|更新日 2019.7.15
|公開日 2017.5.10

【問 1】 同時履行の関係に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 動産売買契約における目的物引渡債務と代金支払債務とは、同時履行の関係に立つ。

 目的物の引渡しを要する請負契約における目的物引渡債務と報酬支払債務とは、同時履行の関係に立つ。

 貸金債務の弁済と当該債務の担保のために経由された抵当権設定登記の抹消登記手続とは、同時履行の関係に立つ。

 売買契約が詐欺を理由として有効に取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。

(平成15年 問9)


 解説&正解 

同時履行の抗弁権というのは、当事者の双方が同時に履行するのが公平であるという趣旨で認められた制度です。

 正しい [双務契約と同時履行の抗弁権]
動産売買契約における売主の目的物引渡債務と、買主の代金支払債務とは、同時履行の関係に立つ。
売買のような双務契約では公平の観点から、売主・買主双方は互いに、相手方が債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができるという同時履行の抗弁権を有している。

 正しい [請負契約と報酬の支払時期]
目的物の引渡しを要する請負契約では、請負人の目的物引渡債務と注文者の報酬支払債務とは、同時履行の関係に立つ。
報酬は、目的物の引渡しと同時に支払わなければならない。

 誤り [弁済と抵当権の抹消登記]
貸金債務の弁済は、その貸金債務を担保するために設定された抵当権の抹消登記手続よりも、先に履行しなければならず(先履行の関係)、双方は同時履行の関係にはない。
貸主が抹消登記手続を履行しない場合でも、借主が先に債務を弁済しなければならないのである。

 正しい [取消しによる原状回復義務]
売買契約が詐欺を理由に取り消された場合、売主・買主は互いに、給付された物を返還する原状回復義務を負うことになるが、この場合、もとの契約が売買のような双務契約であるときは、互いの原状回復義務も同時履行の関係に立つ。

※ 売買契約が無効の場合も、双方の返還義務は同時履行の関係になる。

[正解] 3

 ワンランク・アップ 

同時履行は、互いの債務が弁済期にあるときの義務ですから、「相手方の債務が弁済期にない」ときには、同時履行の抗弁権はありません。
先に弁済期にある方が先に履行しなければならないのは当然なのです。

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【問 2】 同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはいくつあるか。

 マンションの賃貸借契約終了に伴う賃貸人の敷金返還債務と、賃借人の明渡債務は、特別の約定のない限り、同時履行の関係に立つ。

 マンションの売買契約がマンション引渡し後に債務不履行を理由に解除された場合、契約は遡及的に消滅するため、売主の代金返還債務と、買主の目的物返還債務は、同時履行の関係に立たない。

 マンションの売買契約に基づく買主の売買代金支払債務と、売主の所有権移転登記に協力する債務は、特別の事情のない限り、同時履行の関係に立つ。

 一つ
 二つ
 三つ
 なし

(平成27年 問8)


 解説&正解 

 誤り [敷金返還債務と明渡債務]
一見すると正しい記述のようであるが、敷金返還債務と建物明渡債務は同時履行の関係にはなく、先に建物明渡債務が履行されなければならない。

敷金返還請求権は、契約終了後、建物明渡し完了時に発生する権利だから、先に建物明渡債務を履行しなければならないのである。
賃貸人は、建物の明渡しを受けた後に敷金残額を返還すればよい。

 誤り [解除と同時履行の抗弁権]
売買契約が解除された場合、売主・買主双方は、互いに相手方を原状に復させる原状回復義務を負うが、この義務は同時履行の関係に立つ。
売主の代金返還債務と、買主の目的物返還債務は、同時に履行されなければならないのである。

 正しい [代金支払債務と移転登記協力債務]
不動産売買契約の場合、買主の代金支払債務と、売主の不動産引渡し・移転登記の協力債務が、同時履行の関係にあることは確定した判例である。
たとえば、買主が代金支払の弁済期に履行の提供をしない場合には、売主は、不動産の引渡しと登記を拒むことができる。

以上より、正しい記述は1つ。

[正解] 1


(この項終わり)