|更新日 2019.7.12
|公開日 2017.5.10

【問 1】 Aは、自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 Cが、AB間の売買の事実を知らずにAから甲地を買い受け、所有権移転登記を得た場合、CはBに対して甲地の所有権を主張することができる。

 Dが、Bを欺き著しく高く売りつける目的で、Bが所有権移転登記を行っていないことに乗じて、Aから甲地を買い受け所有権移転登記を得た場合、DはBに対して甲地の所有権を主張することができない。

 Eが、甲地に抵当権を設定して登記を得た場合であっても、その後Bが所有権移転登記を得てしまえば、以後、EはBに対して甲地に抵当権を設定したことを主張することができない。

 AとFが、通謀して甲地をAからFに仮装譲渡し、所有権移転登記を得た場合、Bは登記がなくとも、Fに対して甲地の所有権を主張することができる。

(平成15年 問3)


 解説&正解 

 正しい [二重譲渡と登記]
典型的な二重譲渡の問題である。
不動産に関する所有権移転や抵当権設定などの物権変動は、その登記がなければ第三者に対抗できない

したがって土地が、①A→B、②A→Cと二重譲渡され、B・Cが互いに対抗関係に立つ場合には、先に登記を備えたCが完全に所有権を取得し、登記のないBに対して甲地所有権を主張できることになる。
この場合、第三者Cは善意である必要はなく、「売買の事実」を知っている悪意でもよい。

 対抗要件


 正しい [背信的悪意者]
「Bを欺き著しく高く売りつける目的」というように、権利取得の方法がきわめて不誠実な背信的悪意者Dは、登記のないBに対して甲地の所有権を主張できない。

物権変動があってもその登記をしなければ対抗できない「第三者」とは、「相手方に登記がないことを主張する正当な利益を有する第三者」である。
背信的悪意者Dは、Bに登記がないことを主張する正当な利益を有する第三者にはあたらない

 誤り [先に対抗要件を備えた抵当権]
甲地について先に抵当権設定登記をしたEは、Bに対してその抵当権を主張できる。

Bが、甲地について先に所有権を取得していても、その登記がなければ所有権を第三者Eに対抗できないから、結局Bは、Eの抵当権によって制限された所有権を取得することになる。

 正しい [虚偽表示と177条の第三者]
A→Fの仮装譲渡は、虚偽表示によるものであり無効であるから、はじめから所有権は仮装譲受人Fに移転しておらず、Fの移転登記も虚偽の登記として無効である。
Bは登記がなくても、無権利者Fに対して甲地の所有権を主張できる。

[正解] 3

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【問 2】 不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において、第三者とはいわゆる背信的悪意者を含まないものとする。

 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約に係る意思表示を詐欺によるものとして適法に取り消した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該取消後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。

 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約を適法に解除した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該契約の解除後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。

 甲不動産につき兄と弟が各自2分の1の共有持分で共同相続した後に、兄が弟に断ることなく単独で所有権を相続取得した旨の登記をした場合、弟は、その共同相続の登記をしなければ、共同相続後に甲不動産を兄から取得して所有権移転登記を経た第三者に自己の持分権を対抗できない。

 取得時効の完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者は、その旨を登記しなければ、時効完成後に乙不動産を旧所有者から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。

(平成19年 問6)


 解説&正解 

 正しい [取消後の第三者と登記]
売買契約に基づく所有権移転登記後に、契約が取り消された場合、
① 取消による買主→売主の所有権復帰と、
② 取消後の買主→第三者への譲渡とは、
二重譲渡の関係が成立し対抗関係となるため、権利関係の優劣は登記で決まる。

売主は、詐欺を理由に売買契約を取り消しても、その旨の登記をしなければ、取消後に当該不動産を取得して登記を移転した第三者に所有権を対抗することはできない。

 正しい [解除後の第三者と登記]
売買契約に基づく所有権移転登記後に、契約が解除された場合、
① 解除による買主→売主の所有権復帰と、
② 解除後の買主→第三者との売買は、
二重譲渡の関係が成立し対抗関係となるため、権利関係の優劣は登記で決まる。

売主が契約を解除して所有権が売主に復帰しても、その旨の登記をしなければ、解除後に不動産を取得して登記を経た第三者(善意・悪意に関係なく)に所有権を対抗することはできない。

