|更新日 2019.7.17
|公開日 2017.5.20

【問 1】 Aは未婚で子供がなく、父親Bが所有する甲建物にBと同居している。Aの母親Cは平成23年3月末日に死亡している。AにはBとCの実子である兄Dがいて、DはEと婚姻して実子Fがいたが、Dは平成24年3月末日に死亡している。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Bが死亡した場合の法定相続分は、Aが2分の1、Eが4分の1、Fが4分の1である。

 Bが死亡した場合、甲建物につき法定相続分を有するFは、甲建物を1人で占有しているAに対して、当然に甲建物の明渡しを請求することができる。

 Aが死亡した場合の法定相続分は、Bが4分の3、Fが4分の1である。

 Bが死亡した後、Aがすべての財産を第三者Gに遺贈する旨の遺言を残して死亡した場合、FはGに対して遺留分を主張することができない。

(平成24年 問10)


 解説&正解 

 誤り [法定相続分]
相続人は、子A、そして、Bの死亡以前にすでに死亡していた兄Dについては代襲相続が成立するから、Dの子F(Bの直系卑属)が相続人となる。
その相続分は、Dの相続分と同じである。
Dの配偶者Eは相続人ではない。

したがって、法定相続分は、Aが1/2、Fが1/2となる。

 誤り [相続財産の明渡し]
甲建物につき法定相続分を有するFは、その占有者Aに対して、当然には、その明渡しを請求することはできない。
共同相続人Aは、自己の持分によって共有建物を使用収益する権限を有し、これに基づいて占有しているからである。

 誤り [法定相続分]
配偶者も子もないAが死亡した場合、相続人は直系尊属のBだけである。
その相続分は1/1、つまりすべてを相続する。

 正しい [遺留分権利者]
まずBが死亡した場合、相続人はAと兄Dの代襲相続人Fである。
その後、Aが死亡した場合、すでにDも死亡しており、そもそもAの兄弟姉妹には遺留分がないから、FはGに対して遺留分を主張することはできない。

[正解] 4

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【問 2】 自己所有の建物に妻Bと同居していたAが、遺言を残さないまま死亡した。Aには先妻との間に子C及びDがいる。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aの死後、遺産分割前にBがAの遺産である建物に引き続き居住している場合、C及びDは、Bに対して建物の明渡しを請求することができる。

 Aの死後、遺産分割前にBがAの遺産である建物に引き続き居住している場合、C及びDは、それぞれBに対して建物の賃料相当額の1/4ずつの支払いを請求することができる。

 A死亡の時点でBがAの子Eを懐妊していた場合、Eは相続人とみなされ、法定相続分は、Bが1/2、C・D・Eは各1/6ずつとなる。

 Cの子FがAの遺言書を偽造した場合には、CはAを相続することができない。

(平成16年 問12)


 解説&正解 

 誤り [相続財産の明渡し]
遺産分割前の建物は、共同相続人B・C・Dの共有に属し、各共有者は、その持分に応じて建物全部を使用できるから、仮にC・Dの持分価格が過半数を超えていたとしても、現に建物を占有するBに対して、当然にはその明渡しを請求することはできない。

判例(最判昭41.5.19)は「少数持分権者Bは、自己の持分によって建物を使用収益する権限を有し、これに基づいて建物を占有しているのだから、明渡しを求めるためには、その理由を主張・立証しなければならない」としている。

 誤り [不当利得返還請求]
判例によれば、共同相続人の1人Bが、相続開始前から被相続人Aの許諾を得て、遺産である建物に同居してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間で、Aが死亡し相続が開始した後も、遺産分割により建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続きBに無償で使用させる旨の合意があったものとされる。
双方の通常の意思に合致するといえるからである。

このため、遺産分割終了までの間は、Aの地位を承継したC・Dを貸主、Bを借主とする建物の使用貸借契約関係が存続することとなるので、Bに不当利得は存在せず、賃料相当額の支払いを請求することはできないのである(最判平8.12.17)

 正しい [胎児の権利能力]
まだ出生していない胎児Eも、相続については、すでに生まれたものとみなされ、1人の相続人として扱われる。
したがって、法定相続分は、妻Bが1/2、子C・D、胎児Eが、それぞれ1/6ずつとなる。

 誤り [相続欠格事由]
相続人が遺言書を偽造した場合に、その相続人が相続欠格となるのであって、相続人Cの子Fが、被相続人Aの遺言書を偽造しても、Cが相続権を失うことはない。

[正解] 3

 ワンランク・アップ 

[胎児に遺産を与えることはできる?]
人は、出生によって権利能力(法律上の権利者となれる資格)を取得しますから、母親の胎内にあってまだ出生していない胎児は、民法上は人ではないため権利能力がありません。これが大原則です。

しかし、現代の医療技術では、生きて生まれる可能性がきわめて高いわけですから、一定の場合には胎児の利益のために、例外としてすでに出生したものとみなされ、権利能力者として扱われます。

つまり、①相続、②遺贈、③不法行為に基づく損害賠償請求権の3つに限っては、胎児も権利能力を有します。
母親の胎内にある胎児も、①相続については、すでに生まれたものとみなされ、1人の相続人として扱われるのです。

また、②遺贈に関しても、胎児も受遺者となることができますので、胎児に対して遺言で財産を与えることができます。

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【問 3】 相続に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 相続開始の時において相続人が数人あるとき、遺産としての不動産は、相続人全員の共有に属する。

 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定めることができ、また相続開始の時から5年を超えない期間内で遺産の分割を禁ずることもできる。

 遺産の分割について共同相続人間に協議が調わないとき、各共同相続人は、その分割を、相続開始地の地方裁判所に請求することができる。

 相続開始の時から3年以上経過した後に遺産の分割をしたときでも、その効力は、第三者の権利を害しない範囲で、相続開始の時にさかのぼって生ずる。

(平成11年 問3)


 解説&正解 

 正しい [共同相続と共有]
記述のとおり。
相続人が数人あるときは、相続開始から具体的に遺産分割がなされるまでは、不動産・債権債務などの個々の相続財産は、ひとまず全員の共有に属する。

 正しい [遺言による指定分割と分割禁止]
記述のとおり。
被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定めることができ、また、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁じることができる。

※ 一般的に共有物の分割については、分割しない旨の不分割契約をすることができる。
ただしその期間は5年を超えることができない。相続財産の分割も例外ではない。

 誤り [遺産分割の管轄裁判所]
「地方裁判所」が誤り。
遺産分割について協議が調わないときは、各共同相続人は、その分割を、相続開始地の家庭裁判所に請求することができる。

 正しい [遺産分割の効力]
記述のとおり。
共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除いて、いつでもその協議で遺産分割をすることができる。
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じるが、第三者の権利を害することはできない。

[正解] 3


(この項終わり)