|更新日 2020.5.25
|公開日 2017.5.01

【問 1】 Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された場合におけるBのAに対する代金債務(以下「本件代金債務」という)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Bが、本件代金債務につき受領権限のないCに対して弁済した場合、Cに受領権限がないことを知らないことにつきBに過失があれば、Cが受領した代金をAに引き渡したとしても、Bの弁済は有効にならない。

 Bが、Aの代理人と称するDに対して本件代金債務を弁済した場合、Dに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。

 Bが、Aの相続人と称するEに対して本件代金債務を弁済した場合、Eに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。

 Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていないことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。
(令和元年問7)

 解説&正解 
【1】 [受領権者以外の者への弁済]
弁済は、当然ながら、債権者など弁済を受領する権限のある「受領権者」に対してしなければ、弁済としての効力を有しない。
しかし、受領権限のない者、つまり「受領権者としての外観を有する者」に対する弁済でも、弁済者=債務者が善意かつ無過失であれば、弁済としての効力を有するとされる。
これは表見代理制度と同じく、権利者らしい外観を有する者を善意・無過失で信じた者は保護されるべきという外観法理に基づくものである。

したがって、弁済者Bが、Cに受領権限がないことにつき善意であっても「過失」があれば、弁済としての効力を有しないのである。
ただしこのような場合でも、民法は、債権者が「利益を受けた限度においてのみ」弁済の効力を有する(479条)としているので、Cが、受領代金を債権者「Aに引き渡した」のであれば、Bの弁済はその限度で有効となる。
本肢の記述は誤りです。

【2】 [詐称代理人への弁済]
「受領権者としての外観を有する者」に対してした弁済は、弁済者が善意かつ無過失のときに限り、弁済の効力を有する。
「Aの代理人と称する」詐称代理人Dに対してした債務者Bの弁済は、Dに受領権限がないことにつき、Bが「善意かつ無過失であれば」その弁済は有効である。
本肢は正しい記述です。

【3】 [詐称相続人への弁済]
「Aの相続人と称する」詐称相続人Eに対する弁済も、選択肢2と同じである。
Bが「善意かつ無過失であれば」その弁済は有効となる。
本肢は正しい記述です。

【4】 [同時履行の抗弁権]
売買のような双務契約では、公平の観点から、売主・買主はともに、相手方が「債務の履行を提供するまで」は、「自己の債務の履行を拒むことができる」という同時履行の抗弁権を有している。

Bは、自己の代金債務の履行期が過ぎた場合でも、甲建物の引渡しに係る「履行の提供を受けていない」のであれば、代金の支払を拒むことができる。
本肢は正しい記述です。

[正解] 1

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