 誤り [共同相続と単独登記]
兄弟が共同相続した不動産について、兄が勝手に単独名義で登記した場合、この登記は、弟の持分に関する限り虚偽の登記(無権利の登記)である。
したがって第三者が登記を受けても、弟の持分について権利を取得することはできない。
いいかえれば、弟は「共同相続の登記」をしなくても、登記を経た第三者に自己の持分権(相続分)を対抗することができるのである。

 正しい [時効完成後の第三者と登記]
① 所有権を時効取得した者と、
② その時効完成後に所有権を取得した第三者とは、
二重譲渡と同様の関係となって、その権利関係の優劣は登記の先後で決まるから、先に登記を備えた者が完全な権利者となる。

乙不動産の時効取得者は、その登記をしなければ、時効完成後に同一不動産の所有権を取得してその登記を経た第三者に所有権を対抗することはできない。

[正解] 3

 ワンランク・アップ 

登記に公信力はない
土地・建物などの不動産取引では、虚偽の登記とは知らずに、真実の登記と信じて取引しても保護されません。これを「登記に公信力はない」といい、民法の大原則です。
つまり、物権が存在するかのような外形(登記や占有などによる公示)を信頼して取引した者は、その外形が真実の権利関係を反映しない虚偽のものであっても保護されるという「公信の原則」は、不動産取引には適用されないのです。

公信の原則は、本人の権利保護よりも取引の安全を図るための原則(第三者を優先する原則)ですが、不動産取引にこれを適用すると、本人の犠牲があまりにも大きくなるからです。

また、わが国の登記制度の欠陥でもあるのですが、登記が必ずしも真実の権利関係を反映しているとはいえないという悲しい現実もあるのです。
登記所の登記を信頼しても保護されませんから、不動産取引をする人は、その登記が真実かどうかを十分に調査する必要があります。

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【問 3】 AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 CもBから甲土地を購入しており、その売買契約書の日付とBA間の売買契約書の日付が同じである場合、登記がなくても、契約締結の時刻が早い方が所有権を主張することができる。

 甲土地はCからB、BからAと売却されており、CB間の売買契約がBの強迫により締結されたことを理由として取り消された場合には、BA間の売買契約締結の時期にかかわらず、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。

 Cが時効により甲土地の所有権を取得した旨主張している場合、取得時効の進行中にBA間で売買契約及び所有権移転登記がなされ、その後に時効が完成しているときには、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。

 Cは債権者の追及を逃れるために売買契約の実態はないのに登記だけBに移し、Bがそれに乗じてAとの間で売買契約を締結した場合には、CB間の売買契約が存在しない以上、Aは所有権を主張することができない。

(平成22年 問4)


 解説&正解 

 誤り [二重譲渡と登記]
典型的な二重譲渡の問題。
Bの所有地が、B→A、B→Cと二重譲渡されている場合、A・Cの権利の優劣は登記の先後で決定されるため、いまだ登記のないCが完全な所有権を取得することはない。
「登記がなくても、契約締結の時刻が早い方が所有権を主張することができる」ということは、ありえないのである。

※ 不動産の二重譲渡があった場合は対抗問題となり、その権利関係の優劣は登記の先後で決定される。つまり、先に登記を備えた方が完全に物権を取得することになる。

したがって、どちらも登記を備えていないときは、両者の地位に優劣はなく、どちらからも権利を主張することはできない。とにかく早く登記をした者が優先して物権を取得するというのが、177条の趣旨なのである。
契約締結日・時刻の先後はまったく関係がない。

 誤り [強迫による取消と登記]
C→Bの契約が、Bの強迫を理由に取り消された場合、B→A(第三者)への売却が、
① その取消前になされていたのか
② その取消後になされたのか、によって権利関係はまったく異なってくる。

①の場合には96条の問題として、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張できるが、②の場合には177条の対抗問題として、Cは登記がないとAに対抗することはできない。
「BA間の売買契約締結の時期にかかわらず、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる」とはいえないのである。

 正しい [時効完成前の第三者と登記]
「取得時効の進行中」に、B→Aへの契約によりAが登記した後に、占有者Cの時効が完成した場合には、Cは「登記がなくても」Aに対して所有権を主張することができる。

