|更新日 2019.7.13
|公開日 2017.5.11

【問 1】 建物の賃貸借契約における賃借人Aに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Aが、建物賃借中に建物の修繕のため必要費を支出した場合、Aは、その必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。

 Aの債務不履行により建物の賃貸借契約が解除された後に、Aが建物の修繕のため必要費を支出した場合、Aは、その必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。

 Aは、留置権に基づき建物の返還を拒否している場合に、当該建物に引き続き居住したとき、それによる利益(賃料相当額)は返還しなければならない。

 Aは、留置権に基づき建物の返還を拒否している場合に、さらに当該建物の修繕のため必要費を支出したとき、その必要費のためにも留置権を行使できる。

(平成9年 問3)


 解説&正解 

 正しい [必要費と留置権の行使]
建物の賃借人Aは、必要費の償還を受けるまで、留置権に基づいて建物の返還を拒むことができる。

留置権は、他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有するときに、債権の弁済を受けるまで、その占有物を留置できる担保物権だが、建物修繕のための必要費は、まさにその物に関して生じた債権にほかならない。

※ 留置権の例としては、修理店はパソコンの修理代を払ってもらうまでパソコンを留置できるというのが適例。

 誤り [契約解除後の必要費]
債務不履行により賃貸借契約を解除され、その結果、賃借建物を占有すべき権利がない賃借人Aが、必要費を支出しても、留置権に基づき建物の返還を拒否することはできない。
占有が不法行為による場合には、留置権は認められないのである。

※ 本肢のような悪意の占有者には留置権がないのであって、必要費の償還請求権そのものが認められないというのではない。

 正しい [継続使用は不当利得か]
賃借人Aは、留置権を行使していても、引き続き建物に居住することによって得られた賃料相当額の利益は、不当利得として返還しなければならない。

 正しい [留置中の必要費]
留置権に基づいて建物の返還を拒否している場合に、さらに建物の修繕のため必要費を支出したときは、その必要費のためにも留置権を行使できる。

[正解] 2

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【問 2】 留置権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て建物に付加した造作の買取請求をした場合、賃借人は、造作買取代金の支払を受けるまで、当該建物を留置することができる。

 不動産が二重に売買され、第2の買主が先に所有権移転登記を備えたため、第1の買主が所有権を取得できなくなった場合、第1の買主は、損害賠償を受けるまで当該不動産を留置することができる。

 建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除された後に、賃借人が建物に関して有益費を支出した場合、賃借人は、有益費の償還を受けるまで当該建物を留置することができる。

 建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合、賃借人は、建物所有者ではない第三者が所有する敷地を留置することはできない。

(平成25年 問4)


 解説&正解 

 誤り [留置権の成立要件]
留置権は「他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有するとき」に成立する。

判例(最判昭29.1.14)は、「建物に付加した造作」の造作代金債権は「造作」に関して生じた債権であり、「建物」に関して生じた債権ではないから、建物についての留置権は認められず建物を留置することはできないとしている。

 誤り [二重譲渡と留置権]
問題は、二重譲渡のために不動産所有権を取得できなくなった第1の買主が、売主の履行不能による損害賠償請求権に基づいて留置権を行使できるか、というもの。
判例は、このような債権(損害賠償請求権)は「その物自体(不動産)に関し生じた債権とはいえない」として留置権を認めていない(最判昭43.11.21)

※ 事例は、第2の買主の明渡請求に対して、第1の買主が売主の売買契約不履行に基づく損害賠償債権をもって、留置権を主張することができるかというもの。

 誤り [契約解除後の有益費]
建物の賃借人は、債務不履行により賃貸借契約が解除されれば、建物を占有すべき権限のない不法占有者である。
不法占有者が「有益費」を支出しても、その償還請求権に基づいて建物に留置権を行使することはできない。

 正しい [留置権の成立要件]
留置権は、他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有するときに、その債権の弁済を受けるまで、その占有物を留置する権利である。
建物賃借人が支出した必要費は「建物」に関して生じた債権であって、「第三者が所有する敷地」に関して生じた債権ではない。
したがって、賃借人は、第三者が所有する敷地を留置することはできない。

[正解] 4

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【問 3】 Aが、Bに賃貸している建物の賃料債権の先取特権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Aは、賃貸した建物内にあるB所有の家具類だけでなく、Bが自己使用のため建物内に持ち込んだB所有の時計や宝石類に対しても、先取特権を有する。

 Bが、建物をCに転貸したときには、Aは、Cが建物内に所有する動産に対しても、先取特権を有する。

 Bがその建物内のB所有の動産をDに売却したときは、Aは、その代金債権に対して、払渡し前に差押えをしないで、先取特権を行使することができる。

 AがBから敷金を預かっている場合には、Aは、賃料債権の額から敷金を差し引いた残額の部分についてのみ先取特権を有する。

(平成12年 問3)


 解説&正解 

 正しい [不動産賃貸の先取特権]
建物の賃貸人は、その賃料債権について、賃借人が建物に備えつけた動産の上に先取特権を有する。
この動産の範囲は、①賃借人所有の家具類などに限定されず、②賃借人やその家族の時計・宝石類・金銭・有価証券など、広く個人的所持品も含まれる。

 正しい [転貸したときは?]
建物が転貸された場合、賃貸人Aの先取特権は、転借人Cの動産にも及ぶ。
賃借人の備えつけた動産が、そのまま転借人に譲渡されることが多く、そのために先取特権が行使できなくなることを防ぐためなのである。

 誤り [物上代位と差押えの要件]
賃貸人が物上代位によって、賃借人Bが売却したDへの動産の代金債権に対して先取特権を行使するためには、必ずその売却代金がBに支払われる前に差押えをしなければならない。
売却代金が支払われてBの一般財産に混入する前に、つまり、払渡し前に差し押さえることが、絶対に必要なのである。

 正しい [敷金と先取特権の及ぶ範囲]
賃貸人が敷金を受け取っている場合には、賃料債権の額から敷金を差し引いた残額(敷金で弁済を受けられない部分)についてのみ、先取特権を有する。
賃貸人の先取特権は、賃料債権の全額について行使できるのが原則だが(担保物権の不可分性)、敷金がある場合は例外とされている。

[正解] 3


(この項終わり)