|更新日 2020.02.01
|公開日 2017.07.07

31年間の出題傾向[代理通則]は9問出題されていますが、ほとんど基本的な知識です。
複雑な事例はなく、問題文もほぼ短文です。代理の通則はやさしい問題が多いのですが、その分、ケアレス・ミスが致命傷となりますので、油断禁物です。正確に理解しましょう。
[改 正] 代理通則では、新設3か条、削除1か条です。

れいちゃん04

代理通則って?

たくちゃん01

代理の一般原則だよ。顕名主義とか、代理権の範囲など、いろいろあるよ。

れいちゃん01

改正されたテーマはあるの?

たくちゃん02

代理人の行為能力とか、代理行為の瑕疵が少しね。


1|本人・代理人/代理権の存在

 そもそも代理権って何?

代理の本質は「代理人の行為によって直接に本人に権利義務を生じさせる地位」にあります。代理人のこの地位を代理権といいます。
代理権と呼ばれますが、純粋な意味の権利ではなく、「権利能力」と同じように地位とか資格という意味です。

 代理が認められる行為

代理は、本人に代わって意思表示・契約をする制度ですから、意思表示・契約に限って認められます。意思表示ではない「事実行為」や「不法行為」に代理は認められません。

ただし、意思表示であっても、婚姻とか縁組、認知・遺言など身分上の行為にも代理は許されません。
代理は、代理人が自分の判断で意思決定をするものですから、絶対に本人の意思決定を必要とする「身分上の行為」には、代理は許されないのです。
この種の行為を「代理に親しまない行為」といいます。遺言の内容を代理人が決めたり、婚姻相手を代理人が決めたのでは、たまったものではありませんね。

 代理権の発生原因

代理には法定代理任意代理があります。
これは代理権の発生原因による区別です。

1|法定代理
代理人を置くことが「法律」で定められている場合です。
たとえば、未成年者は父母の親権に服しますが、824条によってこの親権者には代理権が与えられています。
また、成年被後見人に付される成年後見人は家庭裁判所が選任しますが、859条によってその者には代理権が与えられます。

2|任意代理
本人の「信任・依頼」を受けてなる代理人です。通常は、本人との「委任契約」によって代理権が生じます。
慣例上、本人から代理人に「委任状」が渡されますが、「特別な要式」は必要ではなく、口頭でもかまいません。

法定代理は、親権者・成年後見人などのように代理権が広く認められた「包括的な代理」であることが多く、任意代理は不動産の売買や賃貸など「個別的な代理」に多くみられます。

 代理権の範囲

1|法定代理
代理権の範囲は法定されています。
たとえば親権者は、子のために必要な一切の財産管理行為をする権限を有するとされており、これは824条以下の規定で法定されています。

2|任意代理
通常は、本人・代理人間の「委任契約」によって決まります。

[判例]に現われた事例には、以下のようなものがあります。
 売買契約を締結する代理権には「登記をする権限」が含まれ、売買不成立の場合に「手付金・内金の返還を受ける権限」が含まれます。
 同じく売買契約を締結するための代理権には、特段の事情がない限り、相手方からその売買契約の「取消しの意思表示を受ける権限」も有します(最判昭34.2.13)
 売買代金取立のための代理権には、その売買契約を「合意解除する権限」は含まれません(大判大14.10.5)

3|代理権の範囲が明らかでないとき
代理権があることは明らかなのですが、その範囲が不明な場合や、特に定められなかった場合には、最小限度の権限という意味で、次の3つの管理行為だけができます。

(1)保存行為
財産の現状を維持する行為です。
たとえば「家屋を修繕する」「期限の到来した債務を弁済する」などです。
保存行為は現状を維持するためのものですから、代理人が無制限にできます。

(2)利用行為
収益を図る行為です。
たとえば「家屋を賃貸して賃料をとる」「金銭を利息付で貸し付ける」などです。「物や権利の性質を変えない範囲」に限ってできます。

(3)改良行為
経済的価値を増加させる行為です。
たとえば「家屋に造作や、電気・ガス・水道などの設備を施す」「無利息の貸金を利息付に改める」などです。
これも「物や権利の性質を変えない範囲」に限ってできます。

預金を株式にするような利用行為、田地を宅地にするような改良行為は、物や権利の性質を変えることになりますから、たとえ「本人の利益」となる場合でも、することはできません。
また、売買などのような処分行為もすることはできません。

2|代理人・相手方/契約当事者

 顕名主義|A代理人B

代理行為として成立するためには、相手方に代理行為であることがわかるように、代理人は、本人のためにすることを示さなければなりません。これを顕名主義(けんめいしゅぎ)といいます。

「本人のためにする」というのは、「契約は代理人の私がするが、契約の効果は本人に帰属する」ことを明示するという意味です。通常は「A代理人B」というふうに表示されます。

代理人が「本人のためにする」ことを示さないでした意思表示は、代理行為であることが相手方にわからないため、原則として「代理人自身のための行為」とみなされ、代理行為は成立しません。

顕名がない以上、意思表示の効果はすべて代理人に帰属することになるため、たとえ代理人の意思が本人のためにするつもりであっても、これを理由に「錯誤による取消し」を主張することはできません。

|悪意のとき、または有過失のとき|
ただし、相手方が悪意のとき、または善意だが過失があるときは、代理行為が成立します。

つまり、代理人の意思表示が「本人のためである」ことを相手方が、
① 知っている(悪意)か、または
② 知らなかったけれども注意すれば知ることができたとき(過失ある善意)には、代理行為が成立し、本人に効力が生じることになります。
このような場合には、代理を認めても問題はないからです。

 代理人の行為能力

1|任意代理
任意代理では、制限行為能力者(未成年者や被保佐人など)が代理人としてした行為は、制限行為能力を理由として取り消すことはできません。
代理人は、判断能力が十分とはいえない制限行為能力者であってもかまわないということです。なぜでしょうか?

