公開日 2018.3.5


1 民法で勉強するのは条文───条文の勉強法

民法を勉強するということは、条文を勉強するということです。
勉強の対象は、条文です。
条文を抜きにして、民法の勉強はありえません。
民法の専門書は、大半が「条文の解説書」です。
そして、宅建用民法のテキストも、要するに「条文の解説書」なのです。

●条文の暗記ではない
しかし、条文を勉強するということは、条文を暗記するということではありません

条文を勉強するというのは、条文が規定された制度趣旨や理由を勉強するということです。
条文は、制度趣旨や理由があって定められていますから、そもそもこれを理解しないと条文を本当に理解することはできないのです。

ところが条文には、制度趣旨や理由は一切書かれていません。結論だけが書いてあります。条文が理解しにくいのは多くはこのためです。

しかしこれでは、国民のみなさんは条文を正確に理解できず、実際の運用に混乱が生じますから、明治から平成の今日まで、民法学者が概説書・解説書で、条文制定の背景や制度趣旨・理由についてくわしく解説してきているわけです。

法律つまり条文は、国家・経済活動・市民生活を支える根本ですから、近代国家建設の初期に多くの法律学校が真っ先に設立されました。現在の有名大学の前身は、多くはこの「法律学校」です。


さて、宅建民法の試験問題は、ほとんどが「民法の規定及び判例によれば、正しい(誤っている)ものはどれか」というふうに出題されます。

民法の規定、つまり条文の正確な知識と解釈をチェックするのが出題の意図ですから、条文を軽視する勉強は不利といえます。

当ブログ[宅建 民法過去問黙示録]が、さまざまな個所で「条文」を掲載しているのもこのためです。読者の方に少しでも条文に触れてほしいからです。勉強しながらいちいち条文を調べるのは、結構面倒な作業ですからね。

もちろん、「判例」も勉強しなければならないのですが、条文の解説には、必然的に重要な判例にも言及されていますので、「宅建民法」に関しては、その限度で勉強すればいいでしょう。
もちろん重要判決の要旨だけをまとめて勉強するのもアリですが、くれぐれも深入りは禁物です。

●条文の3要素
さて、民法の専門書は、条文が規定されるに至った制度趣旨をはじめ、条文を構成している「原則と例外」「要件と効果」「本人と第三者の権利関係」の3つの要素について解説しています。ほとんどの条文は、この3つの要素で構成されているからです。

これらの3要素を「ので、から説」を使って理解していきます。
(「ので、から説」の説明はコチラ

1 原則と例外を理解する

条文の大半は「原則と例外」で定められていますから、これを理解することが最初の作業となります。

9条をみてみましょう。
「成年被後見人の法律行為」についてこう書いてあります。

「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」
(成年被後見人というのは、認知症などにより判断能力が欠けている人をいいます。)

原則は、「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる」ということです。
例外は、「日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない(=取り消すことはできない)」ということです。「ただし」と書いてあったら「例外」という意味ですから。

このように「原則の場合」「例外とされる場合」の場合分けをしながら理解することが、条文理解の基本です。


先ほども言いましたが、このように条文には原則や例外の「結論」だけ書いてあって、どうしてそうなのかという「制度趣旨」とか「理由」は一切書かれていませんね。結論だけなんです。

どうして成年被後見人の法律行為は「取り消すことができるのか」、どうして「日用品の購入など」は取り消せないのか、という「理由」は説明されていないのです。

これらを解明しているのが、概説書とか基本書といわれる『テキスト』です。
テキストには必ず原則とされた「理由」、例外とされた「理由」が説明してありますから(というか、これらの説明がないテキストはありえません)、これらを「ので、から説」でおさえていきます。

もう1つあげておきましょう。
今回の試験にも出た条文です。

民法104条では「任意代理人による復代理人の選任」についてこう書いてあります。

「委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。」

原則は、「委任による代理人は、……復代理人を選任することができない」
例外は、「本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるとき」です。

