|更新日 2019.7.11
|公開日 2017.5.10

【問 1】 Aが、A所有の土地をBに売却する契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 AのBに対する売却の意思表示がCの詐欺によって行われた場合で、BがそのCによる詐欺の事実を知っていたとき、Aは、売却の意思表示を取り消すことができる。

 AのBに対する売却の意思表示がBの強迫によって行われた場合、Aは、売却の意思表示を取り消すことができるが、その取消しをもって、Bからその取消し前に当該土地を買い受けた善意のDには対抗できない。

 Aが、自分の真意ではないと認識しながらBに対する売却の意思表示を行った場合で、BがそのAの真意を知っていたとき、Aは、売却の意思表示の無効を主張できる。

 AのBに対する売却の意思表示につき法律行為の要素に錯誤があった場合、Aは、売却の意思表示の無効を主張できるが、Aに重大な過失があったときは、無効を主張できない。

(平成10年 問7)


 解説&正解 

 正しい [第三者詐欺による取消し]
売主Aは、第三者Cの詐欺によって売却の意思表示をしている。
この場合、Aは、買主Bが「Cによる詐欺の事実を知っていた」悪意のときに限って、その意思表示を取り消すことができる。

 誤り [強迫による取消しと善意の第三者]
土地がA→B→Dと売却された後、AがBの強迫を理由に売却の意思表示を取り消した場合、この取消しは、取消前の善意の第三者Dにも対抗できる。
詐欺の場合は、だまされた本人にも責められるべきところがあるから、善意の第三者には取消しを主張できないのであるが、強迫の場合は、強迫された本人に責められるべきところはないから、善意の第三者にも取消しを主張できるのである。

 正しい [相手方が知っていたら?]
「自分の真意ではないと認識」しながらする意思表示を心裡留保といい、原則として有効である。つまり表意者の真意ではない意思表示なのだが、表示どおりの効果が生じることになり、相手方は保護されることになる。

しかし、相手方Bが「Aの真意を知っていた」悪意のときには、Bは、Aの意思表示が真意ではないということを知っているのだから、とくにBを保護する必要はなく、Aの売却の意思表示は(もともと真意ではないために)無効とされるのである。

 正しい [表意者の重過失]
法律行為の要素に錯誤があるときは、表意者は、その意思表示の無効を主張できるが、重大な過失があるときは、その無効を主張することはできない。
あまりに軽率な表意者を保護する必要はないからである。

[正解] 2

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【問 2】 A所有の土地につき、AとBとの間で売買契約を締結し、Bが当該土地につき第三者との間で売買契約を締結していない場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 Aの売渡し申込みの意思は真意ではなく、BもAの意思が真意ではないことを知っていた場合、AとBとの意思は合致しているので、売買契約は有効である。

 Aが、強制執行を逃れるために、実際には売り渡す意思はないのにBと通謀して売買契約の締結をしたかのように装った場合、売買契約は無効である。

 Aが、Cの詐欺によってBとの間で売買契約を締結した場合、Cの詐欺をBが知っているか否かにかかわらず、Aは売買契約を取り消すことはできない。

 Aが、Cの強迫によってBとの間で売買契約を締結した場合、Cの強迫をBが知らなければ、Aは売買契約を取り消すことができない。

(平成16年 問1)


 解説&正解 

 誤り [心裡留保と悪意の相手方]
Aの売渡し申込みの意思は「真意ではなく」というのは、自分の真意ではないと認識しながらする意思表示のことで、これは心裡留保である。
心裡留保は原則として有効で、表示どおりの効果が生じる(売渡し申込みの意思表示は有効)。
しかし、相手方Bが、表意者Aの真意を、①知っていたか(悪意)、または、②知らなくても一般人としての注意をすれば知ることができた場合(善意だが過失がある=善意・有過失)には、意思表示は無効とされる。

本問はこの例外にあたる。
Bは、売るという「Aの意思が真意ではないことを知っていた」(売らないという真意を知っていた)のだから、売買契約は無効である。Aの真意は売らないことにあり、Bもそれを知っていれば、そもそも売買契約を有効とする理由はないのである。

 正しい [虚偽表示の効果]
「実際には売り渡す意思はないのに」「通謀して」行う意思表示は虚偽表示だから、売買契約は無効である。虚偽表示をした理由は関係ない。
※ Bが仮に所有権移転登記を受けていても、これは虚偽の登記で何の効力もない。
Aは、虚偽表示を理由に契約の無効を主張して、無効登記の抹消を請求することになる。

 誤り [第三者の詐欺による取消し]
Aは、第三者Cの詐欺によって相手方Bと契約をしている。
第三者の詐欺によって契約をした場合には、相手方Bが、Cの詐欺を知っている悪意のときに限って、Aは、その契約を取り消すことができる。

 誤り [第三者の強迫は取り消せる?]
Aは、第三者Cの強迫によって相手方Bと契約をしている。
第三者による強迫の場合、Aは、相手方Bが、Cの強迫を知っていたか否かにかかわらず(Bの善意・悪意に関係なく)、常に契約を取り消すことができる。
通常の強迫と同様、強迫されたAに責めるべきところはないから、詐欺の場合のような制限はないのである。

[正解] 2

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【問 3】 A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Bは、甲土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、動機の錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。

 Bは、第三者であるCから甲土地がリゾート開発される地域内になるとだまされて売買契約を締結した場合、AがCによる詐欺の事実を知っていたとしても、Bは本件売買契約を詐欺を理由に取り消すことはできない。

 AがBにだまされたとして詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消した後、Bが甲土地をAに返還せずにDに転売してDが所有権移転登記を備えても、AはDから甲土地を取り戻すことができる。

 BがEに甲土地を転売した後に、AがBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合には、EがBによる強迫につき知らなかったときであっても、AはEから甲土地を取り戻すことができる。

(平成23年 問1)


 解説&正解 

 誤り [動機の錯誤は錯誤になるか]
「将来地価が高騰する」という動機で売買契約を締結したところ、実際には「高騰しなかった」場合には、動機に錯誤があったといえるが、この動機が相手方に表示されなかったときは、法律行為の内容とはならないため要素に錯誤があったとはいえず、錯誤を理由に売買契約の無効を主張することはできない。

 誤り [第三者詐欺と相手方の悪意]
Bが、第三者Cにだまされて売買契約を締結した場合には、契約の相手方Aが、第三者Cによる「詐欺の事実を知っていた」ときに限って、Bは詐欺を理由に売買契約を取り消すことができる。

 誤り [取消後の第三者]
詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、その取消し後に、Bから土地所有権を取得したDは、そもそも96条3項の「第三者」に該当しない。
この場合は、①取消しによるB→Aの所有権復帰と、②取消し後のB→Dへの譲渡とは、二重譲渡と同様の関係が成立し、先に登記を備えた方が優先する(177条)から、Dが所有権移転登記を備えた以上、AはDから甲土地を取り戻すことはできないのである。

 正しい [強迫と善意の第三者]
AがBの強迫を理由に契約を取り消した場合、その取消しは、善意の第三者Eにも対抗することができるから、EがBの強迫を知らなかったときであっても、AはEから甲土地を取り戻すことができる。
強迫の場合は、強迫された本人に責めるべきところはないため、第三者が善意であっても、本人を優先して保護しているのである。

[正解] 4


(この項終わり)