|更新日 2019.7.16
|公開日 2017.5.10

【問 1】 民法上の委任契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 委任契約は、委任者又は受任者のいずれからも、いつでもその解除をすることができる。ただし、相手方に不利な時期に委任契約の解除をしたときは、相手方に対して損害賠償責任を負う場合がある。

 委任者が破産手続開始決定を受けた場合、委任契約は終了する。

 委任契約が委任者の死亡により終了した場合、受任者は、委任者の相続人から終了についての承諾を得るときまで、委任事務を処理する義務を負う。

 委任契約の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、相手方に対抗することができず、そのときまで当事者は委任契約上の義務を負う。

(平成18年 問9)


 解説&正解 

 正しい [相手方に不利な時期の解除]
委任契約は、報酬の有無に関係なく、双方からいつでも解除することができる。

ただし、相手方にとって不利な時期に解除したときは、やむを得ない事由がある場合を除いて、相手方の損害を賠償しなければならない。

 正しい [委任の終了事由]
委任契約は、委任者か受任者が「破産手続開始の決定」を受ければ終了する。

※ このほかに、①当事者の死亡、②受任者が後見開始の審判を受けたこと、によっても終了する。

 誤り [委任終了後の緊急処分義務]
委任者の死亡により委任契約は当然に終了するから、受任者は、委任者の相続人から「終了についての承諾を得るときまで」処理義務を負うことはない。

ただ、急迫の事情があるときには、引き続き事務処理を行うなど、委任者の相続人等が委任事務を処理できる状態になるまで必要な処分をしなければならないのである(緊急処分義務)。
これは、事務処理を放置して、委任者側に不測の損害を与えないようにするためである。

 正しい [委任終了の対抗要件]
委任契約の終了事由は、
① これを相手方に通知したとき、または、
② 相手方がこれを知っていたとき
でなければ、相手方に対抗することができない。
したがって、そのときまで当事者は委任契約上の義務を負うことになる。

[正解] 3

…………………………………………………………

【問 2】 Aが、A所有の不動産の売買をBに対して委任する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、A及びBは宅地建物取引業者ではないものとする。

 不動産のような高価な財産の売買を委任する場合には、AはBに対して委任状を交付しないと、委任契約は成立しない。

 Bは、委任契約をする際、有償の合意をしない限り、報酬の請求をすることができないが、委任事務のために使った費用とその利息は、Aに請求することができる。

 Bが当該物件の価格の調査など善良な管理者の注意義務を怠ったため、不動産売買についてAに損害が生じたとしても、報酬の合意をしていない以上、AはBに対して賠償の請求をすることができない。

 委任はいつでも解除することができるから、有償の合意があり、売買契約成立寸前にAが理由なく解除してBに不利益を与えたときでも、BはAに対して損害賠償を請求することはできない。

(平成14年 問10)


 解説&正解 

「A及びBは宅地建物取引業者ではないものとする」というのは、宅建業者の場合は宅建業法が適用されるからです。あくまでも民法の問題として解答せよということです。

 誤り [委任契約の成立]
委任は、当事者の合意だけで成立する諾成契約だから、「高価な財産の売買」かどうかに関係なく、合意さえあれば、委任状を交付しなくても成立する。

※ 委任契約締結の際には委任状が交付されるのが通常であるが、委任状は第三者に対して受任者の権限を証明する手段であって、決して契約成立の要件ではない。

 正しい [報酬と費用償還請求権]
委任は無報酬が原則。つまり、特約(有償の合意)がなければ、受任者は報酬を請求できない。
ただし、委任事務を処理するために必要費を支出したときは、委任者に対し、
① その費用全額と、
② 支出日以後の利息 を請求することができる。

無償だからといって、必要費まで受任者に負担させるべきではないからである。

 誤り [受任者の善管注意義務]
受任者Bが「善良な管理者の注意義務を怠った」ため、委任者Aに損害を与えたときは、Aは、Bの債務不履行を理由に損害賠償請求をすることができる。

受任者は、報酬の有無に関係なく、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理しなければならない契約上の義務(善管注意義務)を負っており、この注意義務を欠けば、過失ありとして債務不履行となるからでる。

委任は、対価の関係ではなく信頼関係を基礎とするから、「報酬の合意をしていない」からといって、受任者の責任が軽くなることはない。

 誤り [相手方に不利な時期の解除]
委任は、有償・無償に関係なく、双方からいつでも解除できる。
委任は、互いの信頼関係を基礎としているから、相手方を信頼できなくなったときは、いつでも解消できるようにしているのである。

ただし、相手方にとって不利な時期に解除したときは、原則として、相手方の損害を賠償しなければならない。
「売買契約成立寸前」に、委任者Aが理由なく委任を解除すれば、「有償の合意」がある受任者Bは、報酬を受領できなくなり不利益を受けるから(不利な時期の解除となる)、Aに損害賠償を請求することができる。

[正解] 2

 ワンランク・アップ 

1 割合的報酬請求権
有償の場合に、受任者の責めに帰することができない事由によって、委任事務が履行の中途で終了したときは、受任者は、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できます。

委任の報酬は、仕事の完成に対してではなく、事務処理の労務そのものに対して支払われるものだからです。

2 受任者の復任権
委任者は、受任者その人を信頼して委任するわけですから、原則として、受任者は自分で事務を処理し、他人に代行させることはできません。
①委託者本人の許諾を得たときか、または、②やむをえない事由があるときでなければ、他人を選任できないのです(任意代理人と同じ)。

3 委任の終了事由
注意しておきたいのは、次の1点です。
委任者が後見開始の審判を受けても、委任は終了しません。
現実に事務処理を行う受任者が、後見開始の審判を受けた場合に終了します。

4 委任の一身専属性
受任者が死亡すれば、有償・無償に関係なく、契約は終了します。
受任者の相続人が、受任者としての地位を相続することはありません。
委任は、当事者双方の個人的な信頼関係で成立・継続していますから、相続には適さないのです。


(この項終わり)