それは、代理行為の効果はすべて本人に帰属するのであって、代理人は代理行為の効果を一切受けないため、制限行為能力者が代理行為によって不利益を受けることはないからです。つまり、制限行為能力制度によって保護する必要がないのです。
本人も、制限行為能力者であることを承知で代理人にするのですから、制限行為能力者が判断を誤って代理行為をしても、そのリスクは本人が負担するだけのことです。

制限行為能力者が単独で行った代理行為も完全に有効であり、制限行為能力者であることを理由にその代理行為を取り消すことはできません

※ ただし、代理人にも「意思能力=判断能力」が必要なのはもちろんです。意思能力がないときは、そもそも法律行為・契約は無効だからです。

たくちゃん05

未成年者が代理人になっても問題ないよ。

2|法定代理
法定代理の場合には「制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為」については、制限行為能力を理由に代理行為を取り消すことができます(102条ただし書き)。法改正で追加されたところです。
これは本人である制限行為能力者を保護しようとする制限行為能力制度の趣旨から、制限行為能力者を代理人にするのは適切ではないからです。

 代理行為に瑕疵があるとき

|代理人がだまされたら?|
代理では、実際に意思表示をするのは代理人ですから、心裡留保や虚偽表示があったかどうか、錯誤や詐欺・強迫があったかどうか(代理行為の瑕疵)、善意か悪意か、過失があったかどうかなどは、すべて代理人について判断されます。
代理人が相手方と通謀して虚偽表示をすれば無効ですし、また代理人に錯誤があったり、詐欺や強迫を受ければ取り消すことができます。

なお「特定の代理行為」が本人の指図によってなされたときは、本人は自分が知っていた事情や過失によって知らなかった事情について、代理人の不知や無過失を主張することができません。本人を保護する必要はないからです。
たとえば、本人が「特定の建物を購入するよう指定」したときは、本人が建物の欠陥を知っていたり、過失で知らなかった場合には、たとえ代理人がその欠陥について不知・無過失であっても、本人は売主に対して文句は言えないのです。

|代理人がだましたり、強迫したら?|
代理人が相手方に対して詐欺をしたり、強迫した場合、それによって意思表示をするのは相手方ですから、代理人の意思表示の問題ではありません。ここでいう代理行為の瑕疵ではないのです。
代理人に詐欺や強迫された相手方は、端的にこれらを理由に取り消すことができるだけのことです。

3|本人・相手方/効果の帰属

代理行為の効果は、すべて直接に本人に帰属します。あたかも「本人自身がその意思表示をした」のと同様に、意思表示から生じるすべての効果が、直接本人に帰属するのです。

たとえば、代理人が家屋の売買契約をした場合、家屋の所有権・引渡請求権・登記請求権、代金の支払債務などはすべて本人が取得・負担します。これこそが代理の本質的効果なのです。

このほか、主な効果としては──、
① 心裡留保・虚偽表示による無効は、本人が主張できます。
② 代理人の錯誤、相手方の詐欺・強迫による意思表示の取消権は、本人が取得します。
代理人がこれらを行使できるかどうかは「代理権の範囲」の問題です。

なお、代理人が代理行為をするについて不法行為をしても、その損害賠償責任は代理人について生じ、本人には生じません。
不法行為はそもそも意思表示ではなく、不法行為責任は意思表示の効果ではないからです。ただ、本人は、代理人を使用する者として「使用者としての責任」を負うことがあるだけです(不法行為における使用者責任)。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)


[正解&解説] 本人の名を示さない意思表示は、代理であることがわからないため、原則として代理行為は成立しません(顕名主義)
しかし、本人「Bの名を示さず」に(顕名せずに)契約した場合でも、相手方Cが「売主はBであることを知って」いるときは代理行為となるため、契約は「BC間」で成立します。
「AC間」という記述は、誤りです。

[正解&解説] 代理人は行為能力者であることを要しません。つまり「未成年者」などの制限行為能力者でも代理人になることができます。
したがって、法定代理人の同意がなくても、未成年者が代理人となって締結した契約も完全に有効で、その効果は、有効に本人に帰属します。
「有効に本人に帰属しない」という記述は誤りです。

ポイントまとめ 代理は、意思表示(契約)に限って認められる。不法行為や事実行為、身分上の行為には認められない。
 代理権の範囲が明らかでないときは、保存・利用・改良行為のみが認められる。
 代理行為として成立するためには、原則として顕名が必要である。
 代理人は、行為能力者であることを要しない。制限行為能力者が単独で行った代理行為も完全に有効、制限行為能力を理由に代理行為を取り消すことはできない。
 代理行為の瑕疵、善意か悪意か、過失があったかどうかなどは、すべて代理人について判断される。
 代理行為の効果は、すべて本人に帰属する。代理人が詐欺や強迫を受ければ取り消すことができるが、取消権は本人が取得する。代理人が取り消せるかどうかは代理権の範囲による。

(この項終わり)

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