時効は原始取得であるが、時効完成前に物権変動がある場合には、CとAは、あたかもCが土地を譲り受けたときのように物権変動の当事者であって、177条の対抗関係にはないのである。

 誤り [虚偽表示と177条の第三者]
「売買契約の実態はないのに登記だけBに移し」というのは虚偽表示であるから、C→Bの仮装売買は無効である。
虚偽表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない」のであるが、問題文からはAが善意であるかどうか不明である。
しかしながらAが善意であれば、仮装譲渡者Cとしては、Aの未登記を主張してAの所有権に対抗することはできないのであるから、「CB間の売買契約が存在しない以上、Aは所有権を主張することができない」とはいえず、この記述は誤りとなる。

[正解] 3

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【問 4】 A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 甲土地につき、時効により所有権を取得したBは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができない。

 甲土地の賃借人であるDが、甲土地上に登記ある建物を有する場合に、Aから甲土地を購入したEは、所有権移転登記を備えていないときであっても、Dに対して、自らが賃貸人であることを主張することができる。

 Aが甲土地をFとGとに対して二重に譲渡してFが所有権移転登記を備えた場合に、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できれば、Gは、登記がなくても、Fに対して自らが所有者であることを主張することができる。

 Aが甲土地をHとIとに対して二重に譲渡した場合において、Hが所有権移転登記を備えない間にIが甲土地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えたときは、Iがいわゆる背信的悪意者であっても、Hは、Jに対して自らが所有者であることを主張することができない。

(平成24年 問6)


 解説&正解 

 誤り [時効完成前の第三者と登記]
Aの甲地を時効取得したBは、その時効完成前にAから甲地を購入し移転登記を備えたCに対しては、登記がなくても、時効による所有権取得を主張することができる。

 誤り [土地賃借権の対抗要件|建物保存登記]
土地の賃借権は、賃借権自体の登記がなくても、賃借人が登記ある建物を所有するときは、これをもって土地賃借権を第三者に対抗することができる(借地借家10条)

「甲土地上に登記ある建物を有する」土地賃借人Dは、すでに土地賃借権の対抗要件を備えているから、「所有権移転登記を備えていない」Eは、Dに土地所有権を対抗できず、また賃貸人であることを主張することもできない。

 誤り [二重譲渡と登記]
不動産の二重譲渡があった場合、その権利関係の優劣は登記の先後によって決定されるから、先に登記を備えたFが完全に甲地の所有権を取得する。
売買契約の時期によって権利関係の優劣が決定されるわけではないから、対抗関係にあるGの契約が「先になされたこと」を立証しても、Gは自らが所有者であることを主張することはできない。

 正しい [背信的悪意者からの転得者]
判例は、Aが甲地をHとIに二重譲渡した場合で、Hが未登記の間に、背信的悪意者Iが甲地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えたときは、転得者自身が背信的悪意でない限りは、177条の「第三者」に含まれるとしている。
したがって、未登記のHは「転得者Jに対して自らが所有者であることを主張することができない」のである(最判平8.10.29)

[正解] 4

 ワンランク・アップ 

1 無効の登記を長期間放置していたら
たとえば、Bが無断で、Aの所有地を自己の所有名義としたにもかかわらず、Aが「これを知りながら放置していた」場合に、Bがこの土地を善意の第三者Cに売却して移転登記をしたときは、Aは、Cに対して土地所有権を対抗することができません。

判例は、Bの所有名義は、所有権がBにあるという外形を表示するものとなっており、Aがこれを「知りながら放置していた」場合には、AB間に「通謀がある状態に近い」ものとして、94条2項(虚偽表示を知らない善意の第三者保護規定)を類推適用し、この外形を信頼した善意の第三者を保護しているのです(最判昭48.6.28)

2 当事者間の物権変動|登記不要
民法176条は「物権の設定および移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生じる」と定めています。つまり、所有権の移転など物権変動は「登記がなくても当事者間」では意思表示だけで生じるのです。

そもそも登記は「第三者に対する対抗要件」であって、「権利変動の要件」ではありませんから、当事者間では登記がなくても権利は変動します。
物権変動が「当事者間」(176条)なのか、「第三者との関係」(177条)なのかで、まったく異なりますので要注意です。


(この項終わり)