|更新日 2020.03.05
|公開日 2017.05.10

【問 1】 不法行為による損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 不法行為による損害賠償の支払債務は催告を待たず、損害発生と同時に遅滞に陥るので、その時以降完済に至るまでの遅延損害金を支払わなければならない。

 不法行為によって名誉を毀損された者の慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなかった場合でも、相続の対象となる。

 加害者数人が、共同不法行為として民法第719条により各自連帯して損害賠償の責任を負う場合、その1人に対する履行の請求は、他の加害者に対してはその効力を有しない。

 不法行為による損害賠償の請求権の消滅時効の期間は、権利を行使することができることとなった時から10年である。
(平成19年問5)

 解説&正解 
【1】 [不法行為債務の履行期限]
不法行為による損害賠償債務は、被害者からの「催告」がなくても、損害発生と同時に当然に履行遅滞となる。これは被害者の利益を図る趣旨なのである。
したがって、加害者は、不法行為成立時以後、完済に至るまでの遅延損害金を支払わなければならない。
本肢は正しい記述です。

※ 結局、被害者は、①本来の損害賠償と、②遅延損害金を請求することになる。

【2】 [慰謝料請求権の相続]
不法行為によって財産以外の損害、たとえば名誉・プライバシーなどの精神的損害を受けた被害者は、財産上の損害を受けた場合と同様、損害の発生と同時に、その賠償を請求する権利、つまり慰藉料請求権を取得する。

慰謝料請求権は、これを「放棄したと解される特別の事情がない限り」行使できるのであって、賠償を請求する意思を表明するなど格別の行為を必要とするものではない
したがって被害者が死亡したときは、その慰藉料請求権も、被害者が生前に「請求の意思」を表示したか否かにかかわらず、つまり生前に意思表示がなくても、当然に金銭債権として相続の対象となる。
本肢は正しい記述です。

【3】 [不真正連帯債務]
共同不法行為による加害者1人1人の損害賠償債務は、不真正連帯債務であって、弁済に相当する事由(弁済や供託)以外には絶対的効力はない。
これは、被害者の利益を優先して保護するためである。

「履行の請求」など1人に生じた事由は、当人だけにその効力が生じ、他の加害者には効力を生じない。
本肢は正しい記述です。

【4】 [損害賠償請求権の消滅時効]
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間は、権利行使できることとなった時から、つまり、
① 被害者またはその法定代理人が、損害および加害者を知った時から3年間
または、
② 不法行為の時から20年間、である。
本肢の記述は誤りです。

[正解] 4

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【問 2】 不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 不法行為による損害賠償請求権の期間の制限を定める民法第724条における、被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう。

 不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権は、当該債権が発生した時から10年間行使しないことにより、時効によって消滅する。

 不法占拠により日々発生する損害については、加害行為が終わった時から一括して消滅時効が進行し、日々発生する損害を知った時から別個に消滅時効が進行することはない。

 不法行為の加害者が海外に在住している間は、民法第724条後段の20年の時効期間は進行しない。
(平成26年問8)

 解説&正解 
【1】 [損害賠償請求権の期間の起算点]
判例は「被害者が損害を知った時」とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時としている(最判平14.1.29)
本肢は正しい記述です。

【2】 [損害賠償請求権の期間]
「10年間」が誤り。
不法行為による損害賠償請求権は、不法行為の時から遅滞になるので、遅延損害金債権も同時に遅滞になる。

損害賠償請求権自体と遅延損害金債権とは別個の債権であるが、ともに同一事由から発生しており緊密に関連しているので、遅延損害金債権についても、一般債権の10年ではなく、3年で時効消滅する。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [継続的不法行為による場合]
不法占拠のような継続的不法行為については、日々発生する損害を知った時から別個に消滅時効が進行するというのが、判例である(大連判昭15.12.14)

損害が継続して発生している限り、日々新たな損害が発生しているから、それらの新たな損害を知った時から別個の時効が進行するのである。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [時効の完成猶予]
不法行為の加害者が海外に在住している間でも、時効はそのまま進行する。
海外在住は、時効の完成猶予の事由とはされていない。
本肢の記述は誤りです。

[正解] 1

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【問 3】 Aが故意又は過失によりBの権利を侵害し、これによってBに損害が生じた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aの加害行為によりBが即死した場合には、BにはAに対する慰謝料請求権が発生したと考える余地はないので、Bに相続人がいても、その相続人がBの慰謝料請求権を相続することはない。

 Aの加害行為がBからの不法行為に対して自らの利益を防衛するためにやむを得ず行ったものであっても、Aは不法行為責任を負わなければならないが、Bからの損害賠償請求に対しては過失相殺をすることができる。

 AがCに雇用されており、AがCの事業の執行につきBに加害行為を行った場合には、CがBに対する損害賠償責任を負うのであって、CはAに対して求償することもできない。

 Aの加害行為が名誉毀損で、Bが法人であった場合、法人であるBには精神的損害は発生しないとしても、金銭評価が可能な無形の損害が発生した場合には、BはAに対して損害賠償請求をすることができる。
(平成20年問11)

 解説&正解 
【1】 [慰謝料請求権の相続]
不法行為によって慰藉料請求権を取得した被害者が死亡した場合、被害者が生前に請求の意思を表示したか否かに関係なく、相続人は当然に慰藉料請求権を相続する。

判例(最判昭42.11.1)によれば、慰謝料請求権は被害者の請求の意思表示を必要とするものではないから、被害者が「即死」の場合であっても、相続人は慰藉料請求権を相続するのである。
本肢の記述は誤りです。

【2】 [正当防衛]
他人の不法行為に対して自らの利益を防衛するためにやむを得ず行った加害行為(不法行為)は、正当防衛であって違法性がなく、不法行為責任を負うことはない。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [使用者の求償権]
使用者Cが損害賠償責任を負担した場合には、被用者Aに対して求償することができる。そもそもCが使用者責任を負うとしても、本来の責任は、加害者である被用者A自身にあるから、その不法行為責任が免除されるわけではないのである。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [法人の名誉毀損]
法人の名誉権が侵害され、無形の損害が生じた場合でも、金銭評価が可能であるかぎり、名誉侵害に基づく損害賠償請求をすることができる。

※ 判例(最判昭39.1.28)は「被害者が自然人であろうと、いわゆる無形の損害が精神上の苦痛であろうと何であろうとかかわりないわけであり、法人の名誉権に対する侵害の場合たると否とを問うところではないのである」としている。
本肢は正しい記述です。

[正解] 4

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