|公開日 2020.02.19

【問 1】 次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 倒壊しそうなA所有の建物や工作物について、Aが倒壊防止の措置をとらないため、Aの隣に住むBがAのために最小限度の緊急措置をとったとしても、Aの承諾がなければ、Bはその費用をAに請求することはできない。

 建物所有を目的とする借地人は、特段の事情がない限り、建物建築時に土地に石垣や擁壁の設置、盛土や杭(くい)打ち等の変形加工をするには、必ず賃貸人の承諾を得なければならない。

 建物の賃貸人が必要な修繕義務を履行しない場合、賃借人は目的物の使用収益に関係なく賃料全額の支払を拒絶することができる。

 建物の賃貸人が賃貸物の保存に必要な修繕をする場合、賃借人は修繕工事のため使用収益に支障が生じても、これを拒むことはできない。

(平成25年問8)

 解説&正解 

【1】 [緊急事務管理と費用]
Aの建物のためにとった隣人Bの「最小限度の緊急措置」は、緊急事務管理である。
このために有益な費用を支出したときは、「Aの承諾」がなくても、その償還を請求できる。本肢の記述は誤りです。

【2】 [用法に従った使用収益]
賃貸借では、賃借人は、賃貸借によって定まった用法に従い、賃借物の使用・収益をしなければならない。
「建物所有を目的」として、「建物建築時に土地に石垣や擁壁の設置、盛土や杭打ち等の変形加工をする」ことは、用法に従った使用・収益であるから、「必ず賃貸人の承諾」が必要とはいえない。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [賃料の支払拒絶]
判例は、賃貸人が必要な修繕義務を履行しない場合、賃借人は使用収益が妨げられた割合に応じて、賃料の一部の支払を拒むことができるとしている。
「賃料全額の支払を拒絶する」ことはできないのである(最判昭43.11.21)
本肢の記述は誤りです。

【4】 [賃貸物の修繕義務]
賃貸人は賃貸物の使用収益に必要な修繕義務を負うから、「保存に必要な修繕」をする場合に「修繕工事のため使用収益に支障が生じても」、賃借人はこれを拒むことはできない。
本肢は正しい記述です。

※ やや難問でしたが、【4】がわかれば消去法で正解できますね。

[正解] 4

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【問 2】 賃貸人Aから賃借人Bが借りたA所有の甲土地の上に、Bが乙建物を所有する場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、Bは、自己名義で乙建物の保存登記をしているものとする。

 BがAに無断で乙建物をCに月額10万円の賃料で貸した場合、Aは、借地の無断転貸を理由に、甲土地の賃貸借契約を解除することができる。

 Cが甲土地を不法占拠してBの土地利用を妨害している場合、Bは、Aの有する甲土地の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使してCの妨害の排除を求めることができるほか、自己の有する甲土地の賃借権に基づいてCの妨害の排除を求めることができる。

 BがAの承諾を得て甲土地を月額15万円の賃料でCに転貸した場合、AB間の賃貸借契約がBの債務不履行で解除されても、AはCに解除を対抗することができない。

 AB間で賃料の支払時期について特約がない場合、Bは、当月末日までに、翌月分の賃料を支払わなければならない。

(平成26年問7)

 解説&正解 

【1】 [借地上の建物賃貸は転貸か]
地主Aは、借地の無断転貸を理由に、土地の賃貸借契約を解除することはできない。

判例は、借地上の建物賃貸は「無断転貸」には該当しないと解しているが、それは賃貸人が賃借人に対して、借地上に建物を建築所有して土地利用することを認めている以上、賃借人がその建物に居住しようが、第三者に賃貸して利用させようが、土地の使用方法としては何の問題もなく、両者の信頼関係を損なうものではないからである(大判昭8.12.11)
本肢の記述は誤りです。

※ ただし、借地権と借地上の建物を第三者に売却することは、賃貸人が予想する利用範囲を超えており、賃借権の無断譲渡に該当するので、賃貸人は、建物収去と土地明渡しを求めることができる。

【2】 [賃借権に基づく妨害排除請求権]
Bは、甲土地の利用を妨害している不法占拠者Cに対して、
① 甲土地所有者Aの有する所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使して、妨害排除を求めることができるだけでなく、
② 自ら甲土地の賃借権に基づいて妨害排除を求めることができる。

Bは「自己名義で乙建物の保存登記をしている」から、第三者に対抗できる土地賃借権を有しており、この場合、判例は、その賃借権はいわゆる物権的効力を有するとして、「第三者に対し、直接にその建物の収去、土地の明渡しを請求することができる」としている(最判昭28.12.18)
本肢は正しい記述です。

【3】 [債務不履行と転貸借の終了]
適法な転貸借であっても、AB間の賃貸借契約が賃借人Bの債務不履行で解除されれば、BはCに対する転貸人としての債務が履行不能となり、したがって転貸借は、AB間の賃貸借の終了と同時に終了することになる。
Aは、転借人Cに解除を対抗することができるのである。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [賃料の支払時期]
建物や宅地の賃料支払時期について特約がない場合、当月分は毎月末に支払えばよい。「当月末日までに、翌月分の賃料を支払」う必要はない。
本肢の記述は誤りです。

[正解] 2

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