|更新日 2023.2.25|公開日 2017.10.06

1|連帯保証の意味と成立

意 味
 連帯保証というのは、保証人が主たる債務者(主債務者)と「連帯して債務を負担する」という「特約がある保証債務」です。あくまでも保証債務であって、主たる債務(主債務)付従するので、付従性から生じる効果については、普通の保証債務と同じです。

 ただ、この保証債務は連帯債務の性質も有するために、保証債務が有する補充性、つまり「主債務が弁済されないときに弁済する」という性質はなくなり、そのぶん債権者の権利が強められるわけです。

 連帯保証の成立

 連帯保証契約は、普通の保証契約に「保証人は、主債務者と連帯して債務を負担する」という特約が付されて成立します。
 試験問題では「連帯して債務を負担する特約がある場合」のように記述されています。

 連帯保証の必要性

 連帯保証が必要とされる理由は、ズバリ債権を強力にするためなので、連帯保証人になることほど恐ろしいことはありません。同じ保証でも、普通の保証債務では、保証人に催告の抗弁権・検索の抗弁権がありますから、保証人に請求しても一時的にせよ拒否されてしまうため、債権の効力はその分弱められます。

 債権の効力を少しでも強くして弁済を確実に受けたい債権者としては、保証契約のときに、保証人が主たる債務者と「連帯する特約」をしてくれれば、連帯債務と同じになるので、連帯債務者のうち誰に請求してもいいように、いきなり保証人に請求しても拒否されることはなくなり、大変好都合というわけです。

2|連帯保証の特質

 連帯保証は、連帯債務の性質も有するので、次の2つの特質が導かれます。

 抗弁権がない

2つの抗弁権がない  保証債務は「主債務が履行されないときに履行すべき債務」という補充性がありました。いわば「二次的な債務」なんですね。この補充性という性質があるからこそ、債権者から請求を受けても「まず主債務者に催告せよ」「まず主債務者の財産に執行せよ」という抗弁権が導かれたのでした。

 しかし、連帯保証は補充性がない(補充性を排除する)ので、催告・検索の抗弁権はなく、債権者が請求してきたら、連帯保証人はこれを拒否できず応じなければなりません。
 主債務の不履行があれば、債権者は、主債務者の資力の有無に関係なく、直ちに連帯保証人に債権全額の請求ができます。

 分別の利益がない

 分別の利益というのは、数人の保証人がいる「共同保証」の場合は、各保証人が、債権者に対しては「平等の割合で分割された額」についてのみ、保証債務を負担すればいいというものでした。
 900万円の債務にB・C・D3人の共同保証人がいれば、各人が「300万円ずつ」の責任を負えばいいわけで、これは保証人の利益になるので分別の利益といいました。

 ところが、連帯保証人は数人いても、主債務者と連帯しているために、分別の利益がありません。すべての連帯保証人が、それぞれ「900万円全額」の責任を負うのです。
 連帯債務者に分別の利益なんてありませんでしたね。それと同じです。

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連帯保証人には2つの抗弁権も分別の利益もないから、怖いよね。

 ※ くれぐれも「連帯保証人はキミのほかに数人いるから迷惑はかからないよ」という甘言には気をつけましょうね。

 一般的な抗弁権はある

 しかし、主債務者と「連帯して債務を負担する」という特約があっても、保証債務の付従性は有したままなので、連帯保証人は、主債務者が債権者に対して有する一般的な抗弁権を主張することができます。

 主債務者の有する同時履行の抗弁権を行使したり、主債務の時効消滅を主張し、主債務者が債権者に対して反対債権を有していれば、連帯保証人は、主債務が相殺によって消滅する限度で、保証債務の履行を拒絶することができます。

 さて、試験にもよく出題されるテーマですが、「主債務者や連帯保証人に生じた事由」は、他方にも影響を及ぼすのかを確認しておきましょう。

3|主債務者に生じた事由

保証債務の付従性で判断する  主たる債務に生じた事由が「連帯保証人にも及ぶかどうか」については、保証債務の付従性で判断します(457条1項)

 保証債務の付従性により、主債務者について生じた事由の効力は、普通の保証債務と同様に、すべて連帯保証人に及びます。たとえば、主債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予および更新は、連帯保証人に対しても効力を生じるのです。

4|連帯保証人に生じた事由

連帯債務で判断  連帯保証人に生じた事由が「主債務者にも及ぶかどうか」については、連帯債務で判断します。「連帯債務」には、相対的効力事由=原則と絶対的効力事由=例外がありますので、双方の事由を正確におさえることが得点ポイントです。

原 則
相対的事由|主債務者には及ばない
 連帯保証人について生じた事由は、主債務者には及ばないのが原則です。連帯保証人に履行の請求をしても主債務者は履行遅滞にはならず、連帯保証人が免除されても、主債務者にその効力は及びません。連帯保証債務が時効消滅しても、主債務はそのまま存続します。

例 外
絶対的事由|主債務者に及ぶ
 ただし、連帯保証人について、弁済・相殺・混同・更改の「4つの絶対的効力事由」が生じた場合には、この効力は主債務者にも及びます。これらは「債務の消滅事由」でしたね。連帯保証人が弁済したり、債権者と間に更改があれば、主債務は消滅します。連帯保証人が、債権者に対して有する自己の反対債権で相殺すれば、主債務もその限度で消滅します。
 ただし、債権者と主債務者とが別段の意思表示をしたときは、「主たる債務者」に対する効力はその意思に従います。たとえば、債権者と主債務者との間で、連帯保証人に対する履行の請求は、主債務者にも請求したことにする(つまり、絶対的効力とする)旨を合意しておけば、連帯保証人に対して請求すれば、その効力は、主債務者にも及ぶこととなります。

 以上をまとめると、以下のようになります。

主債務者に生じた事由|付従性で判断
  ⇒ すべて連帯保証人に及ぶ
連帯保証人に生じた事由|連帯債務で判断
  ⇒ 絶対的事由──主債務者に及ぶ
  ⇒ 相対的事由──主債務者に及ばない

5|求償権

主債務者と連帯保証人の清算関係
 主債務者と連帯保証人との間の求償関係は、普通の保証債務の場合と同じです。連帯保証人が数人いる場合に、各保証人が弁済すれば、主債務者に求償できるのは当然ですが、他の連帯保証人にも求償することができます。



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