|公開日 2020.05.21

【問 1】 時効の援用に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。

 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。

 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。

 債務者が時効の完成の事実を知らずに債務の承認をした場合、その後、債務者はその完成した消滅時効を援用することはできない。

(平成30年問4)

 解説&正解 

【1】 [保証人の時効援用]
時効利益の放棄も、時効の援用も、その効果は相対的である。
つまり、放棄・援用した本人だけに効力が生じるので、「主たる債務者」が時効利益を放棄しても、「保証人」は消滅時効を援用することができる。
本肢は正しい記述です。

【2】 [時効の援用権者]
時効を援用できる者は、「所有権を取得した者」や「債務を免れた者」のように、時効によって直接利益を受ける者をいう。
消滅時効では、「保証人」や「抵当不動産の第三取得者」のように、消滅について正当な利益を有する者も含まれる。

先順位抵当権の被担保債権が時効消滅すれば、後順位抵当権者の順位が繰り上がるが、これは「反射的な利益」にすぎないので、後順位抵当権者は消滅時効を援用できない(最判平11.10.21)
本肢の記述は誤りです。

【3】 [詐害行為の受益者]
債務者から財産を取得した受益者は、その取得行為が債権者の利益を害する詐害行為だとして債権者から「詐害行為取消権」を行使されると財産を失うことになる。
債権者の被保全債権が時効消滅すれば、そのおそれがなくなり、受益者はこの点に正当な利益を有するので、消滅時効を援用することができる(最判平10.6.22)
本肢は正しい記述です。

【4】 [時効完成後の債務承認]
消滅時効が完成したにもかかわらず、債務者が「完成の事実を知らずに」債務の承認をした場合は、以後それに反する主張は許されず「完成した消滅時効を援用することはできない」。
債権者としては、債務者が債務を承認した以上、もう時効は援用しないだろうとの期待を抱くのが通常だから、援用を認めないのが信義則に照らし相当とされる(最判昭41.4.20)
本肢は正しい記述です。

[正解] 2

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【問 2】 AがBに対して金銭の支払を求めて訴えを提起した場合の時効の更新に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 訴えの提起後に当該訴えが取り下げられた場合には、特段の事情がない限り、時効の更新は生じない。

 訴えの提起後に当該訴えの却下の判決が確定した場合には、時効の更新は生じない。

 訴えの提起後に請求棄却の判決が確定した場合には、時効の更新は生じない。

 訴えの提起後に裁判上の和解が成立した場合には、時効の更新は生じない。

(令和元年問9)

 解説&正解 

【1】 [訴えの取下げ]
訴えを取り下げたり、訴えが却下されると、もはや権利主張とは認められず、また裁判によって権利の存在も確定されないので、時効の更新は生じない。
本肢は正しい記述です。

【2】 [訴えの却下]
選択肢【1】と同様で、本肢は正しい記述です。

【3】 [請求棄却]
請求棄却の判決が確定した場合には、そもそも権利が存在しないことが明確にされたのだから、時効の更新が問題になることはない。
本肢は正しい記述です。

【4】 [和解]
和解によって権利の存在が確定したのだから、時効は新たに進行を始めることになり、時効の更新が生じる。
本肢の記述は誤りです。

[正解] 4

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