委任による代理人(任意代理人)は、「原則として」復代理人を選任することができないが、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときには、「例外的に」復代理人を選任することができるという規定です。

原則として、任意代理人が復代理人を選任できないのには「理由」があり、例外的に、復代理人を選任できる場合にも「理由」があるのです。
これらの理由を「ので、から」で解明します。

簡単です。先ほども言いましたように、
「ので、から」に注意しながら読んでいく、というだけのことです。

2 要件と効果を理解する

「要件と効果」も条文の核心で、「原則と例外」と密接に関係しています。というのも、多くの場合、原則と例外は、要件と効果で構成されているからです。
大体のイメージはこんな感じです。

[原則]=[要件]+[効果]
[例外]=[要件]+[効果]

先ほどの9条をみてみましょう。
「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」

「原則」の「要件」は、「成年被後見人の法律行為」であることです。未成年者でも、被保佐人でもないのです。
そして、その「効果」は「取り消すことができる」ということです。「無効」となるのではなく「取消し」なのです。

「例外」とされるための「要件」は、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」であることです。いいかえれば、建物や土地を買う行為は、この要件には該当しないわけです。
「例外」とされる場合の「効果」は、「取り消すことはできない」ということです。

大変シンプルな条文ですが、仕組みはお分かりでしょうか。それほどむつかしいものではありませんね。

どんな「要件」のときに、どんな「効果」が与えられるのか。こうした「要件と効果」を正確に理解していないと、試験問題に正解することはむつかしいでしょう。

3 本人と第三者の権利関係を理解する

これも条文の核心です。
というのも、法律関係とか契約では、[本人と第三者の権利関係]がもっとも問題となり、そして、本人と第三者は常に対立するからです。

たとえば「Aが、その所有地をBに売却し、Bがさらにその土地をCに売却した」という場合では、Aを「本人」、Bを「相手方」、Cを「第三者」といい、図のような流れになります。

本人と第三者
宅建試験で出題されるのは、とくに「本人」Aと「第三者」Cの権利関係です。民法では、本人と第三者の扱いがまったく異なっていますから、この点を常に意識して知識を整理しておく必要があります。

たとえば、相手にだまされて契約した場合について、96条にはこうあります(2項は略)。

「1 詐欺による意思表示は、取り消すことができる。
 3 詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」

だまされて契約したときは、「本人」はその契約を取り消すことができるけれども、「善意の第三者」に対しては、詐欺を理由に取り消したことを主張できないよ、取り消したんだからもともとの権利は自分にあるとは言えないよ、というわけです。

「本人」を保護すべきか、「第三者」を保護すべきかという場合、もし本人の権利を犠牲にしてまで「第三者」を保護するとしたら、その要件は何か。宅建試験では、この点もきいてきます。

第三者が保護されるための「要件」は、必ずしも一様ではありません。
過失がある場合には保護されないとか、過失があってもいいとか、重過失はダメだとか、登記がなければ保護されないとか、登記がなくても保護されるとか、いろいろです。これらを十分に意識することが大切です。

以上、条文を理解するポイントをあげました。

① 原則は何か、その例外は何か
② それぞれの要件とその効果は何か
③ 本人と第三者の関係はどうなっているのか

「ので、から」に注意して、この3点を勉強してください。

4 過去問レベルの勉強を

こうしてみてくると、なかなか手強い民法ですが、果たして「どんなレベル」の勉強をすればいいのでしょうか?
宅建民法は、民法学の勉強ではありませんから、条文の解釈や判例について細かくやる必要はありません。やるだけ時間とエネルギーのムダです。

ズバリ、過去問のレベルです。
実際に出題された過去問レベルの勉強をすればいいのです。基礎知識から応用まで、範囲においても、内容の深さにおいても、過去問が最適の見本です。

「ので、から説」を武器に、過去問レベルの勉強をしていってください。

過去問練習の有効性は、いまさらここで強調するまでもないでしょう。
過去問は最良のテキスト 


(この項終わり)