|更新日 2019.7.17
|公開日 2017.5.10

【問 1】 Aは、所有する家屋を囲う塀の設置工事を業者Bに請け負わせたが、Bの工事によりこの塀は瑕疵がある状態となった。Aがその後この塀を含む家屋全部をCに賃貸し、Cが占有使用しているときに、この瑕疵により塀が崩れ、脇に駐車中のD所有の車を破損させた。A、B及びCは、この瑕疵があることを過失なく知らない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 Aは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

 Bは、瑕疵を作り出したことに故意又は過失がなければ、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

 Cは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

 Dが、車の破損による損害賠償請求権を、損害及び加害者を知った時から3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する。

(平成17年 問11)


 解説&正解 

 誤り [所有者の不法行為責任]
家屋の所有者Aは「損害の発生を防止するのに必要な注意」をしていたときでも、被害者Dに対して損害賠償責任を負うことがある。

土地工作物による不法行為責任については、
・第1次的に工作物の占有者が責任を負うが、損害の発生防止のため必要な注意をして免責されるときは、
・最終的に所有者が責任を負う。

所有者には免責事由が認められていないので、注意を怠らなかったことを立証しても免責されない。土地工作物自体のもつ危険性がその根拠とされる。

※ なお、所有者の責任は絶対的な責任ではないから、不可抗力による場合には責任を負わない。

 正しい [不法行為責任の成立要件]
塀の瑕疵について、請負人Bに故意または過失がなければ、そもそも不法行為が成立しないから、被害者Dに対して損害賠償責任を負うことはない。

 正しい [占有者の不法行為責任]
建物の占有者Cは「損害の発生を防止するのに必要な注意」をしていたのであれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

土地工作物の設置・保存の瑕疵により他人に損害を与えたときは、第1次的に工作物の占有者が責任を負うが、損害の発生防止のため必要な注意をしたときには、免責される。

 正しい [不法行為による損害賠償請求権の消滅時効]
不法行為による損害賠償請求権は、被害者Dが、損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき、時効消滅する。

[正解] 1

…………………………………………………………

【問 2】 甲建物の占有者である(所有者ではない。)Aは、甲建物の壁が今にも剥(はく)離しそうであると分かっていたのに、甲建物の所有者に通知せず、そのまま放置するなど、損害発生の防止のため法律上要求される注意を行わなかった。そのために、壁が剥離して通行人Bが死亡した。この場合、Bの相続人からの不法行為に基づく損害賠償請求に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Bが即死した場合、B本人の損害賠償請求権は観念できず、その請求権の相続による相続人への承継はない。

 Bに配偶者と子がいた場合は、その配偶者と子は、Bの死亡による自己の精神上の苦痛に関し、自己の権利として損害賠償請求権を有する。

 Bの相続人は、Aに対しては損害賠償請求ができるが、甲建物の所有者に対しては、損害賠償請求ができない。

 壁の剥離につき、壁の施工業者にも一部責任がある場合には、Aは、その施工業者に対して求償権を行使することができる。

(平成13年 問10)


 解説&正解 

 誤り [死者自身の損害賠償請求権]
判例は、即死の場合でも、財産的損害・精神的損害について、まず被害者(死者)自身に損害賠償請求権が発生し、それが相続人に承継されるとしている。

 正しい [近親者の慰謝料請求権]
生命を侵害された被害者Bと一定の身分関係にある者(配偶者・子・父母)は、Bの取得する慰謝料請求権とは別に、Bの死亡による自己の精神上の苦痛について、自己の権利として固有の慰謝料請求権を取得する。

 正しい [占有者の不法行為責任]
建物の占有者Aは「損害発生の防止のため法律上要求される注意」をしなかったのだから、不法行為が成立し、Bの相続人は、Aに対して損害賠償請求ができる。

この場合、建物所有者に対しては責任を問えない。所有者が責任を負うのは、占有者が必要な注意をして免責されるときである。

 正しい [占有者・所有者の求償権]
壁の施工業者にも一部責任があるなど、瑕疵について占有者・所有者以外に直接の責任者があるときは、損害賠償をした占有者または所有者は、この者に求償することができる。

対外的には占有者・所有者が責任を負い、対内的には求償を行って責任を分担することが公平だからである。

[正解] 1


(この項終わり)