|更新日 2019.7.15
|公開日 2017.5.10

【問 1】 Aが、Bに建物を3,000万円で売却した場合の契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Aが定められた履行期に引渡しをしない場合、Bは、3,000万円の提供をしないで、Aに対して履行の催告をしたうえ契約を解除できる。

 Bが建物の引渡しを受けて入居したが、2ヵ月経過後契約が解除された場合、Bは、Aに建物の返還とともに、2ヵ月分の使用料相当額を支払う必要がある。

 Bが代金を支払った後Aが引渡しをしないうちに、Aの過失で建物が焼失した場合、Bは、Aに対し契約を解除して、代金の返還、その利息の支払い、引渡し不能による損害賠償の各請求をすることができる。

 特約でBに留保された解除権の行使に期間の定めのない場合、Aが、Bに対し相当の期間内に解除するかどうか確答すべき旨を催告し、その期間内に解除の通知を受けなかったとき、Bは、契約を解除できなくなる。

(平成10年 問8)


 解説&正解 

 誤り [弁済の提供と契約解除]
売主Aが「履行期に引渡しをしない」場合でも、買主Bは代金の提供をしなければ、催告をしただけで契約を解除することはできない。
Aには同時履行の抗弁権があるから、履行期に引渡しをしなくても履行遅滞にはない
したがって、Bが契約を解除するには自ら代金を提供して、Aの同時履行の抗弁権を消滅させてAを履行遅滞にしなければならない。

履行の提供のない単なる催告は、Aを履行遅滞にすることはできず、したがって、その催告に基づく解除は効力を生じない。

 正しい [解除と使用利益の返還義務]
契約が解除されれば、双方の債権・債務ははじめにさかのぼって消滅するため、すでになされた履行は法律上の原因を失うから、不当利得として互いにこれを返還する原状回復義務を負うこととなる。

原状回復義務により、履行がなかったと同一の財産状態(原状)を回復させるためには、買主Bには、建物返還とともに、解除までの間に建物を使用したことによる利益(2ヵ月間の使用料相当額)も返還させることが公平といえる
売主Aは、受領した代金に利息をつけて返還することになる。

 正しい [履行不能による契約解除等]
引渡しをしないうちに、売主Aの「過失で建物が焼失した」というのは、Aの建物引渡債務が、Aの責めに帰すべき事由=故意・過失により履行不能になったということである。
この場合、買主Bは、履行不能を理由に契約を解除して、①代金の返還、②受領時からの利息の支払い、③履行不能による損害賠償の各請求をすることができる。

 正しい [催告による解除権の消滅]
買主Bの「解除権の行使に期間の定めのない」場合、売主Aは、Bに対し相当の期間を定めて、契約を解除するかどうか確答せよと催告できる。
この催告期間内にAが解除通知を受けなかったときは、Bの解除権は消滅し、もはや契約を解除することはできない。

※ 解除する旨の通知をしないときは「解除権が消滅する」のであって、契約が「解除されたものとみなされる」のではない。
解除権者は確答しないまま催告を放置したわけだから、その解除権を消滅させて契約を存続させることにより、相手方を保護したのである。

[正解] 1

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【問 2】 Aは、A所有の土地を、Bに対し、1億円で売却する契約を締結し、手付金として1,000万円を受領した。Aは、決済日において、登記及び引渡し等の自己の債務の履行を提供したが、Bが、土地の値下がりを理由に残代金を支払わなかったので、登記及び引渡しはしなかった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 Aは、この売買契約を解除せず、Bに対し、残代金の支払を請求し続けることができる。

 Aは、この売買契約を解除するとともに、Bに対し、売買契約締結後解除されるまでの土地の値下がりによる損害を理由として、賠償請求できる。

 Bが、AB間の売買契約締結後、この土地をCに転売する契約を締結していた場合で、Cがやはり土地の値下がりを理由としてBに代金の支払をしないとき、Bはこれを理由として、AB間の売買契約を解除することはできない。

 Bが、AB間の売買契約締結後、この土地をCに転売する契約を締結していた場合、Aは、AB間の売買契約を解除しても、Cのこの土地を取得する権利を害することはできない。

(平成14年 問8)


 解説&正解 

 正しい [履行請求と契約解除]
買主Bに債務不履行があっても、売主Aは契約を解除せずに、Bに残代金の支払いを請求し続けることができる。
契約を解除するか、引き続き履行の請求をするかは、当事者の自由である。

 正しい [損害賠償の額]
売主Aは、手付金を受領していても、買主Bの債務不履行を理由に契約を解除するとともに、解除までの土地の値下がりによる損害の賠償を請求できる。
この場合の損害賠償の額は、履行期における時価ではなく、解除当時における時価を標準として定められる。
つまり、履行期の時価と解除当時の時価の差額(値下がり分)が、Bの債務不履行により、Aに通常生ずべき損害といえるのである。

