|更新日 2020.02.02
|公開日 2017.09.27

31年間の出題傾向31年間で17問出題された頻出テーマです。
内訳は、一般的不法行為7問、使用者責任等10問となっています。
直近では、平成28年(2016)に判決文問題、令和元年(2019)に一般的不法行為が出題されました。
[改正] 損害賠償請求権の消滅時効に改正があっただけです。

れいちゃん02

何を気をつけたらいいの?

たくちゃん01

平成28年の判決文問題は別として、それほどの難問はないよ。
やはり基本をおさえることが鉄則だね。

れいちゃん02

今年も出るの?

たくちゃん04

昨年出題されたからね。
どうしても時間のとれない人はスルーしたいところだね。


1|不法行為の意味と原則

不法行為を考えるときには、交通事故をイメージするとわかりやすいでしょう。
運転を誤って事故を起こし通行人を死傷させた、コンビニに突っ込んで店舗を損壊したなど、毎日のように発生していますね。

不法行為というのは、交通事故のように故意または過失によって他人の権利や利益を侵害し、これによって損害を与える利益侵害行為をいいます。
そのほかにも、インフラ事故、大規模工事災害、医療事故、薬害などマスコミで大きくとりあげられる不法行為もあります。

|宅建試験の事例問題|
不法行為の種類は非常に多いのですが、宅建試験で出題されているのは、交通事故、建物の損壊、使用・雇用関係、宅建業者との取引など、ごく普通に起きている日常的な事例です。
事例とはいえないくらい簡単なもので、不法行為の基本的な原則をいろいろきいてきます。

さて、不法行為について、民法は「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています(709条)

不法行為責任を支える根本法理は、過失責任主義自己責任の原則です。

「過失責任主義」というのは、「故意または過失」に基づいて他人に損害を与えた場合にのみ賠償責任を負うというもので、近代法の大原則です。
「自己責任の原則」というのは、人は「自己の行為についてのみ」責任を負い、他人の行為の結果について責任を負わされることはない、という原則です。

こうした考え方により、人・企業は、自己の行為について注意を払ってさえいれば、他人に損害を与えたとしても、不法行為責任を負わされることはなく、その結果、資本主義経済活動の自由が最大限に保障されてきたわけです。
一方、そのために被害者の救済が不十分なまま放置される「悲劇」をも生んできました。

現在では、巨大企業による業務災害、公害問題、環境問題、欠陥車問題など各種の危険から生じた損害に対し、行為者の故意・過失の有無を問題としない無過失責任論で伝統的な根本法理を修正しています。

民法の不法行為責任は、①加害者自らが責任を負う「過失責任主義」を原則とするパターンと、②加害者の使用者などそれ以外の者が責任を負う「無過失責任論」を加味したパターンに分けることができます。

前者を一般的不法行為、後者を特殊的不法行為(使用者責任など)といいます。
先ほど引用した 709条は、一般的不法行為を定めた基本的な条文です。

2|不法行為のタイプとその侵害

とくに問題となる点は、次のとおりです。

 生命・身体の侵害

いうまでもなく、生命・身体はきわめて重大な保護法益ですから、これらを侵害する行為が不法行為となることは明らかです。

1|生命侵害
たとえば、交通事故が原因で「数日後」に被害者が死亡した場合は、まず被害者自身が死亡による損害賠償請求権を取得し、それが相続人に承継されることになります。

※ 人は、死亡すれば権利主体ではなくなるのだから、死亡による損害賠償請求権が発生するというのは民法体系に反しているとの批判もありますが、判例はいろいろな法的構成を使って、上記のように解しています。

2|即死した場合
また判例は、「即死」の場合でも、まず被害者に損害賠償請求権が発生し、それが相続人に承継されるとしています。
身体傷害の場合には、被害者自身が損害賠償請求権を取得するのに、最も重大な法益である生命侵害にそれが認められないのは均衡を欠くから、というのがその理由です(大判大15.2.16|重太郎即死事件)

 名誉・プライバシーの侵害

1|名誉侵害
名誉侵害というのは、人の社会的評価を低下させる行為(名誉毀損)をいいます。
社会的評価は、法人にも当然存在しますから、名誉毀損は法人に対しても成立し、また慰謝料請求もすることができます(最判昭39.1.28)

2|プライバシーの侵害
現在では、とくに個人情報の侵害が問題となります。
他人に知られたくない個人の情報は、プライバシーとして法律上の保護を受け、したがってその侵害は不法行為となります。

判例は、この点について「前科等の公表」により受けた精神的苦痛に対する賠償を認めています(最判平6.2.8)

