|更新日 2020.8.14
|公開日 2017.6.09

【問 1】 Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 BがAから所有権移転登記を受けていた場合でも、Aは、Bに対して、AB間の契約の無効を主張することができる。

 Cが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受けた場合は、所有権移転登記を受けていないときでも、Cは、Aに対して、その所有権を主張することができる。

 DがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Dは、Bに対して、その所有権を主張することができる。

 Eが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受け、所有権移転登記を受けていない場合で、Aがこの土地をFに譲渡したとき、Eは、Fに対して、その所有権を主張することができる。
(平成12年問4)

 解説&正解 
「Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした」というのは虚偽表示のことです。「通謀」「仮装譲渡」とあったら虚偽表示ですからね。

【1】 [虚偽表示が無効とは?]
AB間の仮装譲渡は 虚偽表示によるものであるから無効であり、当事者間では効力を生じない。
つまり、はじめから土地の所有権はAにあったということであり、Aはいつでも、虚偽表示を理由に契約の無効を主張して、無効登記の抹消を請求することができる。

Bが「Aから所有権移転登記を受けていた」としても、これは真実の権利関係を反映しない虚偽の登記であるから、何の効力もない。
本肢は正しい記述です。

【2】 [善意の第三者は登記が必要か]
善意の第三者Cは「所有権移転登記を受けていないとき」でも、Aに対して所有権を主張することができる。
虚偽表示の無効は『善意の第三者に対抗することができない』という94条2項の趣旨は、AB間の仮装譲渡契約は、善意の第三者Cとの関係では有効なものとして扱うということであるから、所有権はA→B→Cに有効に移転しており、したがって第三者Cは登記がなくても完全に所有権を取得する。
本肢は正しい記述です。

【3】 [虚偽表示当事者と第三者]
Aからの譲受人Dは、「所有権移転登記を受けていないとき」でも、Bに対して所有権を主張することができる。
判例は、虚偽表示の当事者A・Bは、第三者Dが取得した権利について、その登記がないことを主張できないとしている。

そもそも不動産について自分が権利者であることを「第三者」に主張するためには、その登記が必要であるが、Bは、虚偽表示による仮装譲受人だから実質的には無権利者である。
無権利者に対しては、譲受人Dはたとえ登記がなくても所有権を主張できる。
本肢は正しい記述です。

【4】 [虚偽表示と二重譲渡]
仮装譲受人Bから譲り受け、94条2項で保護される善意・無過失の第三者Eと、Aから譲り受けた第三者Fは、A所有地について二重譲渡の関係に立ち、互いに対抗関係にある
民法では「同じ不動産について、ともに権利を主張して対抗関係にある者同士では、先に登記を備えた方が完全に権利を取得する」(177条)というのが大原則で、先に登記を備えた方が優先する。

したがって、Eはたとえ善意・無過失でAに対する関係では所有権を取得しても、「所有権移転登記を受けていない」以上、第三者Fに対しては所有権を主張することはできないのである。
本肢の記述は誤りです。

※ 善意・無過失のEは94条2項で保護されるので、登記がなくても「Aに対して」は所有権を主張できるが、「第三者Fに対して」は177条の対抗問題となり、登記がなければFに対抗できない。

[正解] 4

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【問 2】 Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とする。

 善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

 善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

 Bの債権者である善意のCが、甲土地を差し押さえた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

 甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。
(平成27年問2)

 解説&正解 
【1】 [善意の第三者は登記が必要か]
AとBの通謀による甲土地の仮装売買契約は虚偽表示だから、契約は無効である。
虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗できない、つまり「善意の第三者との関係では有効なものとして扱う」ということである。

善意のCとの関係では、所有権はA→B→Cへと有効に移転しており、Cは登記がなくても完全に所有権を取得しているので、Cが「登記を備えていなくても」、AはAB間の売買契約の無効を主張することはできない。
本肢は正しい記述です。

【2】 [第三者の範囲]
[2020.08.14 更新]
判例は、土地の仮装譲受人Bがその土地上に建物を建築して、その建物をCに賃貸した場合、建物賃借人Cは、仮装譲渡された土地については法律上の利害関係を有するものとは認められないとして、第三者にはあたらないとしている(最判昭57.6.8)

土地と建物は、別個の財産であるため、建物賃借人Cの利害は「事実上のものにすぎない」というのがその根拠である。
Aは、AB間の売買契約の無効をCに主張して、Cに対し建物明渡請求をすることができるのである。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [第三者の範囲]
94条2項の第三者とは、虚偽表示の当事者(またはその相続人)以外の者であって、「虚偽表示によって形成された法律関係について新たに利害関係を有するに至った者」をいう。
Bの差押債権者である善意のCは「第三者」に該当するため、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することはできない。
本肢は正しい記述です。

【4】 [善意の転得者]
第三者からの転得者「第三者」に含まれるので、善意であれば「善意の第三者」として保護される。
つまり、Aは、善意の転得者Dに対して、前主Cの善意・悪意に関係なく、所有権を主張することはできないのである。
本肢は正しい記述です。

※ また判例(大判昭6.10.24)は、善意の第三者からの転得者が悪意の場合でも、善意の第三者が介在する以上、善意者の地位を承継するから、虚偽表示による無効を対抗されることはなく保護されるとしている。

[正解] 2

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