|公開日 2020.02.14

【問 1】 AはBに甲建物を売却し、AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 BがBの債権者Cとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結し、その設定登記をした後、AがAB間の売買契約を適法に解除した場合、Aはその抵当権の消滅をCに主張できない。

 Bが甲建物をDに賃貸し引渡しも終えた後、AがAB間の売買契約を適法に解除した場合、Aはこの賃借権の消滅をDに主張できる。

 BがBの債権者Eとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結したが、その設定登記をする前に、AがAB間の売買契約を適法に解除し、その旨をEに通知した場合、BE間の抵当権設定契約は無効となり、Eの抵当権は消滅する。

 AがAB間の売買契約を適法に解除したが、AからBに対する甲建物の所有権移転登記を抹消する前に、Bが甲建物をFに賃貸し引渡しも終えた場合、Aは、適法な解除後に設定されたこの賃借権の消滅をFに主張できる。
(平成16年問9)

 解説&正解 
【1】 [解除前の第三者|抵当権者]
契約が解除されると、契約ははじめから存在しなかったことになり解除の遡及効、そのため解除以前に権利を取得した第三者も、解除によってその権利を失うことになる
そこで、民法は「第三者の権利を害することはできない」として解除の遡及効を制限して対抗要件を備えた第三者の権利を保護している

売主Aは、契約を解除しても、解除前に抵当権設定登記を備えた第三者Cに対し、解除による抵当権の消滅を主張できない。
本肢は正しい記述です。

【2】 [解除前の第三者|賃借権者]
契約を解除しても、対抗要件を備えた第三者の権利を害することはできない
建物の賃借権は、建物の引渡しによって対抗要件を備えるから、売主Aは、契約を解除しても、解除前に甲建物の「引渡し」を受けた賃借人Dに対し、賃借権の消滅を主張できない。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [解除前の第三者|抵当権者]
債権者Eは抵当権設定登記をしておらず、対抗要件を備えていない。
この場合、売主Aが契約を解除すると、Aへの所有権復帰とEの抵当権とは対抗関係となり、先に登記を備えた者が権利を取得することになる。
Aの解除によって「BE間の抵当権設定契約は無効となり、Eの抵当権は消滅する」ものではないのである。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [解除後の第三者|賃借権者]
売主Aは、契約解除により建物所有権が復帰しても、その登記がなければ、解除後に甲建物の「引渡し」を受けた賃借人Fに対し、賃借権の消滅を主張できない。
解除によって所有権がAに復帰するにしても、解除の時に物権変動が生じ、解除したAと解除後の賃借人Fとは、対抗問題となるのである。
本肢の記述は誤りです。

[正解] 1

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【問 2】 売買契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知りつつ売買契約を締結し、売主が売却した当該目的物の所有権を取得して買主に移転することができない場合には、買主は売買契約の解除はできるが、損害賠償請求はできない。

 売主が、買主の代金不払を理由として売買契約を解除した場合には、売買契約はさかのぼって消滅するので、売主は買主に対して損害賠償請求はできない。

 買主が、抵当権が存在していることを知りつつ不動産の売買契約を締結し、当該抵当権の行使によって買主が所有権を失った場合には、買主は、売買契約の解除はできるが、売主に対して損害賠償請求はできない。

 買主が、売主に対して手付金を支払っていた場合には、売主は、自らが売買契約の履行に着手するまでは、買主が履行に着手していても、手付金の倍額を買主に支払うことによって、売買契約を解除することができる。
(平成17年問9)

 解説&正解 
【1】 [第三者の所有物]
目的物が第三者の所有物であるために、売主が、その所有権を取得して買主に移転することができない場合、その事情を知っていた悪意の買主は、契約の解除はできるが、損害賠償請求はできない。

第三者の所有物であることを知っていたのであれば、所有権が移転できない場合の損害は覚悟すべきなので、損害賠償請求は認められないのである。
本肢は正しい記述です。

【2】 [解除と損害賠償請求]
買主の債務不履行を理由に契約を解除した場合、売主は損害賠償請求ができる。
確かに、契約が解除されると、債権・債務ははじめから存在しなかったことになるため、債務不履行による損害賠償請求権も生じないはずである。

しかし民法は、債務不履行を受けた解除権者を保護するために、解除の遡及効に制限を加え、解除があっても損害賠償請求権を存続させたのである。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [抵当権実行による解除]
抵当不動産の買主は、その善意・悪意に関係なく、抵当権の行使によって所有権を失ったときは、契約解除および損害賠償請求ができる。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [手付解除と履行の着手]
解約手付が交付された場合、当事者は、自らが履行に着手していても、相手方が履行に着手する前であれば、手付の額の損失を覚悟して契約を解除できる。
手付解除は、履行に着手した相手方に損害を与えないためだから、売主は自らが履行に着手していなくても、「買主が履行に着手」してしまえば、手付金の倍額を支払っても契約解除はできない。
本肢の記述は誤りです。

[正解] 1

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【問 3】 売主Aは、買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し、代金の3分の2の支払と引換えに所有権移転登記手続と引渡しを行った。その後、Bが残代金を支払わないので、Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aの解除前に、BがCに甲土地を売却し、BからCに対する所有権移転登記がなされているときは、BのAに対する代金債務につき不履行があることをCが知っていた場合においても、Aは解除に基づく甲土地の所有権をCに対して主張できない。

 Bは、甲土地を現状有姿の状態でAに返還し、かつ、移転登記を抹消すれば、引渡しを受けていた間に甲土地を貸駐車場として収益を上げていたときでも、Aに対してその利益を償還すべき義務はない。

 Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。

 Aは、Bが契約解除後遅滞なく原状回復義務を履行すれば、契約締結後原状回復義務履行時までの間に甲土地の価格が下落して損害を被った場合でも、Bに対して損害賠償を請求することはできない。
(平成21年 問8)

 解説&正解 
【1】 [解除と悪意の第三者]
解除権者Aが契約を解除しても、第三者Cの権利を害することはできない
したがって、契約解除前に、すでにCが甲土地の所有権移転登記を備えていれば、Cが悪意であっても、Aは解除に基づく甲土地の所有権を主張できないのである。
本肢は正しい記述です。

【2】 [使用利益の返還義務]
買主Bは、原状回復義務として「甲土地を現状有姿の状態で返還し、かつ、移転登記を抹消」しても、さらに使用利益を返還する義務がある。
売主Aが金銭を返還する場合には、受領時からの利息を付けて返還しなければならないので、これと均衡をとったのである。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [原状回復義務と同時履行]
契約が解除されると、当事者双方は「互いに原状回復義務を負う」ことになるが、この義務は同時履行の関係に立つ
したがって、Bの債務不履行が原因で契約が解除されても、Bが原状回復義務を「先に履行」する必要はなく、Aの代金返還義務と同時に履行すればよい。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [解除と損害賠償請求]
解除権者Aは、契約解除後に、Bが「遅滞なく原状回復義務を履行」したとしても、原状回復義務履行時までに損害が発生すれば、Bに対して損害賠償請求をすることができる。
「解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない」(545条3項)のである。
本肢の記述は誤りです。

[正解] 1

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