|更新日 2020.12.22
|公開日 2017.08.05

32年間の出題傾向|旧民法時代には31年間で19問出題の頻出テーマ。ほとんどAAクラスの出題数です。
今回の改正で内容が一変しましたが、売買はやはり契約では最重要テーマですから、しっかり勉強する必要があります。
令和元年(2019)には、新民法では削除された売主の「瑕疵担保責任」が出題されました。
得点のカギ次の基本的なポイントを押さえておきましょう。
1 追完請求権の内容
2 代金減額請求権の内容・態様
3 買主の権利行使の期間制限
れいちゃん01

売買契約は大改正があったテーマね。

たくちゃん02

売買契約は宅建業で必須の業務だから、基礎から応用までしっかり勉強しないとね。
大改正もされたことだし、しばらくは要注意。

1|買主の権利

新築建物を買ったところ、あとで雨漏りが見つかったという場合、買主はどのようにこの問題を解決すればいいのでしょうか。

売買契約が成立すると、売主は、種類・品質・数量に関して「契約の内容に適合した目的物」を引き渡す義務を負いますから、引き渡された目的物が、契約の内容に適合していない場合には、売主は不完全な履行による債務不履行責任=契約不適合責任を負うこととなります。

1 契約不適合の意味
契約不適合は、当事者が契約で予定していた内容・品質・性能とともに、社会通念を考慮して判断されます(最判平22.6.1)
これは抽象的な説明ですが、具体的には次のとおりです。

品質に関する契約不適合
雨漏り・土壌汚染など物理的瑕疵・欠陥だけでなく、法律的瑕疵(都市計画法・建築基準法などの法令により利用が制限されている事情)、心理的瑕疵(不動産における過去の事件など一般人が嫌悪感をもつ事情)、環境的瑕疵(騒音・悪臭・景観など不動産の周辺環境)も対象になります。

数量に関する契約不適合
不動産(土地・建物)売買では、一定の面積を基礎として代金額が定められたときに面積不足があれば、数量の契約不適合とされます(最判昭43.8.20)

2 買主の権利
目的物に契約不適合がある場合、買主には、以下の諸権利が認められています。
 追完請求権
 代金減額請求権
 損害賠償請求権
 契約解除権

以下、確認していきましょう。

1 追完請求権

1 追完請求の内容は3つ
引き渡された目的物の種類・品質・数量が契約不適合である場合には、買主は「売主の帰責事由の有無」を問わず、売主に対して履行の追完を請求することができます。

目的物が契約不適合であれば、買主は、善意・悪意にかかわらず、契約の本旨にしたがった完全な履行を求めて、追完請求権を行使できるわけです。

こうして不完全な履行による未履行状態を解消する方法として、まず追完請求権が「第1次的」な買主の救済方法となります(追完請求権の優位性)

追完の内容は、つぎの3つです。
① 目的物の修補
② 代替物の引渡し(取替え)
③ 不足分の引渡し

どの方法によるかの選択権は買主にありますが、売主は、買主に「不相当な負担を課するものでないとき」は、買主が選択した追完方法と異なる方法で追完することができます。
買主の保護と売主の負担とのバランスを考えたわけです。

2 買主が有責の場合
目的物の契約不適合が「買主の責めに帰すべき事由」によって生じたときは、買主は追完請求権を行使できません。
買主の帰責事由によって契約不適合が生じたのに、売主に追完義務を負わせるのは妥当ではないからです。

2 代金減額請求権

1 催告による代金減額請求
追完請求権を有する買主が、相当期間を定めて追完するよう催告したが、その期間内に売主が追完をしなかった場合には、買主は、その「不適合の程度」に応じて、代金減額を請求することができます。

買主の代金減額請求権は、債務不履行に基づく損害賠償請求権とは違って、売主に帰責事由(故意・過失・信義則違反)があるかどうかを問わずに認められます。

まず催告するのが原則
買主が代金減額請求権を行使するには、原則として、まず売主に催告をしなければなりません。
新築建物に雨漏りが見つかったからといって、直ちに減額請求ができるわけではないのです。

というのも、代金の減額は契約の一部解除という性質を有しており、したがって通常の契約解除と同様に、原則として催告を要件としているのです。
催告して、売主に「追完の機会」を与えなければ、減額請求はできません。

民法は「買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる」(563条1項)としています。

2 催告不要の代金減額請求
ただし、次の場合には催告なしに、直ちに減額請求をすることができます。
売主による追完は期待できないからです。

① 履行の追完が不能であるとき
土地・マンション売買における面積不足は、一般的に追完不能といえるでしょう。
② 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
③ 催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき

3 買主が有責の場合
ただし、目的物の契約不適合が、買主の帰責事由(責めに帰すべき事由)により生じた場合には、代金減額請求権は認められません。追完請求の場合と同じです。

4 減額される代金額
減額される代金額は「不適合の程度に応じて」算定されます。
減額割合の算定基準時は、契約時ではなく引渡し時とされます。

3 損害賠償請求権・解除権

引き渡された目的物が契約不適合の場合、買主は、追完請求権・代金減額請求権を行使できますが、また、契約不適合の目的物を引き渡したことは債務不履行でもあるため、債務不履行責任の一般的効果としての損害賠償請求権契約解除権を行使することができます。

