|更新日 2020.02.01
|公開日 2017.07.17

31年間の出題傾向31年間で24問出題、代理と並んで最頻出テーマです。
内訳は、総合問題13問、法定地上権3問、物上代位・混合問題各2問、共同抵当・抵当権消滅請求・順位の譲渡と放棄各1問
令和元年(2019)には「抵当権の順位の譲渡」が出題されました。
範囲も広く、レベルも基本から応用まで多くの論点から出題されています。時間がない人でも抵当権はしっかり理解する必要があります。
[改 正] ありません。

れいちゃん03

抵当権ってむつかしそう……。

たくちゃん01

範囲が広いからね。まずは、抵当権の基本的な性質・効力などを理解しようね。

れいちゃん02

試験に出るの?

たくちゃん03

もちろん。むつかしい判決文が正解できても、基本問題でミスすれば同じことだからね。基本はどのテーマでも最重要なんだよ。


1|抵当権の意味と機能

 意味と機能

Bさんが念願のマンションを買うために、銀行からローンで 5,000万円を借りるとしましょう。銀行としてはこの 5,000万円を絶対に回収しなければなりませんから、Bさんの住むマンションに抵当権を設定します。返済が滞れば、このマンションを競売にかけてその競売代金から優先的に 5,000万円を返してもらうというわけです。

このように抵当権というのは、債権者が、債権の弁済を確実に得るために、債務者の家または土地に設定して、弁済がないときに、家・土地を売って債権を回収する担保物権をいいます。

民法は「抵当権者は、債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」(369条)と定めています。

抵当不動産の「占有を移転しない」で、つまり債務者等が抵当不動産をそのまま使っていて使用収益が認められている、という点が「質権」と根本的に違います。

抵当権の設定,占有移さない

 抵当権の効力の及ぶ範囲

抵当権は「建物や土地に設定される」のですが、建物や土地にはいろいろなものが付着しています。抵当権は、これらの付着物にもその効力を及ぼすのでしょうか?

1|付加一体物に及ぶ
抵当権の効力は、その目的である抵当不動産に付加して一体となっている付加一体物に及びます。
付加一体物は、取りはずしが簡単であっても独立の存在を失って不動産所有権の内容になっているため付加した時期に関係なく、原則として抵当権の効力が及びます。

たとえば、土地との関係では、石垣・敷石などは不動産所有権の内容になるために、「抵当権設定後」に設置されたものであっても抵当権の効力が及びます。

※ わが国の法制度では、土地と建物とは別々の不動産として扱われますので、双方が付加して一体となっている・定着しているからといって、土地に抵当権が設定されれば、そのまま建物にも抵当権の効力が及ぶ、ということは絶対にありません。

2|従物──抵当権設定当時なら及ぶ
土地にすえられた石どうろう・庭石、建物に備えつけられた畳・建具(雨戸とか障子など)従物は、抵当権設定当時に存在したものについては、「主物」の処分=土地の処分に従うものとして、抵当権の効力が及びます。

3|従たる権利にも及ぶ
抵当不動産の「従たる権利」についても抵当権の効力が及びます。
判例は、敷地の賃借人がその所有建物に抵当権を設定したときは、その抵当権の効力は土地賃借権にも及ぶとしています(最判昭40.5.4)

4|果実──債務不履行後から及ぶ
抵当権は、債務者等のもとに抵当不動産を置いて、その使用収益を認める権利ですから、そこから生じる果実(天然果実・法定果実)に抵当権が及ぶとしたのでは、使用収益の意味がなくなります。
果実に対しては、抵当権の効力は及ばないのが原則です。
しかし、被担保債権について債務不履行があったときは、その後に生じた果実には抵当権の効力が及ぶとされ、抵当権者も果実を取得することができます。