 正しい [解除権の発生事由]
契約を解除するには、
① 相手方に債務不履行があるか(法定解除権)、
② 当事者があらかじめ特約によって定めた解除事由が発生しなければならない(約定解除権)。
売主Aは「決済日において、登記及び引渡し等の自己の債務の履行を提供」しており、
債務不履行はない
したがって買主Bは、Cの代金不払いを理由にして契約を解除することはできない。

※ またAは、すでに登記及び引渡し等の自己の債務の履行を提供して「履行に着手」しているから、Bは手付放棄による契約解除もできない。

 誤り [解除前の第三者と登記]
契約を解除しても、解除前にすでに取引関係に立った第三者の権利を害することはできないが、この第三者が保護されるためには、登記などの対抗要件を備えていることが必要である。
BC間では「転売する契約を締結」しているだけで、第三者Cは登記を備えていないから、解除したAは、Cの権利を害することができるのである(自己の所有権を主張できる)。

[正解] 4

 ワンランク・アップ 

[解除の遡及効の制限]
契約が解除されると、その効果として、契約上の債権・債務ははじめにさかのぼって消滅し、契約をしなかった状態に戻ります(解除の遡及効)。
そうすると、解除がある前に権利を取得した第三者も、解除がなされたことにより、はじめから権利を取得しなかったこととなり、まったく責任がないのに権利を失ってしまいます。
そこで民法は、この第三者の権利を保護するために、解除をしても「第三者の権利を害することはできない」と定めて、解除の遡及効を制限しました。
ただし、この第三者が保護されるためには、善意・悪意に関係なく、登記などの対抗要件が必要です。

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【問 3】 売主Aは、買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し、代金の3分の2の支払と引換えに所有権移転登記手続と引渡しを行った。その後、Bが残代金を支払わないので、Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aの解除前に、BがCに甲土地を売却し、BからCに対する所有権移転登記がなされているときは、BのAに対する代金債務につき不履行があることをCが知っていた場合においても、Aは解除に基づく甲土地の所有権をCに対して主張できない。

 Bは、甲土地を現状有姿の状態でAに返還し、かつ、移転登記を抹消すれば、引渡しを受けていた間に甲土地を貸駐車場として収益を上げていたときでも、Aに対してその利益を償還すべき義務はない。

 Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。

 Aは、Bが契約解除後遅滞なく原状回復義務を履行すれば、契約締結後原状回復義務履行時までの間に甲土地の価格が下落して損害を被った場合でも、Bに対して損害賠償を請求することはできない。

(平成21年 問8)


 解説&正解 

 正しい [解除と悪意の第三者]
解除権者Aが契約を解除しても、第三者Cの権利を害することはできない。
契約解除前に、すでにCが甲土地の所有権を取得しその登記を備えていれば、Cが悪意であっても、Aは解除に基づく甲土地の所有権を主張できないのである。

 誤り [使用利益の返還義務]
買主Bは、原状回復義務として「甲土地を現状有姿の状態で返還し、かつ、移転登記を抹消」しても、甲土地の使用利益を返還する義務がある。
売主Aが金銭を返還する場合には、受領時からの利息を付けて返還しなければならないので、これと均衡をとったのである。

 誤り [原状回復義務と同時履行の抗弁権]
契約が解除されると、当事者双方は「互いに原状回復義務を負う」ことになるが、この義務は同時履行の関係に立つ
したがって、Bの債務不履行が原因で契約が解除されても、Bが原状回復義務を「先に履行」する必要はなく、Aの代金返還義務と同時に履行すればよい。

 誤り [解除と損害賠償請求]
解除権者Aは、契約解除後に、Bが「遅滞なく原状回復義務を履行」したとしても、原状回復義務履行時までに損害が発生すれば、Bに対して損害賠償請求をすることができる。「解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない」(545条3項)のである。

[正解] 1

 ワンランク・アップ 

[解除と第三者の善意・悪意]
もともと契約自体に瑕疵がある詐欺や強迫を理由とする取消しと異なって、解除は完全に有効な契約が成立した後の事情で解消されるため、第三者の善意・悪意は問題となりません。
当事者間に債務不履行の事実があるということを第三者が知っていても、何ら責められるような落ち度はないのです。また、債務不履行があるからといって当然に解除されるわけでもありません。結局、第三者の悪意はあまり意味がないのです。

ただ、第三者の善意・悪意が問題とされない代わりに、その第三者が保護されるためには、解除権者よりも先に登記を備える必要があります。
この場合の登記は、解除権者と対抗関係に立つからではなく、保護に値する第三者となるためには、権利者としてなすべきことを全部終えていなければならないという発想なのです。


(この項終わり)