|更新日 2021.1.16
|公開日 2017.6.09

【問 1】 Aがその所有地について、債権者Bの差押えを免れるため、Cと通謀して、登記名義をCに移転したところ、Cは、その土地をDに譲渡した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

 AC間の契約は無効であるから、Aは、Dが善意であっても、Dに対し所有権を主張することができる。

 Dが善意であっても、Bが善意であれば、Bは、Dに対し売買契約の無効を主張することができる。

 Dが善意であっても、Dが所有権移転の登記をしていないときは、Aは、Dに対し所有権を主張することができる。

 Dがその土地をEに譲渡した場合、Eは、Dの善意悪意にかかわらず、Eが善意であれば、Aに対し所有権を主張することができる。
(平成5年問3)

 解説&正解 
出題年は少し古いのですが、基本的な問題なので採用しました。
Aが「Cと通謀して、登記名義をCに移転した」というのは虚偽表示ですから、AC間の契約は無効です。「通謀」とか「仮装譲渡」とあったら、ズバリ虚偽表示ですからね。その後、善意の第三者Dが登場しました。
虚偽表示にかぎらず、詐欺や表見代理なども、「本人」と「善意の第三者」は利害が対立するため大変問題となるところです。

虚偽表示のポイントは2つ。
 相手方と通じて行った虚偽の意思表示は、無効である。
 虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗できない
この2点を理解しているかどうかが問われています。

問題文を図で示すとこうなります。
虚偽表示
【1】 [善意の第三者との関係]
虚偽表示による契約は「当事者」AC間では無効であって、何の効力も生じないが、「善意の第三者」Dに対しては、無効であることを主張できない。
Aは、AC間の契約が無効であり登記名義人Cには所有権が移転していないということを、善意の第三者Dには主張できないのである。
本肢の記述は誤りです。

※ 善意の第三者が完全に権利を取得するため、結局、Aは土地を取り戻すことができず、Cに対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることになります。

【2】 [債権者と善意の第三者]
判例は「善意の第三者」Dに対しては、虚偽表示の「当事者」A・Cだけでなく、「他の第三者」B(Aの債権者)も、虚偽表示による契約の無効を主張できないとしている(大判明37.12.26)
本肢の記述は誤りです。

【3】 [善意の第三者は登記が必要か]
虚偽表示による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗できないが、この場合、第三者には登記が必要か、というのがここでの問題。第三者Dは善意だが、所有権の移転登記をしていない。

「善意の第三者に対抗できない」という虚偽表示の趣旨は、「当事者間」の無効の契約は、「善意の第三者」との関係では有効なものとして扱うということである。
つまり、善意の第三者Dとの関係では、所有権はA→C→Dへ有効に移転しており、したがって、Dは登記がなくても完全に所有権を取得するのである。
善意の第三者Dに登記は不要である(最判昭44.5.27)
本肢の記述は誤りです。

【4】 [善意の転得者]
判例(最判昭45.7.24)は、第三者からの転得者も、第三者に含まれるとしており、善意であれば、善意の第三者として保護される。
善意の転得者Eは、前主Dの善意・悪意にかかわらず、Aに対し所有権を主張することができるのである。
本肢は正しい記述です。

※ 判例は、善意の第三者からの転得者が悪意の場合でも、善意の第三者が介在した以上、善意者の地位を承継するから、虚偽表示による無効を対抗されることはなく保護されるとしている。
取引の混乱を避けのが狙いである。

[正解] 4

…………………………………………………………

【問 2】 Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 BがAから所有権移転登記を受けていた場合でも、Aは、Bに対して、AB間の契約の無効を主張することができる。

 Cが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受けた場合は、所有権移転登記を受けていないときでも、Cは、Aに対して、その所有権を主張することができる。

 DがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Dは、Bに対して、その所有権を主張することができる。

 Eが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受け、所有権移転登記を受けていない場合で、Aがこの土地をFに譲渡したとき、Eは、Fに対して、その所有権を主張することができる。
(平成12年問4)

 解説&正解 
【1】 [虚偽表示が無効とは?]
AB間の仮装譲渡は 虚偽表示によるものであるから無効であり、当事者間では効力を生じない。
つまり、はじめから土地の所有権はAにあったということであり、Aはいつでも、虚偽表示を理由に契約の無効を主張して、無効登記の抹消を請求することができる。