5|利息──満期の2年分
利息については、原則として、満期のきた最後の2年分についてだけ抵当権の効力が及びます。
抵当権は、債務者等がそのまま抵当不動産を占有してその使用収益を認める権利ですから、抵当権を設定した後も、別の抵当権者が現れる可能性があります。
「2年」という制限を置いたのは、こうした後順位抵当権者など他の債権者の利益も保護する必要があるからです。

したがって、その他の利害関係者がいないときには、この制限は不要ですから最後の2年分を超えて抵当権を行うことができます。
なお抵当権者が、債務不履行による「損害賠償請求権」を有する場合についても同様に、最後の2年分についてだけ効力が及びます。

 物上代位性と差押え

前回(担保物権の性質・効力)で触れましたが、抵当権には物上代位性があります。
たとえば、債務者がその抵当不動産を売却したことによって「売買代金」を受けとる場合には、この売買代金に対して抵当権を行使することができます。

ただし、物上代位によって優先弁済を受けるためには、債務者が受領する売買代金の払渡し前に必ず差押えをする必要があります。
しかも判例によれば、この差押えは、抵当権者自身が他の債権者に先立って最初にしなければならないとされています(最判平13.10.25)

差押えが、代金等の払渡し前に限定されているのは、抵当権は「特定の抵当物」に対する権利であるのに、払渡し後の債務者の「一般財産」に混入した場合にまで抵当権の効力を認めてしまうことは、あまりに抵当権を優遇することとなってしまうからです。

なお、抵当権の物上代位性は、債務者が抵当不動産を「賃貸したときの賃料」にも及びますので、この点も注意してください。

 順位昇進の原則

弁済などによって、先順位の抵当権が消滅したときは、後順位の抵当権の順位が当然に(当事者の意思とは無関係に自動的に)繰り上がります。これを順位昇進の原則といいます。
一番抵当権が「消滅」すれば、二番抵当権が当然に一番抵当権に昇進するわけです。

 抵当権の順位の変更

順位の変更というのは、一番抵当を二番抵当に、二番抵当を一番抵当にすることで、各抵当権者の合意によってすることができます。
順位の変更は、抵当権者同士の順位が入れ替わるだけで債務者の利害には影響しないので債務者の承諾は不要です。
しかし「差押債権者」や「転抵当権者」などの利害関係者があるときは、その承諾を得なければなりません。

順位の変更は、登記をしなければ効力を生じません。この登記は、第三者への対抗要件ではなく効力発生要件です。

 妨害排除請求権

抵当物について「毀損行為」があると、債務の弁済期に関係なくその担保価値は減少し、債権が担保されなくなります
これは、抵当権そのものに対する侵害であって、抵当権も物権である以上、当然に、物権的請求権としての「抵当権に基づく妨害排除請求」を行使することができます。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 抵当権は、抵当目的物の占有を移転する必要のない性質の権利ですから、目的物の引渡しがなくても、設定契約によって効力を生じます。正しい記述です。

[正解&解説] 賃借地上の建物に抵当権を設定すると、原則として、その効力は敷地の賃借権にも及びます。
建物所有とそれに必要な敷地賃借権は、一体となって財産的価値を形成しており、主物・従物の関係にあるからです。正しい記述です。

ポイントまとめ

 抵当権設定当時に存在した従物には、抵当権の効力が及ぶ。
 抵当不動産の従たる権利についても、抵当権の効力が及ぶ。
 果実には、抵当権の効力は及ばないのが原則。ただし、被担保債権の不履行があったときは、不履行後に生じた果実には及ぶ。
 利息は、原則として、満期のきた最後の2年分についてだけ抵当権の効力が及ぶ。
 物上代位によって優先弁済を受けるためには、債務者が受領する売買代金等の払渡し前に必ず差押えをしなければならない。
 先順位の抵当権が消滅すれば、後順位の抵当権の順位が当然に繰り上がる(順位昇進の原則)。
 抵当権の順位の変更には、債務者の承諾は不要。この変更は、登記をしなければ効力を生じない。
 抵当権が侵害されれば、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。

(この項終わり)

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