1 損害賠償請求権
目的物の契約不適合により、買主が損害を受けた場合には、債務不履行の規定(415条以下)に従って損害賠償請求をすることができますが、売主に帰責事由のあることが必要です。

ちなみに、購入した土地の面積不足について、代金減額を選択しないで損害賠償を請求することもできます。

2 解除権
目的物が契約不適合であった場合には、買主は、相当期間を定めて修補等の追完をするように売主に催告をして、その期間内に追完がないときは、契約を解除することができます。
売主の帰責事由の有無は問われません。

ただし、売主は、催告期間を経過した時における契約不適合の状態が「軽微」であることを主張して、解除権行使を阻止することができます。

3 買主に帰責事由があるとき
契約不適合について、買主に帰責事由があるときは、損害賠償請求も契約解除もできません。
新築建物の雨漏りの原因が、買主の帰責事由による場合には、追完請求も代金減額請求もできませんが、損害賠償請求も契約解除も認められないのです。

4 権利の契約不適合

売主には、契約に適合する「物」を引き渡す義務があるのと同じように、「権利」についても契約に適合する権利を移転する義務があります。
したがって、移転した「権利」が契約不適合の場合には、「物」の引渡しと同じように、買主には、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除の権利が認められています。
「物と権利が統一的に運用」されているわけです。

権利が不適合のケース
権利が契約不適合のケースとしては、次のような場合があります。
① 購入した土地に抵当権などの担保権や対抗力ある賃借権が設定されている
② 建物のために存在するとして購入した土地に土地賃借権が存在しない
③ 購入した土地の一部が他人の所有、あるいは他人の共有持分があるなど、権利の一部が買主に移転しない

5 買主の権利行使の期間制限

買主は、いつまでも権利行使できるわけではありません。
権利行使には、次のような期間の制限があります。

1 種類・品質における不適合の場合
1 知った時から1年以内に通知
引き渡された目的物の種類または品質が契約不適合の場合は、買主がその不適合を知った時から1年以内に、その旨を「売主に通知」しないと、買主は、追完請求権、代金減額請求権、損害賠償請求権、解除権を行使することができません。
不適合があっても通知しないときは、これらの権利を失うこととなります。

引き渡して何年たっても売主が責任を負うとしたのでは、売主にあまりに酷であり、早期に法律関係を安定させて、売主も保護する必要があるからです。

ステップアップ
債権の消滅時効の適用もある
契約不適合責任は、同時に債務不履行責任でもあるため、債権の消滅時効に関する一般規定の適用もあります。
追完請求権・代金減額請求権・損害賠償請求権等は、目的物の引渡しを受ければ契約不適合の状態を発見して権利行使することができるため引渡時から10年の消滅時効にかかります。

また、不適合を知って1年以内に通知した場合には、知った時から5年の消滅時効にかかります。

2 通知の内容
契約不適合の旨を通知するだけでよく、訴訟の提起や損害額の根拠を示して損害賠償を請求するなど、担保責任追及の具体的な行為をする必要はありません。

3 売主に悪意・重過失があるとき
この期間制限は、目的物を引き渡して契約が無事に履行されたという売主の期待を保護するための特則ですから、売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかった場合には、期間制限の適用はありません。

通知がないからという理由で、悪意・重過失の売主を免責することは相当でないからです。

2 数量・権利における不適合の場合
以上の期間制限は、数量や権利に関する契約不適合には適用されません。

数量・権利の場合には、債権の消滅時効に関する一般原則によって処理されます。
つまり、契約不適合の事実を知った時から5年、引渡時から10年の消滅時効が適用されます(166条1項)

ポイントまとめ

 売買契約が成立すると、売主は、種類・品質・数量に関して「契約の内容に適合した目的物」を引き渡す義務を負う。
 目的物に契約不適合がある場合、買主は、追完請求権・代金減額請求権・損害賠償請求権・契約解除権を有する。
 契約不適合について、買主に帰責事由があるときは、これらの諸権利は認められない。
 買主に「不相当な負担を課するものでないとき」は、売主は、買主の追完方法と異なる方法で追完できる。
 代金減額請求権を行使するには、原則として、まず催告する必要がある。
 売主が、催告期間内に追完をしなかった場合、買主は、その不適合の程度に応じて、代金の減額請求ができる。
 次の場合には催告なしに、直ちに減額請求ができる。
① 履行の追完が不能
② 売主が追完の拒絶意思を明確に表示
③ 追完の見込みがないことが明らか
 契約不適合により損害を受けた買主は、損害賠償請求ができるが、売主の帰責事由が必要である。
 契約不適合がある場合、買主は、相当期間を定めて修補等の追完を売主に催告し、その期間内に追完がなければ、契約を解除できる。
10 移転した権利が契約不適合の場合でも、買主は、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除ができる。
11 種類・品質が契約不適合の場合、買主は不適合を知った時から1年以内に、売主に通知しないと、追完請求権・代金減額請求権等を行使できない。
12 売主が、引渡しの時に不適合について悪意・重過失のときは、買主の権利行使に期間制限はない。

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