3|慰謝料請求権

 慰謝料請求権の意味

損害には、財産的損害と精神的損害(苦痛や悲嘆等)があり、この精神的損害に対する金銭賠償を慰謝料といいます。

民法が「財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない」と定めているように、精神的損害を受けた被害者は、財産権が侵害された場合と同様に慰藉料請求権を取得するわけです(710条)

 慰謝料請求権者

生命を侵害された被害者と一定の身分関係にある者(配偶者・子・父母)は、被害者の死亡による精神上の苦痛について、自己の権利として固有の慰謝料請求権を取得します。

 慰謝料請求権の相続

判例(最判昭42.11.1)は、被害者が死亡したときは、その慰藉料請求権も、被害者が生前に請求の意思を表示したか否かに関係なく、相続人は当然に慰藉料請求権を相続するとしており、また被害者の請求の意思表示を必要とするものではないから、被害者が「即死」の場合であっても、相続人は慰藉料請求権を相続するとしています。

4|注意すべき論点

 相 殺

1|不法行為債権に相殺は仕掛けられない
相殺の基礎講座でも学習しましたが、再確認しておきましょう。
不法行為に基づく損害賠償請求権に対する相殺禁止
被害者Aの損害賠償請求権が、加害者Bの不法行為によって発生したものであるときは、Bは、Aに対して有する代金債権でAの損害賠償請求権と相殺することはできません。
損害賠償請求権に相殺を仕掛けることはできない、受働債権とすることはできないわけです。これは、被害者Aに現実の救済を受けさせる(現金で治療費・入院費などを支払う)ためです。

相殺は、互いの債権額を対等額で消滅させるものですから、加害者が有する債権で相殺を許してしまうと、被害者の損害賠償債権は対当額で消滅・減少してしまい、十分な救済を受けられなくなってしまうからです。

2|不法行為債権による相殺はできる
以上の趣旨からすると、被害者Bから相殺を仕掛けるのは許されます。
被害者のほうで相殺による決済を望んでいれば、自分の損害賠償請求権を自働債権として、加害者に対する債務との相殺を認めても支障はないのです。
たとえば、裕福な被害者が相殺を援用するなど。

なお、双方の債権が不法行為によるものであるときは、判例は相殺を認めていません(最判昭49.6.28)

 過失相殺|被害者の過失

不法行為を受けた被害者=債権者にも過失があったとき、この点は考慮されるのでしょうか。

「双方の不注意」で交通事故が発生したというのは珍しくないでしょう。
加害者=債務者だけに損害を負担させるのは不公平ですから、その責任を適切に軽減する必要があります。
この点については「被害者に過失があったときは、裁判所はこれを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」として、被害者の過失を考慮するかどうかは裁判所の自由裁量とされています(722条2項|任意的
加害者から「過失相殺の主張」がなくても、被害者に過失があれば、裁判所はこれを考慮して賠償額を定め「減額」することもできます(最判昭34.11.26)

過失相殺は「債務不履行」でも問題になりましたね。
債務不履行では「債務の不履行に関して、……債権者に過失があったときは、裁判所はこれを考慮して、損害賠償の責任およびその額を定める」としていますので、裁判所が「債権者に過失あり」と認定すれば、必ず過失相殺しなければなりません(418条|必要的
考慮してもしなくてもよい、というのではないのです。

 債務不履行との競合

|どちらを主張してもいい|
客を乗せたタクシーの運転手が誤って交通事故を起こし、乗客を負傷させた場合、運転手には、運送契約上の安全輸送に違反した「債務不履行責任」と、負傷させたことによる「不法行為責任」の双方が競合して生じます。

この場合、乗客は運転手に対して、どちらでも任意に主張して損害賠償請求をすることができます(最判昭38.11.5)
自由な選択を認めることが被害者にとって有利だからです。

 損害賠償債務の履行期

ところで、不法行為によって生じた損害賠償請求権は、いつから履行遅滞になるのでしょうか。

不法行為による損害賠償請求権は不法行為の時から履行遅滞となります。
被害者が「請求した時」からではありません。被害者による催告がなくても「損害の発生と同時」に当然に履行遅滞となるわけです(最判昭37.9.4)
被害者の利益を考えてのことです。

|遅延損害金債権|
遅延損害金債権もまた、不法行為の時から遅滞となります。

 損害賠償請求権の時効消滅

不法行為による損害賠償請求権は、
① 被害者(またはその法定代理人)が、損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき、または、
② 不法行為の時から20年を経過したときは、時効によって消滅します。

1|損害等を知った時
被害者が損害等を知った時というのは、判例によれば、損害の発生を現実に認識した時とされます(最判平14.1.29)

2|継続的行為による損害の消滅時効
不法占拠のような継続的不法行為については、損害が継続して発生しているかぎり、日々新たな損害が発生しているため、日々発生する損害を知った時から別個に消滅時効が進行します(大連判昭15.12.14)

