|更新日 2020.2.21
|公開日 2017.2.19

【問 1】 買主Aが、Bの代理人Cとの間でB所有の甲地の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

 CがBの代理人であることをAに告げていなくても、Aがその旨を知っていれば、当該売買契約によりAは甲地を取得することができる。

 Bが従前Cに与えていた代理権が消滅した後であっても、Aが代理権の消滅について善意無過失であれば、当該売買契約によりAは甲地を取得することができる。

 CがBから何らの代理権を与えられていない場合であっても、当該売買契約の締結後に、Bが当該売買契約をAに対して追認すれば、Aは甲地を取得することができる。

 一つ
 二つ
 三つ
 なし

(平成17年問3)

 解説&正解 

【ア】 [顕名しない意思表示]
代理人が、本人のためにすることを示さない(顕名しない)場合には、原則として代理行為は成立しない。しかし、相手方が、①本人のためにすることを知っている場合(悪意)や、②知らないけれども知ることができたような場合(善意だが過失あり)には、代理行為の成立を認めても問題はない。

代理人Cが、Bの代理人であることを相手方Aに告げなくても、Aがそれを「知っていれば」有効な代理行為として売買契約が成立し、その結果、Aは甲地を取得することができる。本肢は正しい記述です。

【イ】 [代理権消滅後の表見代理]
代理権消滅後であっても、相手方Aが代理権の消滅について善意・無過失であれば表見代理が成立し、その結果、売買契約に基づきAは甲地を取得することができる。
本肢は正しい記述です。

【ウ】 [無権代理行為の追認]
何らの代理権を与えられていない無権代理行為も、本人Bが追認すれば有効な代理行為として確定するから、相手方Aは甲地を取得することができる。

無権代理行為は、当然に無効というわけではなく、したがって本人が追認すると、契約の時にさかのぼって効力を生じ、はじめから有効になされた代理行為となる。
本肢は正しい記述です。

以上より、3つすべてが正しく、正解は3となる。

[正解] 3

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【問 2】 AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。しかし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 BがCに対し、Aは甲土地の売却に関する代理人であると表示していた場合、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことをCが過失により知らなかったときは、BC間の本件売買契約は有効となる。

 BがAに対し、甲土地に抵当権を設定する代理権を与えているが、Aの売買契約締結行為は権限外の行為となる場合、甲土地を売り渡す具体的な代理権がAにあるとCが信ずべき正当な理由があるときは、BC間の本件売買契約は有効となる。

 Bが本件売買契約を追認しない間は、Cはこの契約を取り消すことができる。ただし、Cが契約の時において、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権がないことを知っていた場合は取り消せない。

 Bが本件売買契約を追認しない場合、Aは、Cの選択に従い、Cに対して契約履行又は損害賠償の責任を負う。ただし、Cが契約の時において、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことを知っていた場合は責任を負わない。

(平成18年問2)

 解説&正解 

【1】 [代理権授与表示の表見代理]
本人Bが、相手方Cに対し「Aは売却に関する代理人であると表示」していた場合、Cがこれを信じて契約をすれば、代理権授与の表示による表見代理が成立するから、売買契約は有効となる。

この表見代理は、代理権を授与したという表示を信頼した相手方を保護する制度だから、相手方Cが、善意・無過失であることが要件である。
Aに代理権がないことを知っていたり(悪意)、本肢のように「過失により知らなかったとき」(善意だが過失あり)には、Cを保護する必要はないため表見代理は成立しない。本肢の記述は誤りです。

【2】 [権限外の行為の表見代理]
「抵当権設定」の代理権の範囲を越えて「売買契約」を締結した場合には、権限外の表見代理が問題となる。
代理人Aが権限外の行為をした場合でも、相手方Cが、Aにその代理権があると「信ずべき正当な理由があるとき」、つまり善意・無過失のときは表見代理が成立し、BC間の売買契約は有効となる。
本肢は正しい記述です。

