|更新日 2020.5.30
|公開日 2018.1.15

【問 1】 買主Aと売主Bとの間で建物の売買契約を締結し、AはBに手付を交付したが、その手付は解約手付である旨約定した。この場合、民法の規定及び判例によれば次の記述のうち正しいものはどれか。

 手付の額が売買代金の額に比べて僅(きん)少である場合には、本件約定は、効力を有しない。

 Aが、売買代金の一部を支払う等売買契約の履行に着手した場合は、Bが履行に着手していないときでも、Aは、本件約定に基づき手付を放棄して売買契約を解除することができない。

 Aが本件約定に基づき売買契約を解除した場合で、Aに債務不履行はなかったが、Bが手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき、Bは、その損害全部の賠償を請求することができる。

 Bが本件約定に基づき売買契約を解除する場合は、Bは、Aに対して、単に口頭で手付の額の倍額を償還することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。
(平成12年問7)

 解説&正解 
【1】 [解約手付の額]
判例は、売買金額に比べて手付金が僅少であっても、解約手付として有効であるとしている(大判大10.6.2)
本肢の記述は誤りです。

【2】 [相手方の履行の着手]
手付を交付した買主は、その手付を放棄して、売主はその倍額を現実に提供して、契約を解除することができる。
ただし、相手方が履行に着手した後は、解除できない。
すでに履行に着手した相手方に損害を与えないためである。

買主Aは自ら「履行に着手した」場合でも、相手方である売主Bが「履行に着手していないとき」であれば、解約手付を放棄して契約を解除できる。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [解約手付と損害賠償]
「債務不履行はなかった」買主Aが、解約手付の約定により契約を解除した場合、売主Bは「手付の額を超える」損害を立証できても、損害賠償請求はできない。
解約手付による解除は、手付額だけの損失を覚悟すれば契約を解除できるという趣旨であって債務不履行による解除ではないから、解除しても損害賠償の問題は生じないのである。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [手付受領者の解除]
「手付を交付」した買主Aが解除するには、解除の意思表示だけで足りる。
しかし、手付を受領した売主Bが解除するには、「単に口頭で手付の倍額を償還することを告げて」受領を催告するだけでは足りず、手付を現実に提供しなければならない(最判平6.3.22)
新民法は、判例のこの見解を明文化して、「売主はその倍額を現実に提供して」解除できるとしている。
本肢は正しい記述です。

[正解] 4

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※ 売主の瑕疵担保責任については、従来の「瑕疵」が、新民法により「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないもの」(=契約不適合)に改正されましたので、問題文の該当個所を適宜「担保責任」「契約不適合」に修正しています。

【問 2】 Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 A所有の甲土地にAが気付かなかった契約不適合があり、その契約不適合については、Bも契約不適合であることに気付いておらず、かつ、気付かなかったことにつき過失がないような場合には、Aは担保責任を負う必要はない。

 BがAに解約手付を交付している場合、Aが契約の履行に着手していない場合であっても、Bが自ら履行に着手していれば、Bは手付を放棄して売買契約を解除することができない。

 甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。

 A所有の甲土地に抵当権の登記があり、Bが当該土地の抵当権消滅請求をした場合には、Bは当該請求の手続が終わるまで、Aに対して売買代金の支払を拒むことができる。
(平成21年問10)

 解説&正解 
【1】 [契約不適合による責任]
売買契約では、売主が、目的物の種類・品質・数量に関して「契約の内容に適合した物」を引き渡すべき義務を負うことが、その内容となっている。
したがって、目的物が契約の内容に適合していない「契約不適合」の場合の売主の責任は、債務不履行責任となるので、本肢のよう場合、売主は不適合に応じた担保責任(追完請求、代金減額請求など)を負わなければならない。
本肢の記述は誤りです。

【2】 [相手方の履行の着手]
解約手付を交付した買主Bは「自ら履行に着手」した場合でも、相手方である売主Aが「履行に着手していない」のであれば、手付を放棄して契約を解除できる。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [他人の権利の売買]
売主Aが「他人の所有地」を売買したというように、他人の所有権を売買の目的とした場合でも、売買契約は有効に成立する。
契約上、売主は、その所有権を取得してこれを買主に移転する義務を負うのである。
「売買契約は無効」となることはない。
本肢の記述は誤りです。

※ 移転することができない場合には、売主は担保責任を負うことになる(565条)

【4】 [抵当権登記と代金支払拒絶]
買い受けた不動産に契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、代金の支払いを拒むことができる。
本肢は正しい記述です。

※ この場合、買主がいつまでも抵当権消滅請求をしないで支払いを拒むことも考えられるので、売主は買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。

[正解] 4

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【問 3】 Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約(以下「本件契約」という)が締結された場合の売主の担保責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、BはAに対して、損害賠償を請求することができる。

 Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、Bは、本件契約を解除することができる。

 Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失い損害を受けたとしても、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。

 Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失ったときは、Bは、本件契約を解除することができる。
(平成28年問6)

 解説&正解 
選択肢はすべて、買主Bが「知りながら」契約したという点で共通しています。
Bの悪意は問題となるのかがポイント。

【1】 [他人物売買|損害賠償]
甲土地の売主Aが「Cの所有物」を売買したというように、他人の所有権を売買の目的とした場合、売主は、その所有権を取得して買主Bに移転する義務を負う。
移転できないときは、履行不能として、Bは、Cの所有物であることを知っていても「損害賠償を請求することができる」。
本肢は正しい記述です。

【2】 [他人物売買|契約解除]
選択肢1と同様に、売主Aが、所有権を取得して買主に移転できないときは、履行不能を理由に、買主Bは「契約を解除することができる」。
本肢は正しい記述です。

※ 【1】【2】ともに、買主Bは「Cの所有物であることを知りながら」契約している。
この場合、悪意のBは、売主AがCから所有権を取得して移転することを期待しているわけだから、知っている(悪意)からといって、Bに責められるべきところはなく、したがって損害賠償請求や解除を認めないのは酷である。
買主の悪意は問題とされないのである。

【3】 [抵当権実行|損害賠償]
売買の目的不動産に契約の内容に適合しない抵当権がある場合には、抵当権が実行される前であっても、買主は損害賠償請求や契約解除ができる(564条)
ましてや「抵当権の実行」によって、買主Bが目的不動産の「所有権を失って損害を受けた」場合には、売主Aの債務不履行(履行不能)を理由に損害賠償を請求することができる。
Bの善意・悪意は関係ない。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [抵当権実行|契約解除]
選択肢3と同様に、「抵当権の実行」によって、買主Bが甲土地の「所有権を失った」ときは、売主Aの債務不履行(履行不能)を理由に「契約を解除することができる」。Bの善意・悪意は関係ない。
本肢は正しい記述です。

※ 【3】【4】ともに、買主は「抵当権の目的となっていることを知りながら」契約している。
買主は、登記簿調査等によって抵当権設定を知っているのが通常であり、また売主がその債務を弁済することを期待しているのだから、抵当権設定を「知っている」(悪意)からといって、買主に責められるべきところはないのである。
損害賠償請求や解除ができないとしたのでは、買主に酷であり、また抵当不動産の流通を著しく害することにもなる。
つまり、買主の悪意は関係ないのである。

[正解] 3

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【問 4】 事業者ではないAが所有し居住している建物につきAB間で売買契約を締結するに当たり、Aは建物引渡しから3か月に限り当該建物に存在する契約不適合の担保責任を負う旨の特約を付けたが、売買契約締結時点において当該建物の構造耐力上主要な部分に契約不適合が存在しており、Aはそのことを知っていたがBに告げず、Bはそのことを知らなかった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 Bが契約不適合を建物引渡しから1年が経過した時に知り、その不適合を知った時から2年後に通知したとしても、Aに対して担保責任を追及することができる。

 建物の構造耐力上主要な部分の契約不適合については、契約の目的を達成することができない場合に限って、Bは契約不適合を理由に売買契約を解除することができる。

 Bが契約不適合を理由にAに対して損害賠償請求をすることができるのは、契約不適合を理由に売買契約を解除することができない場合に限られる。

 AB間の売買をBと媒介契約を締結した宅地建物取引業者Cが媒介していた場合には、BはCに対して担保責任を追及することができる。
(令和1年問3)

 解説&正解 
【1】 [担保責任の期間制限]
売主に対する担保責任は、いつまでも追及できるわけではない。
買主が契約不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、履行の追完請求その他の権利を行使することはできないのである。

しかし、売主が引渡しの時に不適合を「知っていた」り、または重過失によって知らなかったときは、この1年の期間制限は適用されない。
これは、担保責任の期間を「建物引渡しから3か月」に限定する旨の特約があっても同様で、売主は知りながら告げなかった事実については、担保責任を免れることはできない。

買主Bは、不適合を知った時から「2年後に通知」したとしても、Aに対して担保責任を追及することができるのである。
本肢は正しい記述です。

【2】 [契約解除]
「建物の構造耐力上主要な部分」に契約不適合があるときは、買主は相当期間を定めて修補の請求(履行の追完請求)を催告し、催告期間内に修補がされないときには、契約を解除することができる。
「契約の目的を達成することができない場合に限って」解除できるわけではない。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [損害賠償請求]
契約不適合を理由に損害賠償請求ができるのは、契約不適合を理由に「売買契約を解除することができない場合に限られる」わけではない。
損害賠償請求とともに契約を解除することもできる。
本肢の記述は誤りです。

【4】 [担保責任を負う者]
売買契約における担保責任は「売主」が負うべき責任であって、売買の「媒介をする者」が負うべき責任ではない。
本肢の記述は誤りです。

[正解] 1

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