそれ以外の財産権の取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 土地の賃借権は、物権ではなく、契約に基づく債権であるので、土地の継続的な用益という外形的かつ客観的事実が存在したとしても、時効によって取得することはできない。

 自己の所有と信じて占有している土地の一部に、隣接する他人の土地の筆の一部が含まれていても、他の要件を満たせば、当該他人の土地の一部の所有権を時効によって取得することができる。

 時効期間は、時効の基礎たる事実が開始された時を起算点としなければならず、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。

 通行地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
(平成22年問3)

 解説&正解 
【1】 [不動産賃借権の時効取得]
判例は、債権である「不動産賃借権」の時効取得を積極的に認めている。
「占有」という点で地上権などと区別する必要がないからである。
したがって、①「土地の継続的な用益という外形的事実」が存在し、かつ、②それが賃借の意思に基づくことが「客観的に表現」されているときは、土地賃借権を時効により取得することができる。
本肢の記述は誤りです。

【2】 [一筆の土地の一部の時効取得]
土地の個数は、登記簿上の記載によって決定され、登記簿上「1個の物」とされている土地は一筆の土地とされる。
判例は、一筆の土地の一部は、分筆の手続がなされていなくても、その部分が当事者間において「具体的に特定」されていれば、時効による所有権取得が認められるとしている。
本肢は正しい記述です。

【3】 [時効の起算点]
記述のとおり。時効期間は、時効の基礎たる事実の開始時を起算点としなければならず、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。
本肢は正しい記述です。

【4】 [通行地役権の時効取得]
条文(283条)どおりで正しい。
通行地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
本肢は正しい記述です。

[正解] 1

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【問 2】 Aが有する権利の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aが有する所有権は、取得のときから20年間行使しなかった場合、時効により消滅する。

 AのBに対する債権を被担保債権として、AがB所有の土地に抵当権を有している場合、被担保債権が時効により消滅するか否かにかかわらず、設定時から10年が経過すれば、抵当権はBに対しては時効により消滅する。

 AのCに対する債権が、CのAに対する債権と相殺できる状態であったにもかかわらず、Aが相殺することなく放置していたためにAのCに対する債権が時効により消滅した場合、Aは相殺することはできない。

 AのDに対する債権について、Dが消滅時効の完成後にAに対して債務を承認した場合には、Dが時効完成の事実を知らなかったとしても、Dは完成した消滅時効を援用することはできない。
(平成17年問4)

 解説&正解 
【1】 [所有権は時効消滅しない]
所有権は、消滅時効にかからない。
時効消滅する権利は、①債権と、②(債権・所有権)以外の財産権である。
本肢の記述は誤りです。

【2】 [抵当権の消滅時効]
抵当権は、債権を担保するために設定されるから、原則としてその債権から独立して抵当権だけが単独で時効消滅することはない(抵当権の付従性)

被担保債権が時効消滅すれば、それを担保する抵当権も当然に消滅し、被担保債権が時効の更新などにより10年以上存続すれば、抵当権も設定時から10年以上経過してもそのまま存続し、時効消滅することはない。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [時効消滅した債権による相殺]
Aの自働債権がすでに時効消滅していた場合でも、消滅以前に、Cの債権と相殺できる相殺適状にあったときは、Aは自働債権で相殺することができる。
相殺適状にあるときは、両当事者は当然に清算されたように考えているのが通常だから、この期待を保護したのである。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [時効完成後の債務承認]
時効完成後に債務を承認した場合には「時効完成の事実を知らなかった」としても、以後、完成した消滅時効を援用することはできない(最判昭41.4.20)

時効完成後に債務を承認すれば、相手方も債務者はもはや時効を援用しないという期待を抱くから、信義則上この期待を保護したのである。
本肢は正しい記述です。

[正解] 4

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【問 3】 Aは、Bに対し建物を賃貸し、月額10万円の賃料債権を有している。この賃料債権の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Aが、Bに対する賃料債権につき支払督促の申立てをし、さらに期間内に適法に仮執行の宣言の申立てをしたときは、時効の完成猶予および更新が生じる。

 Bが、Aとの建物賃貸借契約締結時に、賃料債権につき消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定したとしても、その約定に法的効力は認められない。

 Aが、Bに対する賃料債権につき内容証明郵便により支払を請求したときは、その請求により時効の完成が猶予される。

 Bが、賃料債権の消滅時効が完成した後にその賃料債権を承認したときは、消滅時効の完成を知らなかったときでも、その完成した消滅時効の援用をすることは許されない。
(平成21年問3)

 解説&正解 
【1】 [支払督促]
「支払督促」は、請求の一態様として時効の完成猶予事由である。
その手続として、法定期間内に「仮執行の宣言の申立て」をしたときには、時効の完成は猶予され、新たに時効が進行して更新されることになる。
本肢は正しい記述です。

【2】 [時効利益の放棄]
建物賃貸借「契約締結時」に、つまり時効完成前に、あらかじめ「時効の利益」を放棄することは許されない。
悪質な債権者によって濫用されることを防止するためである。
「消滅時効の利益はあらかじめ放棄する」旨約定しても無効である。
本肢は正しい記述です。

【3】 [催告]
「内容証明郵便」とか書留郵便でする裁判外の請求を「催告」という。
催告しても、その後6ヵ月以内に、さらに強力な「裁判上の請求(訴訟の提起)」等をしなければ、時効の完成猶予の効力は生じない。本肢の記述は誤りです。

【4】 [時効完成後の債務承認]
過去に何度も出題された問題。
債務者Bが、消滅時効が完成した賃料債権を承認したときは「消滅時効の完成を知らなかったとき」でも、賃料債権の消滅時効を援用することはできない。
本肢は正しい記述です。

[正解] 3

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