3|遅延損害金債権
遅延損害金債権についても、被害者(またはその法定代理人)が、損害および加害者を知った時から3年で時効消滅します。
損害賠償請求権と遅延損害金債権とは別個の債権ですが、ともに同一事由から発生しており緊密に関連しているので、時効消滅も同じとされています(大判昭11.7.15)

4|生命・身体に対する不法行為は5年
人の生命・身体を害する不法行為の場合、その損害賠償請求権は、被害者(またはその法定代理人)が、損害・加害者を知った時から5年間行使しないとき時効消滅します。
法益の重要性から、通常の3年間を「5年間」に伸ばしたわけです。今回の改正で新設されました(724条の2)

たくちゃん05

人の生命・身体の場合は5年間だからね。

 正当防衛による免責

暴力団員風のAが、ナイフでBに切りかかってきたので、やむをえず、BがAに傷害を負わせてしまった場合、BはAに対して損害賠償をする必要はありません。

他人の不法行為に対して自らの利益を防衛するためにやむを得ず行った加害行為(不法行為)は、正当防衛であって違法性がないために、不法行為責任を負うことはないのです。

民法は「他人の不法行為に対し、自己または第三者の権利または法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない」(720条)として、正当防衛のための利益侵害行為について不法行為責任を免責しています。

 胎児の損害賠償請求権

原則として権利能力を有しない胎児も、父または母に対し不法行為をした者に対して次のように損害賠償請求をすることができます。

1|胎児固有の損害賠償請求権(721条)
胎児は「損害賠償の請求権」については、すでに生まれたものと「みなされ」ます。
したがって、胎児中に、父または母が交通事故等で不法行為を受けたときでも、被害者の1人として、固有の損害賠償請求権を有します。

2|父母の損害賠償請求権の相続(886条)
胎児は「相続」については、すでに生まれたものと「みなされ」ます。
したがって、胎児は、生命侵害を受けた父または母が取得する損害賠償請求権を、相続人の1人として相続します。

5|責任能力

不法行為によって他人に損害を与えた者に損害賠償責任を問うためには、行為者が一定の判断能力を備えていなければなりません。
この能力を不法行為では責任能力といい、このような能力を欠く者を責任無能力者といいます。

民法は責任無能力者として「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えない」未成年者と、加害行為時に責任能力を欠いていた者の2つのグループについて定めています。

 未成年者

未成年者が不法行為をしたときに、この責任能力を備えていなかったときには、損害賠償責任を負いません。
何歳で責任能力があるのかは一概にいえませんが、判例では、だいたい小学校6年生12歳くらいが一応の基準とされています。

 責任能力を欠く者

加害者が成年者であっても、精神上の障害により「責任能力を欠く状態」で他人に損害を加えた場合には、不法行為責任を負うことはありません。

ただし「故意または過失によって一時的にその状態を招いた」ときは責任を負わなければなりません。
居酒屋のドアを蹴りあげて破損した者が、ぐでんぐでんに酔っぱらっていたからといって、「責任能力を欠く状態でした」という言い逃れはできないのです。

|監督義務者の責任|
責任無能力者が責任を負わない場合でも、その「責任無能力者を監督する法定義務を負う者」は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負うのが原則です。
ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、またはその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときには免責されます。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 不法行為による損害賠償債務は、被害者からの催告がなくても「損害発生と同時に」当然に履行遅滞となります。
これは、一般的にいって催告する余裕のない被害者を救済するためなのです。
したがって加害者は、不法行為成立時以後、完済に至るまでの遅延損害金を支払わなければなりません。本問は正しい記述です。
※ 結局、被害者は、①本来の損害賠償と、②遅延損害金を請求することになるわけです。

ポイントまとめ

 被害者にも過失があった場合、加害者から過失相殺の主張がなくても、裁判所はこれを考慮して、職権により賠償額を定めることができる
 即死の場合でも、まず被害者(死者)自身に損害賠償請求権が発生し、それが相続人に承継される。
 慰謝料請求権は、被害者の請求の意思表示を必要とするものではないから、被害者が「即死」の場合であっても、相続人は慰藉料請求権を相続する。
 不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者からの催告がなくても、損害の発生と同時に履行遅滞となる。
 不法行為債権を受働債権として相殺することはできない。

 不法行為による損害賠償請求権は、
① 被害者等が、損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき(生命・身体の場合は、5年間行使しないとき)または、
② 不法行為の時から20年を経過したときは、時効によって消滅する。
 責任能力を欠く状態で他人に損害を加えた場合には損害賠償責任を負わないが、故意または過失によって「一時的にその状態を招いた」ときは、責任を負わなければならない。
 責任無能力者が責任を負わない場合でも、その責任無能力者を監督する法定義務を負う者は、一定の例外を除き、責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負うのが原則である。

(この項終わり)

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