|更新日 2019.7.11
|公開日 2017.5.10

【問 1】 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、婚姻していない未成年者が土地を売却するに当たっては、その法定代理人の同意は必要ない。

 成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却するためには、家庭裁判所の許可が必要である。

 被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。

 被補助人が法律行為を行うためには、常に補助人の同意が必要である。

(平成22年 問1)


 解説&正解 

本問は基本中の基本問題ですから、必ず正解する必要があります。

 誤り [未成年者の行為能力]
未成年者が法律行為をするには、保護者である法定代理人の同意を得なければならない。
これが原則

ただし例外として、「単に権利を得、または義務を免れる法律行為」については、同意を得ずに単独ですることができる。
このような行為は未成年者には不利益とはならないので、一人でやらせても問題はないのである。

本肢では「土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになる」とあるから、あたかも例外行為の「義務を免れる法律行為」に該当するように思われる。
たしかに土地を売却すると「土地の管理義務を免れることになる」。しかし同時に、重要な土地所有権を失うことにもなるのだから、単純に「義務を免れる法律行為」とはいえない。
婚姻していない未成年者が「土地を売却」するなど法律行為をするには、その法定代理人の同意が必要である。

 正しい [成年被後見人の居住用不動産の処分]
成年後見人が、成年被後見人に代わって、その居住建物または敷地について、売却や賃貸をしたり、抵当権の設定などの処分をするには、家庭裁判所の許可が必要である。
これは、成年後見人が勝手なことをして、成年被後見人の居住の利益が侵害されないようにするためなのである。

 誤り [保佐人の同意を要する行為]
被保佐人が「不動産を売却する」など一定の行為をする場合には、原則として保佐人の同意が必要である。
ただし成年被後見人と同じく例外的に、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、保佐人の同意は不要で、単独ですることができる。

 誤り [補助人の同意を要す旨の審判]
被補助人が法律行為を行うためには「常に補助人の同意が必要」とされるわけではない。
同意が必要なのは、家庭裁判所の審判で決まる「特定の法律行為のみ」である。

[正解] 2

…………………………………………………………

【問 2】 意思無能力者又は制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合、その親族が当該意思表示を取り消せば、取消しの時点から将来に向かって無効となる。

 未成年者が土地を売却する意思表示を行った場合、その未成年者が婚姻をしていても、親権者が当該意思表示を取り消せば、意思表示の時点にさかのぼって無効となる。

 成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。

 被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。

(平成15年 問1)


 解説&正解 

 誤り [意思無能力者の意思表示]
意思能力を欠いている者の行った意思表示は、取り消さなくても、はじめから無効であり、法律上の効力を生じない。取り消してから無効となるのではない。

意思能力というのは、行為の結果を判断できる能力(契約の意味内容を理解できるだけの判断能力)のことであって、人が意思表示により権利を取得し義務を負担する(所有者となったり、債権者・債務者となる)のは、その意思表示が正常な判断能力に基づくからである。

泥酔状態や高度の認知症にあるような意思無能力者の行った意思表示は、正常な判断能力に基づくものとはいえず、その意思表示に法律上の効果を与えることはできない、つまり無効なのである。

 誤り [未成年者が婚姻したら]
未成年者が婚姻したときは、これによって成年に達したものとみなされ、以後、行為能力者として扱われる(成年擬制)。
つまり、婚姻した未成年者が自分1人の判断で行った意思表示も完全に有効であり、親権者(法定代理人)の同意がないことを理由に、その意思表示を取り消すことはできない。

※ 未成年者も婚姻して家庭をもてば、法律的・経済的に独立させることが適切だからである。なお、未成年中に離婚しても、成年擬制に変わりはない。

 正しい [成年被後見人の行為能力]
成年被後見人の意思表示は、たとえ「成年後見人の事前の同意を得て」いても、常に取り消すことができる。
成年被後見人は、精神上の障害により日常的に判断能力を欠く状態にあるから、たとえ事前に同意を与えても、単独で行為をさせること自体が、本人保護にはならないのである。