Bが「Aから所有権移転登記を受けていた」としても、これは真実の権利関係を反映しない虚偽の登記であるから、何の効力もない。
本肢は正しい記述です。

【2】 [善意の第三者は登記が必要か]
善意の第三者Cは「所有権移転登記を受けていないとき」でも、Aに対して所有権を主張することができる。
虚偽表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない」(94条2項)という趣旨は、AB間の仮装譲渡契約は、善意の第三者Cとの関係では有効なものとして扱うということであるから、所有権はA→B→Cに有効に移転しており、したがって第三者Cは、登記がなくても完全に所有権を取得する
本肢は正しい記述です。

【3】 [虚偽表示当事者と第三者]
虚偽表示の当事者A・Bは、第三者Dが取得した権利について、その登記がないことを主張できない(最判昭44.5.27)
つまり、Aからの譲受人Dは「所有権移転登記を受けていないとき」でも、Bに対して所有権を主張できるのである。

そもそも不動産について自分が権利者であることを「第三者」に主張するためには、その登記が必要であるが、Bは、虚偽表示による仮装譲受人だから実質的には無権利者である。
無権利者に対しては、譲受人Dはたとえ登記がなくても所有権を主張できる。
本肢は正しい記述です。

【4】 [虚偽表示と二重譲渡]
仮装譲受人Bから譲り受け、94条2項で保護される善意・無過失の第三者Eと、Aから譲り受けた第三者Fは、A所有地について二重譲渡の関係に立ち、互いに対抗関係にある
民法では「同じ不動産について、ともに権利を主張して対抗関係にある者同士では、先に登記を備えた方が完全に権利を取得する」(177条)というのが大原則で、先に登記を備えた方が優先する。

したがって、善意・無過失であるEは「Aに対する関係」では所有権を取得しても、所有権移転登記を受けていない以上、「第三者」Fに対しては所有権を主張することはできない。
本肢の記述は誤りです。

※ 要するに、善意・無過失のEは94条2項で保護されるため、登記がなくても「Aに対して」は所有権を主張できるが、「第三者Fに対して」は177条の対抗問題となり、登記がなければFに対抗できない。

[正解] 4

…………………………………………………………

【問 3】 Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とする。

 善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

 善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

 Bの債権者である善意のCが、甲土地を差し押さえた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

 甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。
(平成27年問2)

 解説&正解 
【1】 [善意の第三者は登記が必要か]
AとBの通謀による甲土地の仮装売買契約は虚偽表示だから、契約は無効である。
虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗できない、つまり「善意の第三者との関係では有効なものとして扱う」ということである。

善意のCとの関係では、所有権はA→B→Cへと有効に移転しており、Cは登記がなくても完全に所有権を取得しているので、Cが「登記を備えていなくても」、AはAB間の売買契約の無効を主張することはできない。
本肢は正しい記述です。

【2】 [第三者の範囲]
判例は、土地の仮装譲受人Bがその土地上に建物を建築して、その建物をCに賃貸した場合、建物賃借人Cは、仮装譲渡された土地については法律上の利害関係を有するものとは認められないとして、第三者にはあたらないとしている(最判昭57.6.8)

土地と建物は、別個の財産であるため、建物賃借人Cの利害は「事実上のものにすぎない」というのがその根拠である。
Aは、AB間の売買契約の無効をCに主張して、Cに対し建物明渡請求をすることができるのである。
本肢の記述は誤りです。

【3】 [第三者の範囲]
虚偽表示でいう第三者とは、虚偽表示の当事者(またはその相続人)以外の者であって、「虚偽表示によって形成された法律関係について、新たに利害関係を有するに至った者」をいう。
Bの差押債権者である善意のCは「第三者」に該当するため、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することはできない。
本肢は正しい記述です。

【4】 [善意の転得者]
第三者からの転得者も「第三者」に含まれるので、善意であれば「善意の第三者」として保護される。
つまり、Aは、善意の転得者Dに対して、前主Cの善意・悪意に関係なく、所有権を主張することはできないのである。
本肢は正しい記述です。

※ また判例(大判昭6.10.24)は、善意の第三者からの転得者が悪意の場合でも、善意の第三者が介在する以上、善意者の地位を承継するから、虚偽表示による無効を対抗されることはなく保護されるとする。

[正解] 2

民法厳選過去問|テーマ一覧