権限外の行為をするような信用できない者を代理人に選んだリスクは、本人が負うべきであって、善意・無過失の相手方の利益を犠牲にすべきではないのである。

【3】 [無権代理の相手方の取消権]
無権代理行為としてなされた売買契約は、本人Bがこれを追認しない間であれば、相手方Cが取り消すことができる。
しかし、この取消権も、Cが「Aに代理権がないことを知っていた悪意のときは、認められない。
代理権がないと知りながら契約しているのだから、取消権を認める必要はないのである。本肢は正しい記述です。

※ 本人が追認してしまえば、無権代理行為は有効な代理行為として確定し、相手方はもはや取り消すことはできない。
相手方は、有効であることを期待して契約しているわけだから、本人の追認により有効な代理行為として確定した以上、取消しを認める必要はないのである。
したがって、取消しは、本人が追認するまでにしなければならない。

【4】 [無権代理人の責任]
無権代理人には原則として重い責任が課せられる。
つまり、無権代理人Aは、①自己の代理権を証明したとき、または、②本人Bの追認を得たときを除いて、相手方Cの選択に従い、履行責任または損害賠償責任を負うことになる。

ただし、Aに代理権のないことを相手方Cが知っていたとき(悪意)、または過失によって知らなかったとき(善意だが過失あり)には、無権代理人は責任を負わない。このような相手方を保護する必要はないからである。
本肢は正しい記述です。

[正解] 1

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【問 3】 A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、表見代理は成立しないものとする。

 Bの無権代理行為をAが追認した場合には、AC間の売買契約は有効となる。

 Aの死亡により、BがAの唯一の相続人として相続した場合、Bは、Aの追認拒絶権を相続するので、自らの無権代理行為の追認を拒絶することができる。

 Bの死亡により、AがBの唯一の相続人として相続した場合、AがBの無権代理行為の追認を拒絶しても信義則には反せず、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではない。

 Aの死亡により、BがDとともにAを相続した場合、DがBの無権代理行為を追認しない限り、Bの相続分に相当する部分においても、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではない。

(平成24年問4)

 解説&正解 

問題文に「表見代理は成立しないものとする」とあるから、無権代理だけを考えればよいことに注意。

【1】 [無権代理行為の追認]
「代理権を与えられていない」無権代理行為も、本人が追認すれば有効な代理行為として確定する。つまり、AC間の売買契約は有効となる。
本肢は正しい記述です。

【2】 [無権代理人が単独相続した場合]
無権代理人が単独で相続した場合につき、判例は「無権代理人が本人を相続し、本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたった場合には、本人が自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたもの」として、無権代理行為は「当然に有効となる」としている(最判昭40.6.18)

無権代理人は、追認を拒絶することはできない。本肢の記述は誤りです。

※ 無権代理人には、①相続による本人としての資格と、②無権代理人としての資格が併存しているが、相手方から「本人の資格」での追認を求められたときには、追認を拒絶できる本人の地位を承継したとしても、「信義則上」追認を拒絶することはできない。
本人に効果が帰属するものとして行為していながら、その地位を相続したら追認を拒絶するということは信義則上許されないのである。そこまでして無権代理人を保護する理由はなく、むしろ善意・無過失の相手方を保護すべきとされる。

【3】 [無権代理人死亡|本人相続型]
本人が無権代理人Bを相続した場合には、本人が自分の資格で、被相続人Bの無権代理行為の追認を拒絶しても信義則に反するところはなく、相続によって無権代理行為が当然に有効となるわけではない。
本肢は正しい記述です。

※ ただし、本人は、相続により無権代理人の責任も承継しているので、相手方は善意・無過失であれば、本人に対して、①履行請求か、②損害賠償請求をすることができる(最判昭48.7.3)
追認拒絶できる地位にあることを理由に、この責任を免れることはできない。

【4】 [本人死亡|無権代理人相続型]
無権代理人が他の相続人と共同相続した場合は、相続人全員が「共同で追認」しないかぎり、無権代理人の相続分についても、AC間の契約が当然に有効となるものではない。
本肢は正しい記述です。

※ 判例は「無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するものであり、全員が共同して行使する必要がある」として、「共同の追認がない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない」としている(最判平5.1.21)
無権代理行為とは関係のない他の相続人の利益を保護しているのである。

[正解] 2

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