※ ただし「日用品の購入その他日常生活に関する行為」については、例外的に自分1人の単独意思ですることができる。成年被後見人であることを理由に取り消すことはできない。

 誤り [被保佐人の行為能力]
被保佐人は、意思能力が著しく不十分であるため、不動産その他重要な財産の取引行為をするには、必ず保佐人の同意(または同意に代わる家庭裁判所の許可)が必要とされる。
同意または許可を得ないでした行為は取り消すことができる。

本肢のように、被保佐人が「保佐人の事前の同意を得て」土地売却の意思表示を行ったのであれば、この意思表示は有効であり、もはや取り消すことはできない。

[正解] 3

 ワンランク・アップ 

1 意思能力
意思能力というのは、契約の意味内容が理解できるだけの判断能力をいいます。
私たちが、いろんな契約をして具体的に権利を取得したり義務を負担するのは、その意思表示・契約が十分な判断能力に基づいて行われたからなのです。
しかし、たとえば幼児とか重度の認知症の人などは、この判断能力がゼロの状態(意思無能力の状態)にあるため、たとえ契約がなされたとしても正常な判断能力に基づいたとはいえないために、法律上の強制力を与える(有効とする)ことはできないのです。
民法は、この意思能力のことを「事理を弁識する能力」(7条、11条、15条)といっています。

意思能力の程度は次のようになります。
・意思無能力者=意思能力を欠く
・成年被後見人=意思能力を欠く常況にある
・被保佐人  =意思能力が著しく不十分
・被補助人  =意思能力が不十分

2 無効の意味
無効というのは、契約が成立しても法律上何の効果も強制力も発生しないということです。たとえば、売買契約が無効であるというときは、契約の効果である売買代金請求権も目的物の引渡請求権も一切発生せず、相手方にこれらを請求する法的な強制力はありません。これらの権利を行使するには、契約が有効であることが大前提なのです。

無効には、
1 意思無能力の場合のように、はじめから無効である場合と、
2 制限行為能力や詐欺・強迫などの場合のように、取消しの意思表示をしてはじめて無効になる場合があります。

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【問 3】 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 古着の仕入販売に関する営業を許された未成年者は、成年者と同一の行為能力を有するので、法定代理人の同意を得ないで、自己が居住するために建物を第三者から購入したとしても、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができない。

 被保佐人が、不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。

 成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却する際、後見監督人がいる場合には、後見監督人の許可があれば足り、家庭裁判所の許可は不要である。

 被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていないにもかかわらず、詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。

(平成28年 問2)


 解説&正解 

 誤り [未成年者の営業の許可]
「古着の仕入販売に関する営業」を許された未成年者は、古着の仕入販売に関しては成年者と同一の行為能力を有するが、自己居住用に建物を購入する行為はこの営業には該当しないため単独ではできず、したがって法定代理人はその売買契約を取り消すことができる。

 誤り [保佐人の同意を要する行為]
被保佐人が「不動産を売却する」など重要な財産行為をする場合には単独ではできず、保佐人の同意が必要である。
同じように「贈与の申し出を拒絶する」場合にも単独ではできず、やはり保佐人の同意が必要とされている。

 誤り [居住用建物の売却等の許可]
成年後見人が、成年被後見人の居住建物を売却する場合には、必ず家庭裁判所の許可を得なければならない。
生活の本拠となる建物の処分行為について家庭裁判所の監督を強めたのである。

 正しい [制限行為能力者の詐術]
制限行為能力者が行為能力者であると信じさせるために詐術を用いたときは、取消権を失い、もはやその行為を取り消すことができない。
詐術を用いて相手方を欺くような制限行為能力者よりも、行為能力者だと信じた相手方を保護する必要があるからだ。

[正解] 4


(この項終わり)